2012年6月9日土曜日

サポーズデザインオフィス リノベ作品《K邸》見学会

都内にて谷尻誠/サポーズデザインオフィスが手掛けたリノベーション作品を見学。隔月刊『モダンリビング(以下ML)』2012年5月号7月号に実録記事の前後編が掲載された《K邸》である。既に施主への引渡しが完了し、実際にKご夫妻が住まわれているところ、ご厚意による予約制の見学会。

最終形に近い模型の画像。
築35年のマンションで、10年前と、3年前にトイレを改修しているが、詳細図面もない状態からのスタート。
模型にはないが、画像右の片側に南東に面したバルコニーがある。 反対側(北東)が玄関。リノベ前は、南西側・模型画像左下の三角形の空間にキッチン、模型画像右下にLDK、躯体を挟んでLDKの上に大小2つの個室が存在した。
これを、旧キッチン空間を収納とバスルームに、LDKと個室2つの配置を入れ替えた。収斂まで数々のプラン変更を経ており、うち9プランが『ML』5月号に掲載されている。

施主から出た第一の要望は、家庭菜園などを楽しんでいるバルコニーとの関係性を保った、「rustic(ラスティック)」な住まい。「東京のコンクリートマンションで、いかにお住まいの方に優しく、身体スケールに合わせて、飽きのこない空間を提供するかが今回のテーマ」――会場配布資料より一部転載。

玄関を入った正面の見通し。
リノベ前は右手に浴室があったが、ロフト付きの収納スペースになっている(詳細は後述)。左手はオープン棚の靴収納スペース。
タイル張りの床から、段差のついたフローリングの奥がLDK。フロアの床レベルは165ミリ上げ、床暖房を入れた。10年前の改修で約180ミリ上がり、サッシの収まりがおかしくなっていたのを、マンション竣工当時のレベルまで戻した。

リビングダイニング。
施主夫妻は約10年前からこちらにお住まいで、長年使っていたインテリアはそのまま。サッシも既存のままだが、ガラスは断熱効果の高いものに入れ直した。カーテンで視界を遮らずに光と風を室内に取り込む。

同リビング。
施主は衣類や蔵書が多く、収納の確保も課題の1つ。見せる収納と隠す収納に分けている。例えばリビングの画集などが並んだ棚はオープンに、一見して白い壁の引き戸を開けると一面収納に。

フローリングは今回の為にあつらえたもの。幅190ミリのナラ材に白く拭き取り塗装を施し、元の木目の模様や色味に多少のバラ付きがあっても気にならない仕上げで、防水加工済み。谷尻事務所と施主も交えて共に作り上げたアイオーシー(株)から「カンヌブラン」として発売される予定。

アンティーク家具を含むインテリアに存在感があるので、壁はシンプルな白の漆喰仕上げ。逆に天井はルーバーを造作、陰影の表情をつけた(塗装仕上げ)。また、築40年前後の家の古材を、構造とは関係ない柱としてアクセントに用いている。壁付き照明は谷尻事務所のオリジナル(《国分寺の家》でも使われていた)。

キッチンカウンターの側面三方にも前述の古材を張っている。この古材も施主が谷尻事務所と一緒に選んだ。

リノベ前はLDKがあった側。向かって左に個室が2つ、廊下との仕切りは引き戸で、画像左手前に2室分が収納されている。鴨居にも古材を二段重ね、サンドされた白い部分がアクセントに。右側はドライバス仕様の水まわりと収納。

バルコニーに面した個室その1。
床は前述のフローリング。画像向かって左がLDKとの境の躯体で、構造上、この壁だけは動かせなかった。

個室その2。上部はロフトになっている。

照明のスイッチプレートもいたってシンプル、スイッチの上げ下げはコネクターピン仕様(追記:「トグルスイッチ」というらしい)。

浴室は新たにシャワーブースを設けた。バスタブはエプロン無しの床置きだが、追い焚きが可能。床は玄関付近と同じタイルを敷き、廊下との境はカーテンで仕切ってドライバス仕様に。

廊下をフロア中心部に戻ってきたところ、浴室空間と玄関の間の壁には大きな姿見鏡が取り付けられている。既製品ではなく、ご主人が昔、手作りしたもの。

戻ってきた廊下のつき当たり、壁紙が張られたドアの向こうはトイレ。

壁紙はトイレルームの中にも連続している。3年前に改修しているこの1室はそのまま残した。

フロア中央から玄関を見る。
既存のマンションドアと室内との間に、木製のガラリ付き扉を新設。施錠できるので、夏場は玄関ドアを開放して、北東~南東に抜ける風を室内に取り込める(見学会当日、都内では昼に25度を越えたが、室内は通風だけで快適だった)。
画像左奥側は収納、上部に設けたロフトへと続く階段のステップが見える。

リノベ前は浴室があったところ。この空間だけ3.5メートルの天井高があったので、書庫と収納を兼ねた空間に有効活用。

ロフト部分。玄関とLDK側とL字に開口を設け、採光および風通しも良い。

新宿の高層ビル街も遠望できるバルコニー。お施主は家庭菜園が趣味で、元よりこの空間を大切にしてきた。溢れる緑や置かれたインテリアから、施主ご夫妻のこの住まいへの長年の愛情がうかがえる。

見学を終え、何か幸せのおこぼれのようなあたたかいものをお土産に、帰路に就く。

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