2012年10月4日木曜日

廣部剛司建築研究所《Studio M》オープンハウス

市川市で開催された廣部剛司建築研究所のオープンハウスを見学。
施工:航洋建設。木造+一部RC造り(地下部分)。
《Studio M》という作品名は、地下に音楽スタジオを併設していることから。外観からは判らない内部に、この作品の特徴が詰まっている。

配布資料によれば、施主からの要望として、ドラム入りのバンド演奏が可能な音楽スタジオをつくること、夏は冷房なしで過ごしたいこと、そして縁側が欲しい、という3つがあったという。
夏でも冷房要らずの住まいを実現する為に、窓だけでなく、上下に抜けた空間を設け、暖気の上昇で風の無い日でも室内の空気が動くよう設計した。この「抜け」の位置が、後述の「縁側(エンガワ)」の位置をも決定することになる。
対して冬季の暖房は、土壌蓄熱式暖房「サーマ・スラブ」を採用(製品詳細はリンク先参照)、地下に埋設するヒーターパネルをより効率的に使う為に、ダイニングキッチンとリビングの下に定め、敷設しない敷地の半分を小庭、玄関、水まわりとした。音楽スタジオの位置もこちら側に落ち着き、地下室とすることでまわりの土を遮音材に。

段差のある玄関アプローチ。外壁の仕上げはアクリル樹脂。
設計者の廣部剛司さんが、見学者の方と和やかに懇談しているリビングが見える。
玄関を入り、パイン材無垢の床の突き当たりに、2Fへ続く螺旋階段。頭上(2Fの床)はFRPのグレイチングで、明るく、風を通す。室内の壁の仕上げは珪藻土ハケ引き。
玄関脇の小庭。施主の強い要望という縁側が見当たらず、「あれ?」と思う。これについては後ほど。

1Fの奥、右側がダイニングキッチン(以下DK)。床はコルクタイル、キッチンまわりの黒い床面のみ長尺シート。
1Fの奥、左側がリビング。DK共に、廊下から35センチほど下がっている。

リビングとDKの床下に、前述「サーマ・スラブ」が埋設されている。
実は、DKとリビングに挟まれたこの空間こそ、《Studio M》における「縁側(以下エンガワ」である。

施主が求めている縁側空間とは何かを追求したとき、外部環境と内部との境界に位置し、屋根でまもられ、そして適度な段差があって座れることではないかと考えた。《Studio M》の「エンガワ」は室内にあるが、腰掛けたり、テーブル代わりになったり、これからどう使われるか楽しみな空間になっている。
そして、この「エンガワ」を家の中心に据え、上部の天井をグレイチングにすることで、通風の「抜け」を確保することにも成功した。
リビングは南北に大きな窓が開けられ、内側三方はコンクリートベンチで囲まれている。足元の空間が単に暗くならず、空間的「抜け」が感じられるように、ベンチ下には造作のLED照明を設置している。
サッシは引き込みで納め、此処もエンガワ的役割を果たす。
廣部さんに「ここからダイニングを眺めるとなかなか良いですよ」と教わった場所に座り、パチリ。リビング、DK、その奥の窓へ、四角いフレームが連鎖して、リズムを生み出している。
キッチンの流しの前に立ち、正面の眺め。ダイニングテーブル、壁の背もたれと開口の四角、2Fテラスからの光窓が、リビングと同様にフレーミングしている。
キッチンにガスレンジを入れることも施主からの要望の1つ。壁はボーダータイル、天井の不燃材は1/4円で美しく納めた。この空間も今回のピースの1つで、ガス台まわりを不燃処理にすることで、天井はウッドのルーバーとなり、ガス台からの距離で窓の位置も決まっていった。

地下部分はRC造。DKの壁の開口にガラスはなく、カーテンで仕切る。夏は開けて風を通し、冬はDK側の暖気を少しでも外に逃がさないように。
階段下には棚を設置、書斎として活用。
1Fに戻り、水まわり空間側から階段側の見返り。
1Fトイレ、ドアは引き戸。床はキッチンと同じ長尺シート。壁は石膏ボード。
洗面室と浴室。
水まわり側を平屋としたのは、日射角度が低くなる冬場に、2Fの居室の奥までじゅうぶんな日差しを届かせ、大きめなテラスを確保した為。

螺旋階段で2Fへ。
 2Fは左右に居室が1つずつ。
居室は2室共にがっちり頑丈なロフト付き。
テラス側の2F居室。将来は2部屋に仕切れるよう、反対側の壁には小窓が2つ設けてある。

今回の設計では、複数の設計条件は最初こそバラバラだったが、ジクソーパズルの要所のピースが決まることで徐々に全体が出来上がっていくように、各条件が相互に絡み合いながら、ひとつのプランに収束していったという。配布資料にはパズルが組みあがっていく様が細かに記されていて、テキストのタイトルには「ゆるやかに繋がる場所」とあった。

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