2013年3月6日水曜日

松島潤平建築設計事務所によるオフィスリノベーション《Morpho》

松島潤平建築設計事務所が手掛けた作品を2週続けて見学。
前回は郊外の個人邸新築だったが、今回は都心のオフィスビルのフロアの一部を、企業本社事務所移転に伴いリノベーションした。
有楽町1丁目《東宝ツインタワービル》は1969年の竣工。開口付PCaパネル(プレキャストコンクリート板)による雁行ファサードが特徴的なビルの6階、北西から南東にかけて横に長い一角(133平米)が計画エリアである。
南西側長辺に計24個並んだPCaパネルの西側のみに縦長の窓が開いており、日比谷公園の緑が望める。このため、部屋に入り北西側を向くと連続した窓が見え、逆に南東側を向くと壁が連続するということになり、体の向きで印象が大きく変わる内部空間となっている。

4枚め(↓)の模型画像でいうと、右側が外に面した南西、手前が北西、左側がエントランスがある北東、奥が南東という方位。
施主である(株)アズパートナーズの本社事務所として必要な応接室などを日当たりの良い南西側に並べると、うなぎの寝床のように長い内廊下が片側に残ってしまう。
そこで松島氏がとったデザイン手法は、雁行ファサードにより体の向きで空間の印象が変化することを助長する仕掛けとして、90度の角度をもつ木下地に色の濃さの違う2種類の木目シートを貼った「リバーシブル・ルーバー」を廊下をはじめとする壁面に連続させるというもの。
エントランスを入って右を向くと、窓側に応接室が4つ配置され、奥まで内廊下が続く。両側の壁およびパーテーションの角材の、こちら(エントランス側)を向いた面には柾目のオーク(薄茶)が貼られており、明るく、スタイリッシュな印象を訪問者に与える。

突き当たりの応接室Aまで歩いて、反転して戻ろうとすると、壁の色が濃い茶色に変わる。板目のウォールナットが張られた面がこちらを向いていることによる視覚効果で、重厚で落ち着いた雰囲気に。
「退屈な平面として敬遠されがちな片廊下のシークエンスを、むしろ長ければ長いほど往来を楽しくさせるような仕掛け」は、「スチールアングルのピン角出隅 でテクスチャがきっぱりと貼り分けられるのは、化粧シートならではのおさまり」によって成立している(カッコ内文章は配布資料より転載)。

応接室は計4つ。一番奥が席数10の応接室A。
応接室A、窓側から入口側の見返り。
応接室内のスイッチプレートにも濃茶の化粧シートを貼って仕様を統一。
応接室B。
手前は応接室Cとの間にある柱によって生じた隙間を活かしたバッファーガーデン。
内廊下と各応接室の間のパーテーション。ガラスの手前に3種類のリバーシブル・ルーバーが入っている。打合せ中の様子や人が行きかう廊下側が見えないように、ガラスには砂目調のグラーデーションフィルムを貼って目隠し処理。
「応接室C」にはキャメルの革張り椅子6脚。
テーブル上には、応接室の雰囲気にあわせた置き時計が。これらのインテリアは施主がコーディネートした。
赤と青のチェアが交互に配された応接室D。
応接室Dの入口ドア左側にパントリーがあるのだが、内開きの扉面材が壁と一続きになっているので一見してわからない。黒い押し手がかろうじて存在を知らしめる。
エントランスの左側は受付カウンターと、ギャラリーを兼ねたウェイティング・スペース。濃茶のルーバー面がこちらを向いた、企業のエントランスらしい落ち着いた雰囲気。ガラスのパーテーションで緩やかに仕切った窓側はミーティングスペース。
エントランス前の受付カウンター。ガラスパーテーションの向こうに見える「宅地建物取引業者票」を含む掲示一式に注目。
業者登録票の掲示のサイズには細かい規定があるが、地の色には何も規定がないという。透明アクリル版に、インクジェットで文字を印字、壁の木に若干の凹凸をつけたところにアクリル板を引っ掛けているだけという、目からウロコのデザイン。
化粧シートというフェイク素材ならではの空間表現により、「木のマテリアリティではなく、「化粧木目シートのマテリアリティ」を浮かび上がらせ、築44年のビルのポテンシャルと掛け合わせ、現代ならではの空間創出を目指したリノベーション作品(配布資料テキストより一部改変して引用)。
なお作品名の「Morpho」は、翅(はね)の表と裏で全く異なる表情をもつモルフォ蝶の学名に由来する。

0 件のコメント: