2013年11月9日土曜日

上野の森美術館「種田陽平による三谷幸喜映画の世界観展」

上野の森美術館でにて「種田陽平による三谷幸喜映画の世界観展 『清須会議』までの映画美術の軌跡、そして・・・」が10/12(土)から11/17(日)まで開催されている。
種田陽平氏は武蔵野美術大学油絵科在学中に寺田修司監督作品『上海異人娼館』(1981年公開)に絵画助手として参加、以来映画を中心に、テレビ、CM、舞台、ミュージックビデオなど幅広い分野で美術監督を務めている。 美術監督協会の公式サイトに拠れば、美術監督とは「映画製作における美術部門の総合責任者」とある。装飾、塗装、作画、造形などに秀でた映画製作会社の職人的な美術スタッフをとりまとめる。

種田氏が手掛けた主な作品に、岩井俊二監督『スワロウテイル』(1996)、リーチ・ガイ監督『不夜城』(1998)、押井守監督『イノセンス:Gost in the Shell2』(2004)、『空気人形』(2009)、『ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ』、美術展では東京都現代美術館での「借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展」(2010)などがある(種田氏の公式サイトはこちら)。

本展では、三谷幸喜監督とのコラボした映画作品を中心に、映画セットの模型や図面、撮影に使用された小道具、建て込み中の貴重な映像などを通じて、映画における美術の仕事の一端を垣間見ることができる。
来場者を迎えるエントランスの左右に掲示されたバナーには、本展を象徴する「リサーチし、イメージし、設計し、つくりあげる、映画のために、街をつくる、街の中に部屋をつくる、人が集まり映画が始まる」の文字が。下地のビジュアルは、ロケハンでの写真やスケッチ、イメージボードの画など。「CGではなく、実際につくっているということを展示を通して伝え、何かを感じ取って欲しい」という種田氏からのメッセージ。

最初の展示室の出入口は、レトロな映画館を思わせるつくり。

種田氏が初めて三谷監督とタッグを組んだ『THE 有頂天ホテル』(2006年公開)の展示。
「全てのシーンをホテル内で撮れるような映画をつくりたい」というリクエストに応え、劇中に登場する4タイプのスイートルームやロビーラウンジだけでなく、ホテルのコンセプトから立ち上げ、1951年創業の(架空の)クラシックホテル「HOTEL AVANTI 」を誕生させた。 
会場には、ホテル内の室内プレート、キーホルダー、アメニティ、劇中でチラリとしか映らない小道具の数々も展示されている。施主名が有頂天観光(株)の「HOTEL AVANTI 改修工事見取り図」のパネルも。

架空の港町の中でストーリーが展開する『ザ・マジックアワー』(2008公開)。東宝の5つのスタジオを使い、スタジオセットとしては当分破られないスケールで、「入江市守加護)いりのい市すかご)」のメインストリートを作り上げた。
物語の中心となる「港ホテル」「クラブ赤い靴」「天塩ビル」前のセットはリアルスケールだが、一番奥は1/2スケールになっている。また、カメラには映らないビルの隙間には空き缶が挟まっていたらしい。

「ステキな金縛り」(2011年公開)は法廷が舞台。現代の日本の裁判所にはないすり鉢式の円形状とし、映画ならではの演劇性を含ませた。
会場にも展示されている法廷の床は大理石に見えるが、実は木板で、塗装部のスタッフがそれらしく描いたもの。場面によってはこういう「つくり物感」が出るような演出が必要な場合もあるという。

同展オフィシャルブック(発行:ぴあ)に掲載されている種田氏へのインタビュー記事に拠れば、映画や舞台美術の世界に入ってくるのはデザイン科出身者が多く、ディテールからイメージを膨らませていくのが一般的だそうだが、種田氏の場合、先ずイメージ全体をひとつの大きな絵画のように捉えることから始まる。登場人物を取り巻く世界全体から考えて、人物が立ち振るまう小さな部屋や空間にイメージを落とし込んでいくのだという。

海外からのオファーも多い種田氏。なかでも名高いのは、クエンティン・タランティーノ監督作品『キル・ビル Vio.1』、クライマックスシーンに登場する「青葉屋」のデザインだろう。
「青葉屋」のセットは、旧北京撮影所最大のスタジオに鉄骨で堅牢に建てられた。「青葉屋」以外の日本パートでも種田氏が美術監督を務めている。

チャン・イーモウ監督『The Flowers of War ; 金陵十三釵」』(2011、日本未公開)。
東京ディズニーランドを上回る広い敷地に、主舞台となる教会のほか、劇中で爆撃される市街地、城門エリア、水路のある色街などがオープンセットでつくられた。
『The Flowers of War』を凌ぐスケールでは、台湾市近郊に10ヶ月かけてイチから6つの集落を建設した、ウェイ・ダーション監督作品『Warriors of the Rainbow ; セデック・バレ』。ほかキアヌ・リーブス初監督作品『Man of Tai Chi』、三谷氏の舞台『ベッジ・パードン』の美術資料なども展示。セットの写真パネルや図面、模型など、一見して建築展と見紛う構成で、種田氏がいう通り「映画は建築」なのかもしれない。

11/9(土)より公開の映画『清洲会議』の展示。種田氏は黒瀧きみえ氏と美術スタッフにクレジットされ、同作品の美術監督を務めた。
撮影に使用された1/10スケールの「清洲城」の二階建て天守の模型。
この時代に天守を有する城があったどうかは諸説あるが、映画上のフェィクとして「実在したかもしれない清洲城」がデザインされた。種田氏いわく「銀閣寺のイトコみたいな建物」。
杮葺(こけらぶき)の屋根は薄い板を一枚一枚貼り付けていった精緻なつくり。その一方で、画としてみた時に細くなってしまう柱は実際の建築寸法よりも太くしたり、屋根の反り具合など、各所で意図的なデフォルメが施されている。
映画の中の清洲城は、平安時代の寝殿造りを模した平屋の建物で、池がある中庭を中心に主要登場人物の居室が配置されている。それぞれの部屋の主の性格を表現したようなインテリアや衣装になっているそうだ(衣装デザインは黒澤和子氏)。

展覧会オープン前日に行なわれたプレス内覧会には、種田氏と三谷氏が出席、共につくりあげてきた4本の作品を振り返るとともに、展覧会のみどころなどを語った。
本展会場で有料で貸し出している音声ガイドは三谷氏と種田によるもの。4作品のサウンドトラックをバックに、作家と監督自身の声で、約30分間・20のガイドが楽しめる(清洲城の歴史解説を除く)。また展示の最後に、三谷監督が映画『清須城』のセット内を案内する映像の上映もあり。

告知:映画『清洲会議』公式サイトで11/5発信のNEWSによれば、本日11/9(土)17時より会場内にて種田氏によるギャラリートークが開催される(要入場料、予約不要)。

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