2026年7月13日月曜日

【tool box】個室と開放感を両立する新商品「木製ガラス窓」発売

 住宅価格の上昇と専有面積の縮小が進む中、住み替えではなく今の住まいを工夫しながら住み続けるという選択が広がっている。そうした住環境の変化を背景に、toolboxは個室と開放感を両立する新商品「木製ガラス窓」を発売した。新製品は、子ども部屋やワークスペース、寝室など、住まいの中に新たな個室を設けたい一方で、光や風、人の気配まで遮断してしまうことには抵抗があるというニーズに応えるために開発された。高さ約1メートルの腰高サイズを採用した木製の室内窓で、大きなガラス面を通じて光や視線が抜けることで、小さな個室にも広がりを生み出す。

近年は在宅ワークやオンライン会議の定着に加え、子どもの成長に伴う学習環境の確保など、住まいの中に独立した空間を求める場面が増えている。一方で、限られた面積の中に壁を立てて部屋を増やせば、その分だけ採光や通風が失われ、住宅全体が閉鎖的に感じられることも少なくない。「木製ガラス窓」は、そうした課題に対し、仕切ることとつなげることの両立を目指した商品といえる。幅1500ミリの大きな開口部に加え、窓枠や中桟を25ミリまで細くすることで、できる限りガラス面を広く確保した。高さは900ミリと1100ミリの2種類を用意し、天井高や空間構成に応じて選択できる。

開閉方式は片引き、片開き、引き違いの3タイプを展開する。必要に応じて窓を開けることで、エアコンの風や自然の風を個室まで届けることができ、換気や空調効率にも配慮した設計となっている。ガラスはフラットガラス、型板ガラス、チェッカーガラスから選択可能で、空間の用途や好みに応じた使い分けにも対応する。
また、素材には無垢の白木を採用した。無塗装仕上げのため、フローリングや家具、建具の色に合わせて自由に塗装でき、住まい全体のインテリアに自然になじませることができる。
今回の新製品には、10年にわたり販売を続けてきた「木製室内窓」の経験が生かされている。2016年の発売当時、室内窓は建具職人による特注製作が一般的で、コストや納期の面から導入のハードルが高かった。そこでtoolboxは、住宅設計で使いやすい規格品として商品化し、リノベーションや住宅設計における選択肢として普及を進めてきた。

その後、多くの採用事例が集まる中で、「より大きな開口部が欲しい」という声が設計者や施主から寄せられるようになったという。空間のアクセントとして用いられる小窓ではなく、住まいの中に新たな個室をつくるための道具として室内窓を活用したいという需要が高まったことが、新商品の開発につながった。家を広げるのではなく、今ある家を使いこなす。そんな住まい方が現実味を増す時代に、「木製ガラス窓」は部屋を仕切るための建具であると同時に、住まいのつながりを保ちながら新しい居場所を生み出すための提案として注目を集めそうだ。






tool box

2026年7月10日金曜日

「ルーシー・リー展ー東西をつなぐ優美のうつわ」ー展が東京都庭園美術館で開催

 

20世紀を代表するイギリスの陶芸家、ルーシー・リーの回顧展「ルーシー・リー展ー東西をつなぐ優美のうつわ」展が東京都庭園美術館で7月4日から東京都庭園美術館で開幕した。担当学芸員は同館の勝田琴絵。

▲展覧会 会場風景

国内では約10年ぶりの回顧展となる本展は、国内貯蔵の作品66点が一堂に会するほか、ヨーゼフ・ホフマンや、バーナード・リーチ、など、ルーシー・リーと交流のあった作家たちの作品も合わせて展示される。


展覧会の会場となるアール・デコ建築

会場となる、東京都庭園美術館の本館は、1933年に朝香宮家の自邸として竣工したアール・デコ建築。うつわの魅力を引き出す邸宅空間で、リーの作品と旧朝香宮邸の建築の合わせた展示も見どころの一つである。

▲展覧会の会場となる東京都庭園美術館

▲展覧会 会場風景

展示構成

展覧会は本館と新館にまたがる全4章で構成され、リーの作品の特徴である、釉薬や掻き落としの技法などが展示と共に紹介され、彼女が生きた時代背景や交流の深い人と合わせて全容を紐解く内容となっている。

▲ルーシー・リー《白釉ピンク線文鉢》


▲ルーシーリー《熔岩釉鉢》(左)、《練りこみ花器》(右)


旧館会場の2階にはかつて居間や浴室、寝室だった展示室に、リーの花器や鉢、壺などが並び、旧朝香宮家の面影を感じながら、展示を巡ることが出来る。

▲展覧会 会場風景

展示は2013年に新設された新館へと続き、リーの作品に影響を与えた東洋陶磁や、1970年以降のリーの確立したスタイルが紹介される。また、本展では1989年に安藤忠雄が会場設計を手掛け、作品を水面に配置した展示手法にインスピレーションを得て、作品のシルエットが反射する素材を展示台の表面に採用している。

▲展覧会 会場風景

▲展示台に作品のシルエットが反射する

本展ではルーシー・リーの作品の特徴である、釉薬や技法、そして同世代の作家たちとの交流の軌跡を、アール・デコ建築の空間で追従できる貴重な機会となっている。


■展覧会情報
展覧会名:「ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―」

会期:2026年7月4日(土)〜9月13日(日)
会場:東京都庭園美術館(本館+新館)(東京都港区白金台5-21-9)
開館時間:10:00〜18:00(入館は閉館30分前まで)
 ※8月7日(金)、14日(金)、21日(金)、28日(金)は「サマーナイトミュージアム2026」として21:00まで開館(入館は閉館30分前まで)
休館日:毎週月曜(ただし7月20日(月・祝)は開館、7月21日(火)は休館)
観覧料:一般 ¥1,400、大学生 ¥1,120、高校生・65歳以上 ¥700/中学生以下無料 ※身体障害者手帳などを持参の場合(+付き添い2名まで)は無料




                                                                                                                                                   

【オカムラ】Foster + Partners Industrial Designと共同開発したタスクシーティング「MUKU」を発表

オカムラは、米シカゴで開催されたオフィス家具見本市「NeoCon2026」において、英国のデザイン集団であるFoster + Partners Industrial Designと共同開発したタスクシーティング「MUKU(ムク)」を発表した。発売は同年11月を予定している。

「MUKU」は、必要最小限の構成要素で成り立ちつつ、快適性と機能性を両立させたタスクチェアで、軽やかな外観により多様な空間に自然に溶け込む設計とした点が特徴となる。名称は純粋さや自然な美しさを意味する「無垢」に由来し、装飾を抑えた簡潔なデザイン思想を体現する。執務エリアや会議スペースに加え、在宅勤務といった幅広い利用環境に対応し、単体での使用はもちろん、複数脚を配置した場合でも空間の統一感を損なわない意匠とした。
機能面では、人間工学に基づく設計を土台に、オカムラ独自のアンクルチルトリクライニング機構や異なる硬さを組み合わせたクッションを採用し、長時間使用における身体負担の軽減を図った。加えて、座面の高さや奥行きの調整機能、前後左右に可動する4Dアジャストアーム、腰部を支えるランバーサポートを備え、利用者それぞれに適した姿勢を確保できるようにしている。こうした多様な調整機構をコンパクトに収めることで、外観の簡潔さと直感的な操作性を両立させている点も特徴の一つとなる。カラーは4色展開とし、空間に応じた選択の幅を持たせた。

開発にあたっては、両社が設計と試作を繰り返しながら検証を重ねるプロセスを採用した。精緻なエンジニアリングとデザインの融合を重視する共通の理念のもと、試行錯誤を積み重ねることで、機能と意匠のバランスを高い水準で実現したとしている。こうした開発手法により、国際市場において求められる品質やデザイン基準への対応を図った製品と位置づけられる。

Foster + Partners Industrial Designは、建築家ノーマン・フォスター氏が率いるFoster + Partnersの一部門として、家具から産業機器まで幅広い領域のプロダクトデザインを手がけてきた。芸術性と工芸的視点、さらに科学的アプローチを組み合わせた設計を特徴とし、メーカーや職人、スタートアップとの協働を通じて開発を進める体制を取る。試作と検証を重ねる反復的な手法や、サステナビリティを踏まえた設計思想も同組織の強みとされる。
近年、オフィス環境を取り巻く状況は、働き方の多様化やハイブリッドワークの定着によって大きく変化しており、機能性に加えて空間との調和を重視した家具への需要が高まっている。こうした動向を背景に、オカムラは国際的なデザインパートナーとの協業を通じて製品開発力を強化し、グローバル市場への対応を進めているとみられる。簡潔な意匠と高度な調整機能を兼ね備えた「MUKU」が、変化するワークプレイスにおいてどのように評価されるかが注目される。




オカムラ

2026年7月9日木曜日

ジョージ・ナカシマの造形-木の声を聴く

ギャラリーエークワッドは7月3日より「ジョージ・ナカシマの造形-木の声を聴く」展を開催する。

本展時はナカシマがおよそ30年かけて家族と築き上げた仕事と生活の場「ジョージ・ナカシマ・ウッドワーカーズ」をはじめとする建築の仕事に焦点を当て、ナカシマの軌跡を建築作品や家具と共に巡っていく。



【ワンダーウォール】片山正通氏が、新クルーズ船「AMANE(海音)」をトータルデザイン。2027年春に就航予定。

Wonderwall®を率いる片山正通氏が、日本郵船の新クルーズ船「AMANE(海音)」のトータルデザインを手掛けた。2027年春に就航予定の同船は、東京湾で長年親しまれてきたレストラン船「LADY CRYSTAL」の後継船として計画されたものだが、その設計の特徴は単なる豪華客船の演出ではない。

片山氏は、日本郵船が受け継いできた客船文化の歴史をひもとく中で、岩崎久彌の旧岩崎邸庭園に着目。邸宅と庭園が互いを引き立てながら一体の空間体験を形成していることから着想を得て、「東京湾を庭園に見立て、その上に浮かぶ邸宅をつくる」というコンセプトを導き出した。船そのものを主役にするのではなく、東京湾の風景を取り込むための器として構想した点に、本プロジェクトの独自性がある。
デザインの根底には、日本古来の精神性と西洋の技術や様式を融合する「和魂洋才」の思想が据えられている。船体外観は、船が本来持つ流麗な曲線を生かしながら、デッキと内部空間を連続したものとして捉えて構成。建築とランドスケープの関係性を船に置き換えたような設計となっている。また、乗船前の体験にも配慮し、桟橋から船首の個室や船内の様子が自然に視界へ入ってくる導線を計画。訪れた人が邸宅へ招かれるような感覚で船内へ導かれる演出が施されている。

△ 桟橋

△1F 廊下(ギャラリー)
△1F メインダイニング

△バーラウンジ
△2F個室
△3Fフライングデッキ

船内では、邸宅を巡るような体験が空間全体を通じて展開される。1階のギャラリーにはアーティスト山口幸士氏による作品を展示し、移動そのものがアート鑑賞の時間となるよう設計。中心となるメインダイニングは、日本建築に見られる格天井を現代的に再解釈した意匠を採り入れながら、柱の存在を感じさせない大らかな空間として計画されている。食事のためだけでなく、イベントやレセプションにも対応できる柔軟性を備え、船上の邸宅におけるリビングルームのような位置付けとなる。一方、船尾のバーラウンジは大開口のガラスによって海との距離を縮め、室内にいながら屋外のような開放感を味わえる空間とした。

特に片山氏のコンセプトが色濃く表れるのが、船首の個室と最上階のフライングデッキだ。東京湾の景色を最も印象的に受け止められる位置として計画された個室は、デッキと連続する構成によって室内外の境界を曖昧にしている。さらにフライングデッキは、「庭園としての東京湾」を最もダイレクトに体感できる場所として設計され、海上の風や光、広がる視界そのものが空間の一部となる。船内を豪華に装飾するのではなく、東京湾の風景を最大のデザイン要素として取り込むことで、建築、インテリア、ランドスケープが融合した新たな船上空間を実現している。

【新クルーズ船「AMANE」概要】
船名:AMANE(海音)
就航予定:2027年春
全長:約48.0m
全幅:約9.5m
喫水:約2.1m
総トン数:約480トン
定員:約90名(着席時)
クライアント:日本郵船株式会社
本船トータルデザイン:片山正通
(株式会社ワンダーウォール 代表)
ロゴデザイン:平林奈緒美
プロジェクトコンサルティング:寺田心平
(株式会社タイソンズアンドカンパニー    代表取締役社長)




ワンダーウォール
https://wonder-wall.com/ja

2026年7月8日水曜日

【HAY】プロダクトデザイナー倉本仁氏がデザインしたコートラック「KNIT」に新色「Bordeaux(ボルドー)」を追加

HAYは、プロダクトデザイナー倉本仁氏がデザインしたコートラック「KNIT」に、アジア限定カラー「Bordeaux(ボルドー)」を追加し、7月3日に発売した。販売はHAY TOKYO、HAY OSAKA、HAY ONLINE STOREで行う。

「KNIT」は、ロープや金属棒を“編む”ように扱う実験的なプロセスから生まれたコートラックだ。3本のスチールパイプが立体的に交差しながら互いを支え合う構造を採用し、装飾を排したシンプルなデザインでありながら、空間の中で彫刻作品のような存在感を放つ。機能を成立させるための構造そのものが造形となる点に、この製品の大きな魅力がある。
デザインを手掛けた倉本氏は、家具や家電、生活用品など幅広い分野で活躍する日本人デザイナー。素材に触れながら試作を重ねるプロセスを重視することで知られ、Red Dot Design AwardやiF Design Awardなど国際的なデザイン賞も受賞している。「KNIT」にもそうした姿勢が色濃く表れており、見た目の軽やかさと安定性を両立させながら、最小限の構成要素で豊かな表情を生み出している。
今回登場したボルドーは、既存のブラック、グレー、トフィー、ホワイトに続く新色として開発された。深みのある赤褐色を基調としながらも彩度を抑えた色調で、落ち着きと温かみを併せ持つのが特徴だ。近年のインテリアトレンドではニュートラルカラーや木質感のある素材使いが主流となる一方、空間に個性を与えるアクセントカラーへの関心も高まっている。ボルドーはそうした需要に応える色といえ、主張しすぎることなく空間に奥行きや品格を与える。この色は「KNIT」が持つ造形的な魅力をより際立たせる効果もある。ブラックでは構造の輪郭が引き締まり、ホワイトでは軽快さが強調されるのに対し、ボルドーは光の当たり方によって陰影を柔らかく表現し、立体的に交差するパイプの造形をより印象的に見せる。単なるカラーバリエーションの追加ではなく、プロダクトの見え方そのものに新たな解釈を与える提案といえそうだ。
用途面では、玄関や寝室、ウォークインクローゼットといった住宅空間はもちろん、ホテルの客室やラウンジ、オフィス、レストランなどの商業空間にも適する。壁面に固定する必要がない自立式であることからレイアウト変更が容易で、収納家具という役割にとどまらず、空間を構成するインテリアエレメントとしても機能する。コートラックという日常的な家具でありながら、構造美と色彩によって空間の印象を大きく変える存在として、あらためてその魅力を発信するモデルとなりそうだ。価格は4万1800円(税込)。



【HAY】
https://www.hay-japan.com/

2026年7月7日火曜日

【KAMIYA】大阪市北区梅田に、近畿エリア初となる無人ショールームを開設

KAMIYAは7月1日、大阪市北区梅田に近畿エリア初となる無人ショールームを開設した。ショールームでは発売前の新商品を含む20点を展示し、建具の展示にとどまらない空間提案の拠点として展開する。

同社が目指すのは、ドアを単なる設備や建材ではなく、建築空間を構成する重要な要素として捉える提案だ。フルハイトドア®は、一般的なドアに見られる垂れ壁をなくし、天井まで伸びる開口によって壁面との連続性を高めることで、空間をより広く、端正に見せるデザインを特徴としている。近年、住宅設計では性能や設備だけでなく空間そのものの質が重視されるようになっており、開口部のあり方が住まい全体の印象を左右する要素として注目されている。
ショールームには国内最大級となる高さ3メートルのドアをはじめ、発売前の新製品など計20点を展示する。なかでも京都の職人が手作業で仕上げた漆のドアは初公開となり、工業製品の精度と伝統工芸の質感を融合させた提案として位置付けられる。

空間構成にも力を入れた。高価格帯住宅を想定し、海外ブランドの照明や家具を採用。ドア単体を見せるのではなく、建築空間の中でどのように見え、どのような役割を果たすのかを体感できる展示とした。設計者にとっては、素材の組み合わせや光の表情、空間全体のバランスまで含めて検討できる場となる。
運営はスタッフが常駐しない無人形式を採用する。
来場者への案内は神奈川県の本社スタッフがアバターを介して遠隔で対応し、リアルタイムで相談や説明を行う。見学は2時間の完全予約制で、他の来場者を気にすることなく空間と向き合える環境を整えた。

新ショールームは、建具を選ぶ場所という従来の役割を超え、開口部が空間にもたらす価値を体感する場として位置付けられる。ドアを「仕切るための部材」ではなく、「空間をつくる建築要素」として捉え直す提案が、設計者の新たな発想につながりそうだ。


【KAMIYA 大阪無人ショールーム】
所在地:大阪府大阪市北区梅田三丁目4番5号 毎日インテシオビル2F
営業時間:10:00‐17:00 
定休日:不定休
駐車場:なし




KAMIYA






2026年7月6日月曜日

【土のミュージアムSHISO】淡路島の土を使用した家具ブランド「TSUCHI」を発表

淡路島の土から生まれた新たな家具ブランドが始動する。近畿壁材工業が運営する「土のミュージアムSHIDO」は、淡路島の土を用いた家具ブランド「TSUCHI(ツチ)」を立ち上げるとともに、その初の発表の場となる展覧会「LAND/TRACE ― 大地のプロダクト展 ―」を2026年7月4日から開催する。

TSUCHIは、淡路島の土や地層、風土の中に刻まれた時間の痕跡を、家具や照明、生活道具として現代の空間へと移し替えることを目指すブランドだ。土を単なる素材として扱うのではなく、その土地の成り立ちや風景、人々の営みの記憶を内包した存在として捉え直し、暮らしの中で触れられるかたちへと再構成する。
本展では、スツールやローテーブル、ベンチ、照明、お香立てなどを展示する。いずれも土が本来持つ粒子感や凹凸、不均質な質感を生かしたデザインが特徴で、光の当たり方によって変化する陰影や素材の揺らぎが、そのままプロダクトの表情として表れている。均質さや効率性が求められる現代の空間に対し、自然素材ならではの静けさや奥行きを持ち込もうとする試みといえそうだ。
ブランド誕生の背景には、土のミュージアムSHIDOがこれまで続けてきた活動がある。同施設は、土や左官文化、アートを通して新たな豊かさを社会へ発信する拠点として運営されており、TSUCHIはその理念を建築空間から家具やプロダクトの領域へと広げる取り組みとして生まれた。土の深層に眠る時間や風景、そこに残された手の痕跡を読み取りながら、日々の暮らしの中で自然と向き合うきっかけを形にしていく。

素材として淡路島の土を用いることにも意味がある。淡路島は日本神話において国生みの最初の島とされる土地として知られるが、TSUCHIはそうした物語性を前面に押し出すのではなく、大地そのものに向き合うための起点として捉えている。土や石、地層、ひび割れ、風雨が刻んだ痕跡は、自然の造形であると同時に、その土地が積み重ねてきた時間の記録でもある。ブランドは、そうした土地固有の質感や記憶を読み取りながら、現代の住空間に調和するプロダクトとして立ち上げることを目指している。
近年は家具やインテリアの分野においても、地域素材や自然素材への関心が高まっている。一方で、多くの製品が均一な品質や整った表面を追求する中、TSUCHIはあえて土の不均質さに価値を見いだす。粒子の違いや微細な凹凸、光によって移ろう表情は、一つとして同じものがない自然素材ならではの魅力であり、空間に穏やかな存在感をもたらす要素として位置付けられている。

展覧会名の「LAND/TRACE」には、大地とその痕跡という意味が込められた。展示されるプロダクトは、機能やデザインだけを語るものではなく、土地と時間の積層を可視化する存在でもある。建材として親しまれてきた土が、家具や照明としてどのような表情を見せるのか。展覧会は、素材の可能性を探る場であると同時に、私たちの暮らしと大地との距離をあらためて見つめ直す機会にもなりそうだ。


LAND/TRACE  - 大地のプロダクト展 -
会期:2026年7月4日(土)- 8月16日(日)
時間:平日 13:00 - 17:00 / 土日祝 10:00 - 18:00
休館:火・水 ※予約の場合開館
会場:土のミュージアムSHIDO
住所:〒656-1521 兵庫県淡路市多賀2150
入場:500円 ※予約優先制
お問い合わせ:info@tsuchi-japan.com



TSUCHI

2026年7月3日金曜日

【関西大学】キャンパス内にある学生会館の建替計画を始動し、エントランスに大屋根リングで使用された木材を活用と、象徴的な木組みの構造を再現すると発表

 2025年の大阪・関西万博を象徴した大屋根リングが、閉幕後も大阪の地で新たな役割を担うことになりそうだ。関西大学は、千里山キャンパス内にある学生会館「誠之館群」の建替計画を始動し、新施設のエントランスに大屋根リングで使用された木材を活用すると発表した。万博の象徴的な木組みの構造を再現し、その理念や記憶を学生たちの日常空間へと受け継ぐ考えで、2029年3月の完成を予定になっている。
大阪・関西万博を巡っては、閉幕後に膨大な施設や資材をどのように未来へ生かすのかが大きなテーマとなってきた。その中で関西大学は、大屋根リングを単なる保存対象として扱うのではなく、人が集い、学び、成長する場所へと移し替える道を選んだ。新施設では、回遊動線の起点となるエントランスにリングで実際に使用された木材を再利用し、特徴的な木組みと貫工法を再現。「多様でありながら、ひとつ」というリングの理念を建築空間として継承する。

建替えの対象となる誠之館は、文化会や学術研究会、体育会など数多くの課外活動団体が利用してきた学生会館群である。現在の2号館、3号館、5号館は建設から半世紀以上が経過し、施設の老朽化に加え、活動の多様化に対するスペース不足も課題となっていた。関西大学は今回の再整備を、単なる施設更新ではなく、学生同士の交流や新たな挑戦を育む場づくりとして位置付けている。
新たな誠之館は、地上11階建て、高さ約45メートル、延床面積約2万2000平方メートルの規模で整備される。「アクティブ・グリーンヒル・キャンパス」をコンセプトに掲げ、部室や活動拠点に加え、トレーニングジム、共通講義空間、音楽やスポーツ活動のための施設などを配置する計画だ。課外活動に所属する学生だけでなく、すべての学生や教職員が利用できる環境を整え、キャンパス内の多様な人々が自然に交わる交流拠点を目指すという。

大学側が描くのは、学生会館という枠を超えた「キャンパス・コア」の創出だ。日々行き交う学生たちが偶然出会い、異なる分野や価値観に触れることで、新たな挑戦や活動が生まれる。そうした場所に万博のレガシーが組み込まれることで、かつて世界中の人々を迎えた建築が、今度は未来を担う若者たちを迎える空間へと姿を変えることになる。

さらに今回の計画は、資源循環の観点からも意味を持つ。大屋根リングの木材を再利用することで、解体後の資材を次世代へと引き継ぎ、環境負荷の低減や国産材活用の促進につなげる。関西大学は、本事業をSDGs推進の象徴的な取り組みとして位置付けており、サーキュラーエコノミーの実践という側面も担わせる考えだ。

全国各地で万博レガシーの活用が模索される中、今回の計画は建築そのものを保存するのではなく、「使い続けること」で価値を継承しようとする試みといえる。万博の記憶を展示物として残すのではなく、学生たちの学びや交流の風景の中に溶け込ませる。大屋根リングが、その理念とともに新たな世代へ受け継がれていくことになりそうだ。





関西大学
https://www.kansai-u.ac.jp





2026年7月2日木曜日

タカラスタンダード、初の高級キッチンブランド「Artevo(アルティーボ)」をローンチ

 システムキッチン・バス等を展開する住宅設備機器メーカー・タカラスタンダード株式会社は、2026年6月26日(金)に、初めての高級キッチンブランド「Artevo(アルティーボ)」をハイエンドな新築分譲マンション向けにローンチした。また、ブランドのコンセプトスタイルを体感できるショールームを東京・浜松町にオープンした。【写真1】

【写真1】ショールームに展示される「Artevo」のコンセプトスタイル


「Artevo(アルティーボ)」は素材や設備、空間設計までを一体で提案する、メーカー初のキッチンブランドのラグジュアリーライン。自由設計を特徴とした、フルオーダーキッチン空間を提案する。【写真2】

【写真2】住戸やインテリアと調和した「キッチン空間」


製品の特長として、メーカーの強みである10mmピッチの自由設計を基軸とした新たな構造を探求。マテリアルや仕上げには国内外の先進素材、技術を採用されることで、シームレスで木口の目立たないデザインが可能となった。製品全体を通して、ハイエンド層へ向けた高級感溢れる仕様となっている。
【写真3】【写真4】

【写真3】扉材には左官仕上げ塗料
「OLTREMATERIA(オルトレマテリア)」を採用

▲【写真4】石材をテーパーカットしたデザイン


「Artevo」ブランドショールーム

ショールームには、「Artevo(アルティーボ)」のブランドを象徴する3つのキッチンモデルを展示。国内外の先進素材、技術を採用したモデルや、ホームパーティーやプライベートダイニングに対応したモデルなど、多様化したライフスタイルや使い方に合わせたキッチンが収納や素材など、空間とあわせて体験可能なショールームとなっている。

キッチンモデルが展示される各エリアには、デザイナーによってそれぞれのコンセプトスタイルに合わせた照明、フレグランス、環境音が演出されることで、「Artevo」ブランドの世界観をショールーム全体で体感することができる。

コンセプトスタイル:【The Artevo】

コンセプトスタイル:【Chefs Artevo】

コンセプトスタイル:【Casa Artevo】


〈商品概要〉
■ブランド名  Artevo(アルティーボ)
■ローンチ日  2026年6月26日(金)
■料金     プラン内容や使用に応じて個別見積
■発売元    タカラスタンダード株式会社
■お問合せ先  06-6962-1515(10:00~17:00 ※土日祝・夏期・年末年始を除く)
※ショールームの一般公開はしておりません。
 当社営業担当者を窓口とした事前予約制となっております。

2026年7月1日水曜日

【NPO法人HOME-FOR-ALL】石川県珠洲市飯田町の商店街に、新たな交流拠点「飯田のみんなの家」が誕生

能登半島地震からの復興が続く石川県珠洲市飯田町の商店街に、新たな交流拠点「飯田のみんなの家」が誕生し、2026年4月にオープンした。被災地に建てられた数ある施設の一つではあるが、この建築が目指したのは単なる居場所づくりではない。震災によって失われつつある地域の記憶や風景を建築の中に再び息づかせ、未来へ受け渡していくことにある。

運営を担うのは、震災以前から寺子屋活動などを通じて地域づくりに取り組んできたNPO法人ガクソー。建設地となったのは、かつて商店街で額装店として親しまれていた細長い敷地で、日常的に人が行き交っていた場所の記憶を引き継ぐように計画された。

建物に足を踏み入れると、まるで一本の路地を歩くかのような空間が続く。軒下から小上がり、キッチン、スタジオへと緩やかに連なり、その先には子どもから高齢者までが自由に過ごせる居場所が点在する。2階にはフリースペースやコワーキングスペースが設けられ、学びや仕事、地域活動など多様な使い方を受け止める構成となっている。用途ごとに部屋を区切るのではなく、人の滞在や偶然の出会いを促すように居場所を散りばめた計画は、商店街が本来持っていた交流の機能を現代的に再構築したものともいえる。

この建築でとりわけ印象的なのは、復興を「新しく造り替えること」としてではなく、「残されたものを生かすこと」として捉えている点にある。屋根には解体家屋からレスキューされた能登特有の黒瓦が葺かれ、柱やカウンターには古材を再利用した。壁には地域住民らが製作に携わった日干しレンガが用いられ、館内には古家具も配置されている。

建築の世界では近年、環境負荷低減の観点から資材の再利用が注目されている。しかし、飯田のみんなの家における再利用は、単なるリサイクルの枠を超えている。黒瓦も古材も、それぞれがかつて誰かの暮らしを支えていた素材であり、その土地の風景を形づくってきた存在だ。建物が失われても、素材に刻まれた時間や記憶は残る。その記憶を新たな建築へ組み込むことで、復興後の風景に地域の連続性を取り戻そうとしている。
また、この建築は完成した建物だけで評価されるものではない。古材の活用や日干しレンガづくりには地域住民も参加し、上棟式にも多くの人々が集まった。建築を「つくる過程」そのものが、人と人とのつながりを生み出す機会となったのである。震災後の復興では建物の再建が注目されがちだが、本来失われたのは建物だけではなく、人々が集まり、語り合う場でもあった。飯田のみんなの家は、その関係性の再生にも取り組んだプロジェクトといえる。
同施設は、建築家の伊東豊雄氏が代表を務めるNPO法人HOME-FOR-ALLが推進する「能登のみんなの家」プロジェクトの第2号施設として整備された。設計はPERSIMMON HILLS architectsが担当し、日本財団の助成を受けながら、自治体や地域住民、多くの企業・団体の支援によって実現した。

夜になると建物は商店街の中で柔らかな光を灯し、ぼんぼりのような存在として周囲を照らす。その姿は、新しいランドマークというよりも、以前からそこにあった居場所が戻ってきたかのような佇まいを感じさせる。



「飯田のみんなの家」概要
【建築概要】
場所:石川県珠洲市飯田町
敷地面積:247.02平方メートル
建築面積:157.01平方メートル
延床面積:229.5平方メートル
用途:店舗、スタジオ、コワーキング、住居
竣工年月:2026年4月

【クレジット】
運営:NPO法人ガクソー
設計:柿木佑介+廣岡周平+清水康平/PERSIMMON HILLS architects
構造:井上健一構造設計事務所
施工:家元
助成:日本財団(「みんなの憩いの場」プロジェクト)
協力:瓦バンク、堀瓦工業、モノクローム、新出製材所、社会福祉法人進和学園、エフラボ、大阪万博英国パビリオン、VAN、木からつくるまちプロジェクト、UK駅伝




企画
NPO法人HOME-FOR-ALL 
https://www.home-for-all.org/