2026年5月8日金曜日

松竹によるアートスペース「SHUTL(シャトル)」2026年7月に空間リニューアル決定

 松竹が運営するアートスペース「SHUTL(シャトル)」(東京都中央区築地)が、2026年7月に空間リニューアルを行うことが決まった。設計・デザインを手がけるのは、近年注目を集める若手建築家、板坂留五(RUI Architects)。同スペースが掲げる「伝統と現代を接続し、『未来のオーセンティック』を生み出す実験場(ラボ)」という理念を、より立体的に体現する場へと更新される。

SHUTLは、演劇や映像、現代美術など多様な表現を横断する拠点として、松竹が立ち上げた実験的なアートスペースだ。今回のリニューアルでは、メタボリズム思想の文脈を引き継ぎつつ、空間が常に変化し続けるための新たな仕組みを取り入れる。フラットで中立的だった従来の空間に、より柔軟で時間性を孕んだ構造を加えることで、展示やイベントの在り方そのものを問い直す。
左:板坂留五(Photo:Nanako Ono) 
右:板坂 留五(RUI Architects)によるコンセプトスケッチ

設計を担う板坂留五は1993年生まれ。建築設計を軸に、展覧会の会場構成やプロダクトデザインなど、領域を横断した活動で知られる。住宅作品「半麦ハット」(西澤徹夫との共同設計)をはじめ、「DESIGNTIDE TOKYO 2024」の会場構成や、WHAT MUSEUMでの展示「波板と珊瑚礁 ─ 建築を遠くに投げる八の実践」など、建築と表現の境界を探る仕事を重ねてきた。

板坂の特徴は、情報や要素、時間や人の営みといった複層的な文脈を丁寧に読み解き、空間に落とし込む柔らかなアプローチにある。今回のリニューアルでは、展示やイベントに応じて配置を変えられるモジュール型の什器を導入。自由度の高い構成でありながら、時に制約ともなり得る仕組みが、作家と空間の対話を促すことを狙う。対象は表現者に限らず、作品そのものや鑑賞者、さらには周辺環境や時間の移ろいまでを含む。
板坂はコンセプトとして、「いつもってなんだっけ?」という問いを掲げる。「常に変わり続ける」ことによって場所やモノの価値を測るとき、その基準となる“いつも”とは何なのか。見過ごされがちなものに気づき、受動的に表現を消費するだけでは得られない喜びを生み出す場を目指すという。昼夜や季節、一年の時間軸の中で、空間が生き生きと変化し続ける状態を構想している。

SHUTLは今回のリニューアルを通じ、展示のための受動的な箱から、表現を引き出し、関係性を育む「持続可能でアクティブなギャラリー空間」へと進化を遂げると位置づける。工事は5月下旬に着工予定で、その期間は一時休館となる。6月中旬には空間の全容とリニューアルオープン記念展示の内容を発表し、7月下旬に新装オープンを迎える予定だ。1895年(明治28年)創業の松竹は、演劇や映画を軸に日本の文化産業を牽引してきた企業であり、SHUTLはその歴史を背景に、次世代の表現や創作のあり方を探る拠点の一つとなっている。伝統と現代、建築と表現のあいだを行き交う「実験場」が、どのような風景を更新していくのか注目される。


(板坂氏による過去設計事例)
新築住宅兼店舗「半麦ハット」Photo: Nanako Ono
会場構成「DESIGNTIDE TOKYO 2024」Photo: Nanako Ono
カフェの内装「ミヤチ商店」Photo: Nanako Ono






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