2025年7月7日月曜日

森美術館、藤本壮介氏初の大規模個展「藤本壮介の建築:原初・未来・森」7/2より開催中

森美術館(六本木ヒルズ森タワー53F)にて、2025年7月2日~11月9日の会期で建築家・藤本壮介氏初の大規模個展「藤本壮介の建築:原初・未来・森」が開催中。
▲出展者の藤本壮介氏。7/1に行われたプレス内覧会にて。

藤本壮介氏は東京とパリ、深圳に設計事務所を構え、個人住宅から大学、商業施設、ホテル、複合施設まで、世界各地でさまざまなプロジェクトを展開。現在開催中の2025年大阪・関西万博にて会場デザインプロデューサー、≪大屋根リング≫の設計も手掛ける。
今回の展覧会は藤本氏にとって初の大規模個展で、活動初期から世界各地で現在進行中のプロジェクトまで8セクション構成で網羅的に紹介するとともに、約30年にわたる歩みや建築的特徴、思想を概観したもの。展示には、模型や設計図面、竣工写真に加え、インスタレーションや空間を体験できる大型模型、モックアップ(試作モデル)なども含まれ、建築に携わる人だけでなく、だれもが藤本建築のエッセンスを体感できる、現代美術館ならではの展覧会。さらに、藤本氏による未来の都市像の提案を通し、建築の存在意義や可能性についての考察も試みも。

1 思考の森
活動初期から現在計画中のものまで、藤本の100を超えるプロジェクトを紹介する大型インスタレーション《思考の森》。模型や素材、アイデアの断片であるオブジェなどが、藤本建築の3つの系譜*に分類され年代順に配置され、1つの「森」を構成する。
*閉鎖的な境界線が外部に開かれる「ひらかれ かこわれ」、空間の用途や性質が曖昧で多義的な「未分化」、一つの建築が多くのパーツで構成される「たくさんのたくさん」で、藤本建築の根幹をなすもの。
2 軌跡の森—年表
倉方俊輔氏(建築史家、大阪公立大学教授)監修の下で制作された、藤本氏の活動の軌跡を総覧する年表。東京大学を卒業した1994年から今後竣工予定のものまで藤本氏による96のプロジェクト、同時期に竣工した国内および日本人建築家による主要作品、国内外の建築業界や社会一般の出来事などが掲載。また、各時代に何を重視していたのか読み取れる藤本氏の言葉に加え、作品写真のスライドショー、本人のインタビュー映像も展示し、藤本建築を歴史的文脈で読み解くことを試みている。
3 あわいの図書室
間(あわい)をコンセプトとするブックラウンジ。幅允孝氏(ブックディレクター、有限会社バッハ代表)が藤本建築から着想を得た5つのテーマ「森 自然と都市」「混沌と秩序」「大地の記憶」「重なり合う声」「未完の風景」により、選んだ書籍40冊が1冊ずつ椅子に置かれ、椅子には本から抜粋された言葉が散りばめらている。読書に没頭したり、藤本氏が森のようだと評する外の都市風景を眺めながら休憩したりと、「本を読む/読まない」の「間」としての空間とした。
4 ゆらめきの森
利用者や居住者の動きを表現したアニメーションを建築模型に投影し、建築そのものではなく人の動きに焦点を当てた展示。学生たちが集い、談話し、交流する《エコール・ポリテクニーク・ラーニングセンター》(2023年、フランス、サクレー)、家族が時に離れ時に一緒に過ごす《T house》(2005年、群馬)、子どもたちがあちこちで遊び回り、斜面を登り下りする《UNIQLO PARK 横浜ベイサイド店》(2020年、神奈川)など藤本の5つのプロジェクトを建築図面と共に紹介。
5 開かれた円環
2025年大阪・関西万博のシンボルで世界最大の木造建築物《大屋根リング》(2025年)の1/5部分模型を中心に、構想段階のスケッチや記録写真、リングで使用された日本の伝統的な貫接合技術を紹介するモックアップ、藤本氏のインタビュー映像などによって、リングを様々な角度から掘り下げる。また求心性と発散性を同時に併せ持ち、分断を超えたつながりを象徴する「開かれた円環」というコンセプトに焦点を当て、《ハンガリー音楽の家》など関連する12プロジェクトの模型を展示する。
6 ぬいぐるみたちの森のざわめき
《ラルブル・ブラン(白い樹)》、《太宰府天満宮 仮殿》(2023年、福岡)など、藤本氏が手がけた9つの建築がぬいぐるみとなり対話をするインスタレーション。明るく話好き、寡黙で真面目などの性格が設定された建築のぬいぐるみたちが、お互いについてのユーモラスな会話をする。会話からは、各プロジェクトの特徴やそれらが設計された背景などを知ることができる。また、藤本によるスケッチも多数展示。
7 たくさんの ひとつの 森
2024年にコンペで選出され、基本設計を手掛けている音楽ホール兼震災メモリアル《仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設》を紹介。建物の構造が体感できる15分の1の大型吊模型を中心に、テーマ「たくさんの/ ひとつの響き」が具現化された設計プロセスを見せる模型や資料を展示。また「ばらばらであり ひとつであり」というコンセプトに基づいて設計されたプロジェクトの模型と藤本氏のインタビュー映像、さらに70点の主要プロジェクトのコンセプト・ドローイングにより藤本建築を複合的に紹介する。
8 未来の森 原初の森—共鳴都市 2025
藤本氏と宮田裕章氏(データサイエンティスト、慶應義塾大学教授)によって考案された、未来都市の提案。模型と映像で表現される、大小様々な球体状の構造体が複雑に組み合わさった未来都市は、全体で高さ500m程度の範囲に収まる。そこでは、住宅、学校、オフィスといった都市生活に必要なものが備わっている。立体的に組み合わされた無数の球体群は、「森」と同様、絶対的な中心を持たず多方向に開かれ、人々が複層的に関係を構築する新たなコミュニティ形成が意図されている。
開催期間中は、関連プログラムが多数開催。詳細は公式サイトにて。

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