建築家・青木淳氏と品川雅俊氏が率いる建築設計事務所ASが、ウェブサイトを全面リニューアルした。手掛けたのはデザインファームのH inc.で、単なる作品紹介にとどまらず、設計事務所が蓄積してきた膨大な記録や思考の断片にアクセスできる「建築アーカイブ」として再構築した点が特徴となっている。
△建築設計事務所ASの新しいウェブサイトのトップページ
建築事務所のウェブサイトといえば、通常は竣工写真や代表作を並べたポートフォリオとして機能することが多い。しかし今回公開されたASの新サイトは、その完成した建築の背後にある設計プロセスそのものへ視線を向ける。図面や模型、設計中の記録写真、ノート、スクラップブック、テキストなどを横断的に閲覧できる構成とし、建築家がどのように考え、迷い、検討を重ねながら空間を生み出してきたのかを追体験できるよう設計された。
△設計過程の写真資料を閲覧できるPhoto_Processの一覧画面
サイト内の情報は、「Projects」と「Materials」という二つの軸で整理されている。建築作品ごとに設計の全体像を読み解くことができる一方で、図面や写真、ノートといった資料群から横断的にアプローチすることも可能だ。例えば完成した建築から設計初期のスケッチへ遡ったり、図面から当時の検討記録へ移動したりと、建築家の思考の流れを立体的にたどることができる。
建築文化の観点から見ると、この試みは興味深い。近年、建築アーカイブの重要性が国内外で高まっているものの、多くは研究機関や美術館などに保管され、一般に広く公開される機会は限られてきた。一方、ASの新サイトは、設計資料そのものを建築文化の資産として公開し、建築家だけでなく学生や研究者、建築に関心のある一般読者にも開いている。
H inc.は今回、情報設計からUX/UIデザイン、システム開発、ビジュアルデザインまで一貫して担当。データベース企画・編集ではStudio Xxingham K.K.と協働し、作品管理だけではなく、資料同士の関係性や文脈が読み取れるアーカイブ構造を構築した。膨大な資料を効率的に整理するだけでなく、閲覧者が情報の間を行き来しながら新たな発見に出会える体験を重視したという。
建築界では近年、完成した建築物だけでなく、その背後にあるプロセスやリサーチ、思想をいかに継承するかが重要なテーマとなっている。今回のASのウェブサイトは、インターネットを単なる広報媒体としてではなく、建築家の記憶や知識を蓄積し、未来へ開くアーカイブとして活用する試みといえそうだ。
H inc.
https://www.hi-inc.tokyo/
H inc.
https://www.hi-inc.tokyo/
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