2026年8月6日木曜日

【イビケン】プレミアムメラミン化粧板ブランド「イビボードH(アッシュ)」に、新柄「Grano Concrete(グラノコンクリート)」を追加

イビケンは、プレミアムメラミン化粧板ブランド「イビボードH(アッシュ)」に、新柄「Grano Concrete(グラノコンクリート)」を追加した。今回の新製品は、“本物が嫉妬するテクスチャー”をコンセプトに開発されたコンクリート柄で、左官職人の手仕事が生み出す繊細な表情まで再現した高意匠建材として提案する。

近年の建築やインテリアでは、コンクリート打ち放しや左官仕上げに代表される無機質で素材感のある空間表現への注目が高まっている。一方で、実際の左官仕上げは施工精度やコスト、メンテナンス面で制約も少なくない。そうした中でイビケンが着目したのは、左官材ならではの豊かな表情を、より扱いやすい内装材として再構築することだった。
グラノコンクリートの開発では、実際に職人が施工した左官仕上げのボードをマスターサンプルとして採用。単にコンクリート柄を印刷するのではなく、コテで塗り広げた際に生まれるわずかな陰影や凹凸、骨材の粒子感、塗りムラといった本物ならではの表情を徹底的に分析した。その上で、複数の階調を持つ高度なエンボス加工を施し、滑らかな面とラフな孔のある面が共存する独特の質感を表現している。

特に注目したいのは、見た目だけでなく触感にも配慮した点だ。光の当たり方によって浮かび上がるコテ跡や微細な凹凸は、遠目には上質なコンクリート仕上げとして映り、近づくほど手仕事の痕跡を感じさせる。本物の左官壁が持つ不均質な魅力や温もりを、メラミン化粧板という工業製品の中で再現しようとした意欲的な試みといえる。
テーブルトップ、鉢カバーへの使用事例

製品名の「Grano」は粒子や骨材を意味し、その名の通り細かな骨材感を感じさせる表情が特徴だ。過度な装飾性を排したベーシックなコンクリート柄でありながら、奥行きのあるテクスチャーによって空間に豊かな陰影を生み出す。ミニマルな空間はもちろん、木材や金属など異素材との組み合わせにおいても高い汎用性を発揮しそうだ。

カラーはホワイト、ライトグレー、グレー、ダークグレーの4色をラインアップ。ニュートラルな色調を揃えることで、住宅からオフィス、ホテル、商業施設まで幅広い空間への展開を想定している。テーブル天板やカウンター、パーテーション、什器、収納扉など、耐久性が求められる部位でも採用しやすい。

BC-3663PL  ホワイト

BC-3664PL  ライトグレー

BC-3665PL グレー

BC-3666PL ダークグレー

「イビボードH(アッシュ)」は、イビケンが展開する高意匠シリーズとして、本物の素材感を追求した化粧板を展開しているブランドだ。柄とエンボスを高精度で同調させたメラミン化粧板をはじめ、本物の金属箔を使用した金属化粧板や、革端材を有効活用したアップサイクル素材「アップボーンレザー」なども展開している。今回のグラノコンクリートは、その中でも特に「触れてわかる質感」に焦点を当てた製品と位置付けられる。

建材に求められる価値が、性能だけでなく体験や空間演出へと広がる中、グラノコンクリートは単なるコンクリート調化粧板ではなく、職人の手仕事が生み出す素材の魅力を工業製品として昇華したマテリアルといえる。リアルな質感と高い実用性を両立することで、設計者やインテリアデザイナーに新たな選択肢を提示しそうだ。




2026年8月5日水曜日

『Faith Design Competition 2026』の受賞者決定! グランプリは、服部大祐、服部さおり(MIDW)による【Breathing Oasis】が受賞

 株式会社フェイスネットワークが主宰する設計コンペティション『Faith Design Competition 2026』の受賞者が決定した。本コンペティションは都市住宅の新しい在り方を問うコンペであり、一般部門のグランプリには実在プロジェクトの設計権利が与えられ、エントリー総数1557件、応募総数272点が集まった。7月30日(木)にビルボードライブ東京で開催した最終審査会では、9組のファイナリストによる公開プレゼンテーションを実施。

▲ コンペティション 受賞風景

▲ 一般部門 グランプリを受賞した
服部大祐さん、服部さおりさん(MIDW)

「一般部門(U-45)」では、フレームやファサードなどの環境装置によって自然と調和した集合住宅を提案した、服部大祐さん、服部さおりさん(MIDW)の【Breathing Oasis】がグランプリを受賞。

また、「学生部門(U-25)」では、窓やベランダといった建築の要素によって人のふるまいを喚起する集合住宅を提案した、村上翔太さんの【Room,Veranda,Balcony__→】がグランプリを受賞した。

▲【Breathing Oasis】プレゼンテーション風景

▲【Breathing Oasis】 模型およびマテリアルモデル

審査会では実施を前提としたコンペティションであることを背景に、アイデアだけでなく、構造や法規、コスト面や事業性など広がりを持った視点からこれからの都市住宅に向けた議論がなされた。

▼審査会風景


▲審査委員長の永山祐子氏による総評


情熱と独創性にあふれたプレゼンテーションに、審査員長の永山祐子氏からは「どの作品もレベルの高い設計力と新しい発想に溢れており、素晴らしいコンペティションでした。最優秀賞の作品は、与えられたスケールが秀逸で、そこから生み出される建築が持つ空気感や空間の質が大変印象的でした。」との講評が寄せられ、審査員とがこれからの都市住宅の在り方を共に議論した白熱した審査会となった。



◆『Faith Design Competition 2026』受賞作品紹介

「一般部門(U-45)」

グランプリ :【Breathing Oasis】

       服部大祐 服部さおり


優秀賞  :    【Sky Frame Window 階⾼を⾶び超える窓】

         卯月裕貴、今城瞬、山中浩太郎

       【経堂の杜と暮らす GRANDUO KYODO no MORI】

       林山赳大、箕浦浩樹、篠原敬佑、鈴木俊


入賞 :      【匿名都市の中の居場所】

      【斜めにひらく住まい】

      西川拓、平田悠

      【DEPTH OF THE FAÇADE,  WHERE LIGHT MEETS WIND.】

       高栄智史、福地和来、三本大暉、椿山晴人、秋山太志

「学生部門(U-25)」

グランプリ:【Room,Veranda,Balcony__→】

                    村上祥太


優秀賞  :【東京を象るイエ】

                   石井涼也、冨永悠生、田村渚歩


入賞   :【庭を纏う家】

                    西村隆司、萩原心


詳細は、下記URLからご確認ください。

【Faith Design Competition 2026 公式HP】

https://www.faithdesigncomp.jp/finalist2026


◆会社概要

会社名  :株式会社フェイスネットワーク

会社HP   :https://faithnetwork.co.jp/

代表者  :代表取締役社長 蜂谷二郎

事業内容 :不動産業/建設業/一級建築士事務所

2026年8月4日火曜日

【創造系不動産】住宅再生プロジェクト「日野の家―宮脇檀住宅を住み継ぐ」が完成

建築設計事務所studio9Xは、建築家・宮脇檀が住宅地計画から関わった東京都日野市の「高幡鹿島台ガーデン」に建つ築約30年の住宅を再生するプロジェクト「日野の家―宮脇檀住宅を住み継ぐ」が2026年7月下旬に完成した。

高幡鹿島台ガーデンは1985年に宮脇檀建築研究室と鹿島建設が計画した全54区画の住宅地で、住宅だけでなく道路や広場、植栽、街並みまでを一体的に設計した住街区として知られる。歩行者を優先したボンエルフ道路や街区内を巡るフットパス、住民同士の交流を促すポケット広場、景観形成のための建築コードなどを導入し、建築家がデザインした先進的な住宅地の事例として高い評価を受けてきた。
△宮脇氏による本物件のドローイング

今回再生された住宅は、その住宅地の一角に建つ宮脇設計の一棟で、30代の子育て世帯の新たな住まいとして改修された。設計を担当したstudio9Xは2024年に活動を始めた建築設計事務所で、建築設計に加え、建築を社会へ実装するプロセス全体を視野に入れた取り組みを進めている。施工はNENGO、建築不動産コンサルティングは創造系不動産が担当した。

プロジェクトの発端は、一組の家族による住まい探しだった。日野市周辺で約1年半にわたり新築住宅を含めて検討していた家族が出会ったのは、緑豊かな公園に面し、その景観を大きな開口部から室内へ取り込む中古住宅だった。調査を進める中で、この住宅が宮脇檀による設計であることが判明したという。設備の老朽化や経年劣化が見られたものの、空間構成や細部の納まりには現在でも色あせない魅力が残されていた。

一方、ホームインスペクションでは建物基礎の沈下も確認された。一般的には購入を見送る判断につながりかねない状況だったが、関係者が建物の状態を詳細に調査し、補修方法や工事費、将来的なリスクを整理した上で検討を重ねた結果、建て替えではなく改修によって住み継ぐ道を選択した。
改修では、建築家住宅の価値を構成する空間設計や光の取り込み方、素材の使い方といった思想を尊重しながら、現代の生活に必要な性能や機能を加えた。浴室やキッチンなどの設備は更新して耐久性や維持管理性を高める一方、建具や造作家具、金物など建築当初の職人仕事が感じられる部分は可能な限り保存・再利用している。以前の住まい手が好んだ落ち着いた空間の魅力を残しつつ、子育て世帯が暮らしやすい明るさや素材感へと調整を施した。

宮脇檀は、住宅設計だけでなく住宅論や都市論でも大きな影響を与えた建築家で、「住まいは建物単体ではなく街並みや周辺環境との関係の中で豊かになる」という考え方を提唱した。高幡鹿島台ガーデンはその思想を体現した代表的な住宅地計画として位置付けられている。

人口減少や空き家の増加が進むなか、既存住宅ストックの活用は社会的な課題となっている。建築家住宅についても、相続や老朽化などを理由に解体される事例は少なくない。今回の取り組みは、建築家住宅を単に保存対象として扱うのではなく、実際に暮らし続けられる住まいとして更新しながら価値を継承する試みであり、既存住宅ストックの活用と住環境の継承を両立する一つのモデルケースとなりそうだ。




創造系不動産
https://www.souzou-kei.com

2026年8月3日月曜日

【国際文化会館】「近現代住宅建築の文化的活用・発信事業」共催団体に選定 _伊東豊雄「花小金井の家」を運営

公益財団法人国際文化会館は、東京都と東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京が実施する「近現代住宅建築の文化的活用・発信事業」の共催団体に選定された。文化的価値の高い住宅建築を公開や展示を通じて広く発信し、その保存と継承につなげる取り組みで、国際文化会館は建築家・伊東豊雄氏の初期代表作として知られる「花小金井の家」の運営を担う。

花小金井の家は東京都小平市に位置し、1983年に竣工した住宅作品。伊東氏が住宅建築のあり方を模索していた時期を代表する一作で、自然光を巧みに取り込む開放的な空間構成と、都市住宅に新たな可能性を提示した建築思想を今に伝えている。現在では現存する伊東氏の初期住宅作品としても貴重な存在とされ、近年は保存や活用のあり方に関心が集まっていた。
今回の事業では、建物公開のほか、特別対談会や展示などを予定しており、単なる見学機会の提供にとどまらず、建築が持つ歴史的・文化的価値を多面的に紹介していく考えだ。住宅建築は公共建築に比べて保存や継承の仕組みが整いにくく、所有者の世代交代や再開発などによって失われるケースも少なくない。そのため、公開や活用を通じて建築文化としての価値を社会と共有しながら保存につなげる取り組みは、近年ますます重要性を増している。

東京都とアーツカウンシル東京による同事業は、都内に点在する近現代の住宅建築を文化資産として捉え直し、その魅力を発信することで保存機運の醸成を図るもの。国際文化会館はその趣旨に賛同し、アートやデザイン、建築分野での活動強化を進める中で参画することになった。プログラムの詳細や実施時期については、今後、国際文化会館およびアーツカウンシル東京のウェブサイトで順次発表される予定。

1952年に設立された国際文化会館は、日本と世界の相互理解を促進する民間の国際交流機関として活動してきた。近年は国際関係や政策研究に加え、アートやデザインを重要な活動領域として位置付けており、今回の取り組みもその一環となる。伊東豊雄建築の原点の一つを広く公開することで、日本の近現代住宅建築の価値を再発見する機会となりそうだ。




国際文化会館
https://ihj.global/

2026年7月31日金曜日

【日本建設業連合会】第7回土木賞 第68回BCS賞を決定

一般社団法人日本建設業連合会は7月28日に開催した表彰委員会で「日建連表彰2026」の受賞案件を決定した。第7回土木賞は応募33件の中から特別賞2件を含む12件、第67回BCS賞は応募75件の中から15件が選ばれ、土木・建築分野の優れたプロジェクトが顕彰されることになった。

土木賞は、事業企画から計画、設計、施工、維持管理に至るまでの取り組みを総合的に評価し、良質な社会資本の形成を促すことを目的とする表彰制度。今回はトンネル、橋梁、ダム、鉄道、洋上風力発電施設、港湾・海岸施設など幅広い分野から選出され、老朽化したインフラの更新や維持管理に関する案件が目立った。

受賞案件はいずれも施工プロセスにおける創意工夫が高く評価されたという。新工法の採用や施工自動化、プレキャスト化による工期短縮、安全性の向上、周辺環境や地域社会への配慮など、多様な課題に対して関係者が一体となって取り組んだ点が選定の決め手となった。また、施設の長寿命化や更新需要の拡大を背景に、インフラメンテナンス関連プロジェクトの存在感が高まっていることも今年度の特徴として挙げられている。
土木賞:北港テクノポート線インフラ部整備工事


第7回 土木賞
R3西湘海岸岩盤型潜水突堤整備工事(神奈川県大磯町)
大阪駅前地下道東広場改築プロジェクト(大阪市)
北九州響灘洋上ウインドファーム(北九州市)
喜連瓜破橋大規模更新工事(大阪市)
熊本57号滝室坂トンネル新設工事(熊本県阿蘇市)
JR御茶ノ水駅改良工事(東京都千代田区)
秋芳鉱業 桟橋延伸工事(山口県長門市)
信越線新潟駅付近高架化工事(新潟市)
千五沢ダム再開発事業(福島県石川町)
北港テクノポート線インフラ部整備工事(大阪市)

特別賞
五島洋上ウインドファーム(長崎県五島市)
特定廃棄物埋立処分事業に係る詰替・搬出プロジェクト(福島県内全域)


一方、BCS賞は優良な建築作品を対象に、建築主、設計者、施工者の協働によって実現した建築資産を顕彰する制度で、今回で67回目を迎えた。選考では現地調査や専門分野評価を経て、建築主の構想を設計者と施工者が高い技術力によって具現化したプロジェクトを中心に15件が選出された。

応募作品の用途別では事務所ビルが17件と最も多く、学校施設、複合施設がこれに続いた。近年の傾向として、東京圏への集中だけでなく地方都市における文化施設や交流拠点、スポーツ施設などの評価が高まっており、今回も受賞作品が全国に広く分布する結果となった。日建連は、建築主、設計者、施工者による「三位一体」の取り組みをBCS賞の特色として挙げており、今回もそれぞれの立場が持つ技術や知見を結集した事例が評価されたとしている。
BCS賞: 香川県立アリーナ 

第67回 BCS賞
あきた芸術劇場ミルハス(秋田市)
大阪避雷針工業神戸営業所(神戸市)
小千谷市ひと・まち・文化共創拠点 ホントカ。(新潟県小千谷市)
香川県立アリーナ(高松市)
京都大学下鴨休影荘(湯川秀樹博士旧宅)(京都市)
Daikin Amica Karuizawa(長野県軽井沢町)
TODA BUILDING(東京都中央区)
虎ノ門アルセアタワー(東京都港区)
長崎スタジアムシティ(長崎市)
なでしこ芸術文化センター(神戸市)
ニコン本社/イノベーションセンター(東京都品川区)
庭の床 福武トレス Fギャラリー(岡山市)
藤田美術館(大阪市)
水戸市民会館(水戸市)
YKK AP技術館(富山県黒部市)


表彰式と祝賀会は11月27日にホテルニューオータニ東京で開催される予定。土木賞とBCS賞は、日本の建設業界を代表する表彰制度として位置付けられており、今回受賞した27件は、インフラ整備や建築設計・施工の最前線を示すプロジェクトとして、今後の建設技術や建築文化の発展にも影響を与えそうだ。



日本建設業連合会
https://www.nikkenren.com/sougou/award.html

フランク・O・ゲーリー設計の「グッゲンハイム・アブダビ」26年12月11日に開館へ

アブダビ文化観光局は、故フランク・O・ゲイリー設計による「グッゲンハイム・アブダビ」を2026年12月11日に開館すると発表した。ニューヨーク、ヴェネチア、スペイン・ビルバオに続くグッゲンハイム・ネットワークの新たな拠点として整備が進められてきた同館は、ゲイリーが手掛けた美術館建築としても最大規模のプロジェクトの一つとなる。
建設地は、ルーヴル・アブダビやザイード国立博物館、アブダビ自然史博物館などが集積するサディヤット文化地区の中心部。ゲイリーは、陸と海が交わるサディヤット島の環境と、湾岸地域の伝統的な建築文化から着想を得ながら、近現代美術を収蔵する器としてふさわしいランドマークを構想した。

建物を象徴する10基の巨大な円錐形構造で、最高88メートルに達する彫刻的なフォルムは、遠景からでも強い存在感を放ち、ゲイリーの建築に共通するダイナミックな造形感覚を体現している。一方で単なる造形表現にとどまらず、湾岸地域の気候条件に応答する環境装置としても機能し、自然換気や日射遮蔽によって建物全体のエネルギー効率向上に貢献する。
内部には30のギャラリーが配置され、中央アトリウムを介して多様な展示空間が連続する構成となる。屋内展示面積は約1万1600平方メートル、屋外展示空間は約2万3000平方メートルに及び、延べ床面積は約8万平方メートルに達する。これは現代アートの大型インスタレーションや実験的な作品展示に対応するためのもので、1960年以降の多様な芸術表現を受け止めるスケールが確保されているとともに、地域の歴史や風土との関係性をより強く意識した設計となっている。建築は独立したオブジェとして成立するだけでなく、数千年にわたり交易と文化交流の拠点だったアブダビの土地性を取り込みながら、美術館そのものを文化的対話の舞台として位置付けている。

美術館は1960年代以降の近現代美術を扱い、絵画、彫刻、映像、写真、インスタレーション、ニューメディアなど幅広い表現を収蔵する。展示は年代順や地域別ではなく、「抽象芸術」「土地」「言語」「大衆文化」「物語」といったテーマを軸に構成される予定で、異なる地域や世代の芸術を横断的に読み解く新たな美術館体験を目指している。

サディヤット文化地区では近年、世界的な文化施設の集積が進んでいるが、その中でもグッゲンハイム・アブダビは、フランク・ゲイリーによる象徴的な建築とグローバルな現代アートコレクションを併せ持つ中核施設として位置付けられる。ビルバオで都市の風景を変えた建築家が中東に残す新たな代表作としても、開館に向けて大きな注目を集めそうだ。





グッゲンハイム財団
guggenheim.org

2026年7月30日木曜日

【村上工作所】「鳴子こけし」制作者との共創から生まれたペンダントライト

 伝統工芸を現代の住空間の中でどう生かすのか――。その問いに対する一つの答えともいえる照明作品『灯るこけし』が誕生した。ソニーグループのデザイナーと、宮城県大崎市鳴子温泉で代々「鳴子こけし」を製作する桜井こけしとの共創から生まれたペンダントライトで、照明部分の製造を兵庫県多可町の照明メーカー、村上工作所が担当し、6月17日から伊勢丹新宿店で開催される展示販売会で公開された。
近年の建築・インテリアの分野では、単に伝統工芸を飾るのではなく、暮らしの中で使われるプロダクトとして再編集する動きが広がっている。『灯るこけし』もそうした潮流の中から生まれた作品だ。こけし特有の柔らかな曲線や木肌の表情を生かしながら、ペンダントライトという日常的な照明へと昇華させた。

デザインは、ソニーグループのクリエイティブセンターに所属する三島章正氏が担当。鳴子こけしの製作工程である「ろくろ挽き」から着想を得て、伝統的なこけしのフォルムを現代の照明器具として再構築した。木地製作は桜井こけしの櫻井尚道氏、描彩は櫻井昭寛氏が手掛けており、長年受け継がれてきた職人技と現代デザインが融合したプロダクトとなっている。
その中で重要な役割を果たしたのが村上工作所の照明技術だ。建築照明において光は単に空間を明るくするための設備ではなく、素材感や居心地、空間の印象そのものを左右する存在とされる。今回、同社は木地の美しさを損なうことなく内部から光を灯すための機構設計を担当。木という自然素材の温もりや滑らかな質感を残しながら、柔らかな光がにじみ出るよう細部まで工夫を重ねたという。

完成した『灯るこけし』は、工芸品でありながら照明器具として暮らしに溶け込む。昼間は木工芸としての存在感を放ち、夜になると穏やかな光によって空間に温かみを与える。まるでオブジェと照明の中間にあるような佇まいは、近年の住宅やホテル、ギャラリーなどで重視される「光による空間演出」の考え方とも親和性が高い。

また、このプロジェクトは伝統工芸を保存するだけではなく、新たな需要や価値創出へつなげる試みとしても注目され、地域に根差した職人技術、企業デザイナーによる現代的な解釈、そして照明メーカーの技術が交差することで、従来にはなかったプロダクトが生まれた。建築やインテリアの世界で求められるのが均質な製品ではなく、物語や地域性を備えた素材や家具へと移りつつある中、『灯るこけし』は伝統工芸を暮らしの道具として再定義する事例の一つの選択肢となりそうだ。





村上工作所
https://www.murakami-kousakusho.co.jp/