2026年6月28日から7月2日にかけてスペイン・バルセロナで開かれる世界建築家連合(UIA)世界大会に、日本建築家協会(JIA)が食品廃棄物を建築材料として活用した茶室「カタラ庵」を出展した。会場となったバルセロナで議論される循環型社会と建築の関係に対し、岡山県瀬戸内市の牛窓オリーブ園で発生したオリーブ残渣を建築の接合部材へ転換する提案で応える。
世界120カ国以上の建築家や研究者らが集う同大会は、「Becoming. Architectures for a planet in transition(生成する建築―移行期の惑星のために)」をテーマに開催される。JIAは主要テーマの一つである「Becoming Circular(循環へ)」に呼応し、地域で生まれた食品由来の副産物を建築資源へと再編集した空間を展示する計画した。
世界120カ国以上の建築家や研究者らが集う同大会は、「Becoming. Architectures for a planet in transition(生成する建築―移行期の惑星のために)」をテーマに開催される。JIAは主要テーマの一つである「Becoming Circular(循環へ)」に呼応し、地域で生まれた食品由来の副産物を建築資源へと再編集した空間を展示する計画した。
カタラ庵で建築的な核となるのは、構造を支える小さなコネクターである。使用されるのは、日本オリーブがエキストラバージンオリーブオイルを搾油する過程で生じるオリーブ残渣だ。残渣は通常、食品生産の副産物として扱われるが、今回は樹脂を用いない「フードコンクリート」技術によって成形され、建築の接合部材として再生された。建築において接合部は、単に部材同士を結び付けるだけではなく、構造と形態の双方を決定づける重要な要素とされる。その部分に食品廃棄物由来の材料を採用した点に、このプロジェクトの問題提起がある。
展示建築は、素材の再利用にとどまらず、建築のライフサイクル全体を循環の中で捉えている。展示終了後には土へ還ることを前提としており、建築物を長期保存の対象としてのみ考える従来の発想から一歩踏み込み、自然の循環へ再び接続される存在として位置付けた。資源を採取し、製造し、使用し、廃棄するという直線的な流れではなく、建築そのものを循環系の一部として設計する試みといえる。
形態生成にも土地との関係性が組み込まれている。茶室を構成するジョイントの角度は、バルセロナの緯度である北緯41度を基準に設計されており、地中海性気候の日射や風環境に応答する構成が採用された。普遍的な建築を目指すのではなく、その場所の環境条件から形を導き出す考え方であり、地域固有性を重視する近年の建築潮流とも重なる。
さらに、建築の移動そのものも設計対象となった。茶室全体はスーツケース7個に収まる構成とされ、設計者自らが現地で組み立てる計画になっている。仮設建築でありながら輸送時の環境負荷低減まで視野に入れ、建てる行為だけでなく、運ぶことや解体することまで含めて建築として捉えている点が特徴的だ。
オリーブ残渣の採用には、開催地カタルーニャと牛窓を結ぶ地域的な共通性もある。カタルーニャ地方は古代ローマ時代から続くオリーブオイルの産地として知られ、日本オリーブもバルセロナ近郊と牛窓の双方で農園を運営している。こうした縁からJIAが協力を打診し、日本オリーブが長年研究してきた残渣活用の取り組みと大会テーマが結び付いた。
日本オリーブによると、オリーブ由来の副産物には建築との関わりを示唆する歴史的記録も残されている。古代ローマの博物学者プリニウスの『博物誌』には、オリーブの搾汁液が壁や床などに利用されていたとの記述があり、建築材料としての可能性は古くから存在していたとみられる。今回のプロジェクトは、その歴史的記憶を現代の材料技術によって読み替える試みとも位置付けられる。
設計を担当した三菱地所設計の藤貴彰氏は、オリーブ残渣について「成形しやすく、滑らかで美しい質感を持つ」と評価する。建築材料として求められる性能だけでなく、触覚や視覚に訴える素材性も備えているという。
カタラ庵は、廃棄物の再利用を訴える展示ではない。むしろ、建築が何を資源とみなし、どのような物質を社会の循環へ組み込むのかを問い直す提案といえる。これまで食品生産の残り物として扱われてきたオリーブ残渣は、今回は建築を成立させる接合部として新たな役割を与えられた。小さなコネクターに託されたのは、素材の再評価であると同時に、循環型社会における建築の新たなあり方を探る試みでもある。
牛窓オリーブ園
https://nippon-olive.info/
























