2026年8月31日月曜日

2026年度 「国際交流基金賞」 受賞者決定  建築設計事務所 SANAA、福武財団 名誉理事長 福武總一郎氏、ユディツィウム出版社

国際交流基金(JF)が実施する「国際交流基金賞」の2026年度の受賞者が決定しました。

JFは「日本の友人をふやし、世界との絆をはぐくむ。」をミッションに、「文化芸術交流」「日本語教育」「日本研究・国際対話」を通じて、世界各地との人的交流を促進し、相互理解と信頼関係の構築を通じて、より豊かな国際社会の実現を目指す独立行政法人です。


JF設立の翌年の 1973 年から実施している本賞は、これまで学術や芸術等のさまざまな文化活動を通じて日本と海外の相互理解促進に顕著な貢献があり、引き続き活躍が期待される個人または団体に授与しています。


第 53回となる今年度は、内外各界の有識者及び一般公募により86件の推薦があり、有識者による審査を経て、建築設計事務所 SANAA、福武財団 名誉理事長 福武總一郎氏、ユディツィウム出版社に決定しました。10月21日(水)に授賞式を開催いたします。


■SANAA(サナア)(日本)

西沢立衛氏と妹島和世氏 ©SANAA

【授賞理由】

SANAAは、建築家の妹島和世氏と西沢立衛氏の共同主宰により1995年に設立された建築設計事務所である。「金沢21世紀美術館」(2004年)、「ニュー・ミュージアム」(2007年)、「ルーヴル美術館ランス別館」(2012年)をはじめ、国内外で数多くの文化・教育施設の建築設計を手がけてきた。内と外、さらには建築と環境といった境界を解体しシームレスに再構成するSANAAの建築では、人々と空間の多様で開かれた関係が結び直され、創造的な対話の場がもたらされている。近年の「ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館ナーラ・バドゥ館」(2022年)や「Taichung Green Museumbrary」(2025年)においても、SANAAが探究する「公園」のような空間のさらなる深化が示された。建築を通して相互尊重に基づく国際文化交流の基盤を創出し続けるその功績は、国境を越えた普遍的意義を有するものとして極めて高く評価される。今後の活躍も大いに期待され、まさに国際交流基金賞にふさわしい存在である。

金沢21世紀美術館 ©SANAA 

■福武總一郎 氏(公益財団法人 福武財団 名誉理事長)(日本)

福武總一郎氏

【授賞理由】

福武總一郎氏は30年以上にわたり、瀬戸内海の離島で数多くの美術館の開設やアートプロジェクトなどを展開し、「瀬戸内国際芸術祭2010」ではそれらを7つの離島と高松港エリアへと拡張させ、2025年まで6回の同芸術祭を総合プロデューサーとして成功に導いてきた。その拠点となった直島は世界に類のない「アートの島」として国際的な注目を集め、急速な過疎と高齢化の進む地域をアートから活性化させたプロジェクトは、海外からも高く評価されている。ベネッセ賞や福武財団などの取り組みを含め、現代美術を中心とした国内外の数多くのアーティストに作品の創造と地域交流の機会を提供し、国際文化交流の推進と国際相互理解の増進に多大な貢献を果たしている。

ベネッセハウス 空撮

■ユディツィウム出版社(Iudicium Publishing GmbH)(ドイツ)

『和独大辞典』 © Iudicium Verlag

【授賞理由】

ユディツィウム出版社は、ドイツ・ミュンヘンを拠点とする人文学・社会科学の専門出版社である。1983年の設立以来40年余にわたり日本研究、東アジア研究、ドイツ文学、独語教育等の分野において、東アジアとドイツ語圏、特に日独間の学術交流を牽引し、幅広く翻訳文学や研究書、辞書、学術誌を多数出版してドイツ語圏における東アジア研究のプラットフォームとして持続的に研究と文化理解をサポートしてきた功績は高く評価される。特に四半世紀をかけて編纂・出版に携わった大著『和独大辞典』や、ドイツ語による数多の日本研究に加え、日本のドイツ研究者の研究書や学術誌、シンポジウム記録などの出版のいずれにおいても質の高い出版物を上梓し続け、国際的な文化学術交流に貢献してきた。

ベルリンジャパン・マーケットでの書籍紹介 
©Sabine Sommerkamp


■国際交流基金賞とは

国際交流基金賞は国際交流基金設立の翌年である1973(昭和48)年から始まり、2026年度で53回目を迎えます。 本賞では、学術、芸術その他の文化活動を通じて、国際相互理解の増進や国際友好親善の促進に特に顕著な貢献があり、引き続き活動が期待される 個人又は団体を顕彰しています。 

JF公式ウェブサイト:https://www.jpf.go.jp/j/about/award/



2026年8月28日金曜日

【フリッツ・ハンセン】アルネ・ヤコブセンの知られざる名作「Tongue Chair」が復刻

フリッツ・ハンセンは、デンマークを代表する建築家・デザイナー、アルネ・ヤコブセンが1955年にデザインした「Tongue Chair(タンチェア)」を復刻した。今回の復刻モデルは世界で唯一、日本市場向けの展開となり、ACTUS限定で販売される。
タンチェアは、ヤコブセンが設計したデンマークのムンケゴー小学校のために開発されたチェアである。建築、インテリア、家具を一体的に計画する「トータルデザイン」の思想のもと誕生し、成形合板による一体型シェルと有機的で軽やかなフォルムを特徴とする。後年にはSASロイヤルホテルのバーにも採用されるなど、公共施設やホスピタリティ空間においても使用されてきた。
今回の復刻では、オリジナルデザインの造形美を継承しながら、現代のインテリアシーンに調和するカラードアッシュ仕上げを採用。カラーはホワイト、ブラック、オリーブグリーンの3色を展開する。住宅をはじめ、オフィスや商業施設など多様な空間での使用を想定した仕様となっている。
セブンチェアやアリンコチェアと比較すると市場での流通量は限られていたものの、タンチェアはアルネ・ヤコブセンの初期デザインを象徴する作品の一つとして評価されている。約70年の時を経て復刻された本製品は、ヤコブセンのデザイン哲学とフリッツ・ハンセンのクラフツマンシップを現代に伝えるコレクションとして展開される。




フリッツ・ハンセン
https://www.fritzhansen.com/ja

2026年8月27日木曜日

【DOUBLE RAINBOW】住まい手が自らスイッチを選ぶ市場開拓へ、本格販売開始

住宅用スイッチプレートブランド「ZOLBONNE(ゾルボンヌ)」を展開するDOUBLE RAINBOWは、一般消費者向け販売を本格化した。これまで設計事務所や工務店、建材流通を中心に展開してきたが、公式ECサイトの刷新やモデルルームの開設を通じて、住まい手が自らスイッチを選ぶ市場の開拓を進める。
近年、住宅市場ではリノベーション需要の拡大を背景に、床材や建具、水回りだけでなく、住宅を構成する細部のパーツにまでこだわる生活者が増えている。建材や住宅設備を個人が選ぶことも一般化しつつある一方、スイッチプレートは依然として設計者や施工会社が選定する設備部材として扱われることが多く、意匠性や素材に着目した国産ブランドは限られている。

そうした市場の中で、ZOLBONNEは2013年の創業以来、工業用トグルスイッチを住宅向けに再構成した製品を展開してきた。日本国内の町工場で職人が一つひとつ手仕上げを行うことを特徴とし、アルミやセラミック、プライウッドメープルなど多様な素材を採用。現在は約100種類のSKUを展開し、設計事務所や工務店を中心に採用実績を重ねている。
製品は単なる電気設備ではなく、空間を構成するインテリアの一部として提案されている点が特徴だ。登録有形文化財である旧本多邸への採用実績を持つほか、グッドデザイン賞も受賞。建材流通大手の渡辺パイプや住宅パーツ販売で知られるtoolboxへの供給を通じて、建築関係者の間で独自のポジションを確立してきた。
近年は一般消費者との接点づくりも強化している。2025年にはメープル材と真鍮・アルミレバーを組み合わせた新シリーズ「ZS6 プライウッド・メープル」を発売。独自開発の取付枠「鋼の芯」を採用し、天然木の質感と耐久性を両立させた。さらに2026年2月には実際に製品の質感や操作感を体験できるモデルルームを開設し、3月には公式ECサイトを刷新。4月にはJ-WAVEの番組「STEP ONE」内コーナー「CHEER UP WORKERS」に出演するなど、BtoB中心だったブランドは一般市場への展開を本格化させている。

ブランド誕生の背景には、2011年の東日本大震災をきっかけに生まれた「暮らしと電気の関係性を見つめ直したい」という思いがある。グラフィックや映像といったクリエイティブ分野で培った経験を生かし、形状や素材だけでなく、スイッチを操作した際の音や手触りにまでこだわりながら、日常の中で何度も触れる道具としての価値を追求してきた。

住宅設備を「機能」だけでなく「体験」や「デザイン」の視点から見直す動きが広がる中、スイッチプレートもまた空間の印象を左右する要素として注目され始めている。ZOLBONNEが目指すのは、スイッチを設備部材からインテリアへと再定義することだ。設計者に選ばれる建材から、住まい手自身が選ぶプロダクトへ。その挑戦は、住宅づくりにおける価値観の変化を映し出している。




DOUBLE RAINBOW
https://doublerainbow.co.jp/

2026年8月26日水曜日

【三菱地所レジデンス・KANADEMONO】猫と人が快適に暮らせるモデルルームを公開

三菱地所レジデンスとKANADEMONOは、賃貸マンション「ザ・パークハビオ SOHO 市谷左内町」において、猫と人が快適に暮らせるモデルルームを7月23日から公開した。
ペット可賃貸への需要が高まる一方、「猫用品がインテリアになじまない」「留守中の安全が心配」「抜け毛や爪とぎへの対策が難しい」といった課題も顕在化していることから、両社は“猫と暮らすことを前提にした住空間”を提案する。
今回のモデルルームでは、KANADEMONOが展開する猫家具シリーズ「Nekodamono」を採用し、人と猫の双方の視点から空間をコーディネートした。畳の小上がりやネコ穴付きシェルフを組み合わせたヌック空間を設け、飼い主のそばで猫が安心して過ごせる居場所を確保。梁の形状を生かした特注ダイニングテーブルなど、省スペースと機能性を両立する工夫も取り入れている。

留守番中の安全性や運動不足への対策として、フェイクグリーンを採用するほか、猫が爪とぎとしても利用できるスツールを配置。さらに、猫トイレを収納内部に収める専用家具や、猫の毛色に合わせて選べるラグを導入することで、生活感や抜け毛を目立ちにくくしながら、快適な居住環境の実現を図った。展示されている家具の多くは、スマートフォンからオンラインストアの商品ページへアクセスし、その場で購入できる仕組みも導入している。
背景には、ペット飼育世帯と住宅供給のミスマッチがある。両社によると、ペット飼育世帯は全世帯の28.6%を占める一方、ペット可賃貸住宅は19.3%にとどまる。また、住まいとインテリアに関するSNS「RoomClip」の投稿分析では、「猫の居場所づくり」「トイレや臭い対策」「爪とぎや抜け毛などから家を守ること」が主な悩みとして挙げられており、今回のモデルルームではこうした課題の解決も意識したという。

3つの見どころ
本モデルルームでは「インテリアを諦めたくない」「抜け毛が気になる」「留守中が心配」といった飼い主のリアルな悩みに着目。賃貸マンションにお住まいの方に寄り添った高いデザイン性と使い勝手の良さを両立し、日常の風景に美しく溶け込むコーディネートが提案されている。

1. 人と猫がくつろげる「ジャパンディなヌック」や「特注ダイニング」
☆インテリアはおしゃれにしたいが、猫の居場所も確保したい
段差で緩やかに区切る畳の小上がり。置き畳が心地よい余白を演出
梁を活かした特注ダイニング。省スペースで収納力と広さを両立。
小上がり横のネコ穴付きシェルフ。上下運動を楽しめるアスレチック空間
•飼い主のそばで、ネコ穴に隠れたりくつろいだりできる安心の空間
※ジャパンディ(Japandi)とは、日本の伝統的な和の要素(Japanese) と 北欧の居心地の良い要素(Scandinavian) を融合させたインテリアスタイル
 
2. 留守番中の安全と遊び心を満たす「インテリアアイテム」
留守中の誤飲やいたずらが心配、室内での運動不足を解消したい
•万が一倒れても土がこぼれないフェイクグリーンを採用
猫の引っ掻きで育つ一点物の風合い。猫の手で完成するスツール
•スツールは、ひっかき欲を満たすおもちゃに。大小並べればステップにも。
 
3.抜け毛や生活感を美しく隠す「ラウンドラグ&猫トイレ収納」
☆トイレのニオイや砂の飛び散り、抜け毛
•全50色から選べるラグ。愛猫の毛色になじみ、抜け毛も目立ちにくい。
•トイレを格納して生活感を排除。砂の飛び散りも防ぐ
手仕事で仕上げたやわらかなラグ。思わず寝転びたくなる心地よさ。
•周囲の視線を遮るトイレ空間。落ち着いて過ごせるプライベート空間。

今回の取り組みは、ペット可住宅の枠を超えた「猫と人がどちらも我慢しない住まい」の提案。KANADEMONOでは、今後も猫との共生を前提とした家具や空間提案を拡充していく考えだ。

「ザ・パークハビオ SOHO 市谷左内町」概要
所在地:東京都新宿区市谷左内町21(地番)
交通:
東京メトロ南北線・有楽町線「市ケ谷」駅徒歩3分
JR中央・総武線「市ケ谷」駅徒歩4分
都営新宿線「市ヶ谷」駅徒歩4分
総戸数:72戸
間取り:1K、1DK、1LDK、2LDK
物件サイト:https://www.mecsumai.com/tphb-soho-ichigayasanaicho/




三菱地所レジデンス
https://www.mec-r.com/
KANADEMONO

2026年8月25日火曜日

【日本ネオン協会】国産ネオンサイン誕生100周年記念ZINE『NEONZINE』を発刊

  公益社団法人日本サイン協会は、国産ネオンサイン誕生100周年を記念したZINE『NEONZINE(ネオンジン)』を発刊し、7月15日の「ネオンサインの日」を前に販売を開始した。ネオンの歴史や技術、文化的価値を紹介する一冊で、ネオンに関わる19人へのインタビューと8本のコラムを収録している。

ネオンサインは20世紀初頭に欧米で実用化され、日本では1926年に国産初のネオンサインが東京・日比谷公園で公開された。2026年はその誕生から100年という節目の年に当たる。高度経済成長期には都市の夜景や繁華街の象徴として親しまれたが、近年はLEDサインの普及によって姿を消しつつある。一方で、ガラス管を一本一本曲げて制作する職人技や、ネオン特有の柔らかく温かみのある光が再評価され、アートやデザインの分野を中心に新たな関心を集めている。

『NEONZINE』では、そうしたネオン文化の奥行きを多角的に掘り下げる。登場するのは、ネオン作品を制作するアーティスト、長年業界を支えてきたベテラン技術者、ネオン職人として活動するベンダー、ネオンを店舗に掲げ続けるオーナー、そして次世代の担い手となる若手など19人。それぞれがネオンとの出会いや魅力、仕事への思いを語り、単なる照明技術ではなく、一つの文化としてのネオンの姿を浮かび上がらせている。
また、8本のコラムではネオンが発光する仕組みやガラス加工の工程、有名ネオンサインの解説などを掲載。専門知識のない読者でも理解しやすい構成となっており、ネオンを初めて知る人から業界関係者まで幅広く楽しめる内容に仕上げた。

街からネオンが減少する一方で、その価値を見直す動きは国内外で広がりつつある。『NEONZINE』は、100年にわたり都市の風景を彩ってきたネオンの過去を振り返るだけでなく、その未来を考えるための記録集ともいえそうだ。書籍はA4変型判(182×250ミリ)、116ページ。価格は2970円(税込)。




日本ネオン協会
https://www.neon-jp.org/

2026年8月24日月曜日

【H inc.】青木淳・品川雅俊による建築設計事務所ASのウェブサイトをリニューアル

建築家・青木淳氏と品川雅俊氏が率いる建築設計事務所ASが、ウェブサイトを全面リニューアルした。手掛けたのはデザインファームのH inc.で、単なる作品紹介にとどまらず、設計事務所が蓄積してきた膨大な記録や思考の断片にアクセスできる「建築アーカイブ」として再構築した点が特徴となっている。


△建築設計事務所ASの新しいウェブサイトのトップページ

建築事務所のウェブサイトといえば、通常は竣工写真や代表作を並べたポートフォリオとして機能することが多い。しかし今回公開されたASの新サイトは、その完成した建築の背後にある設計プロセスそのものへ視線を向ける。図面や模型、設計中の記録写真、ノート、スクラップブック、テキストなどを横断的に閲覧できる構成とし、建築家がどのように考え、迷い、検討を重ねながら空間を生み出してきたのかを追体験できるよう設計された。

△建築家の思考や検討の痕跡をたどるNotebookの一覧画面


△設計過程の写真資料を閲覧できるPhoto_Processの一覧画面

サイト内の情報は、「Projects」と「Materials」という二つの軸で整理されている。建築作品ごとに設計の全体像を読み解くことができる一方で、図面や写真、ノートといった資料群から横断的にアプローチすることも可能だ。例えば完成した建築から設計初期のスケッチへ遡ったり、図面から当時の検討記録へ移動したりと、建築家の思考の流れを立体的にたどることができる。

建築文化の観点から見ると、この試みは興味深い。近年、建築アーカイブの重要性が国内外で高まっているものの、多くは研究機関や美術館などに保管され、一般に広く公開される機会は限られてきた。一方、ASの新サイトは、設計資料そのものを建築文化の資産として公開し、建築家だけでなく学生や研究者、建築に関心のある一般読者にも開いている。
△設計図面を拡大して閲覧できるDrawingの詳細画面

H inc.は今回、情報設計からUX/UIデザイン、システム開発、ビジュアルデザインまで一貫して担当。データベース企画・編集ではStudio Xxingham K.K.と協働し、作品管理だけではなく、資料同士の関係性や文脈が読み取れるアーカイブ構造を構築した。膨大な資料を効率的に整理するだけでなく、閲覧者が情報の間を行き来しながら新たな発見に出会える体験を重視したという。

建築界では近年、完成した建築物だけでなく、その背後にあるプロセスやリサーチ、思想をいかに継承するかが重要なテーマとなっている。今回のASのウェブサイトは、インターネットを単なる広報媒体としてではなく、建築家の記憶や知識を蓄積し、未来へ開くアーカイブとして活用する試みといえそうだ。



H inc.
https://www.hi-inc.tokyo/
AS


2026年8月21日金曜日

【 ReBuilding Center JAPAN】諏訪市「公共施設解体に伴う古材利活用事業」業務を受注

 ReBuilding Center JAPAN(リビセン)は、長野県諏訪市が実施する「公共施設解体に伴う古材利活用事業」の一般競争入札を経て、諏訪市立城北小学校体育館および諏訪市武道館の床板のレスキュー(分別回収・引き取り)を担うと発表した。公共施設の解体で発生する建築部材を廃棄物として処分するのではなく再利用可能な資源として活用する試みで、解体工事費の削減と資源循環の推進を目指す諏訪市の実証的な取り組みの一環となる。

対象となるのは、諏訪市武道館と旧城北小学校体育館の床板で、リビセンは施設解体に先立ち建材を分別回収する「レスキュー」を実施する。回収した床板は一本ずつ丁寧に剥がし、釘を抜き、清掃やメンテナンスを施したうえで、店舗や住宅の内装材、家具などへ再生していく予定としている。
体育館や武道館は、卒業式や入学式、運動会、部活動、地域行事など、多くの人々の記憶が積み重ねられた場所でもある。なかでも城北小学校は、是枝裕和監督作品『怪物』(2023年公開)のロケ地として知られ、閉校後も地域住民や映画ファンに親しまれてきた。こうした施設で長年使われてきた床板の多くは、従来の解体工事では産業廃棄物として処分されるケースが一般的だったが、今回の事業ではそれらを地域資源として活用することを目指している。

諏訪市は、これまで費用をかけて処分していた建築部材を資源として入札売却する仕組みを導入した。廃棄物削減や環境負荷低減に加え、地域の記憶や歴史を別の形で受け継ぐ効果も期待されており、行政と民間事業者が連携して資源循環を実現する新たな公共施設解体モデルとして位置付けられている。

さらにリビセンでは、今回回収する床板を活用したオリジナルプロダクトの開発も検討しており、将来的には諏訪市のふるさと納税返礼品として展開する構想も視野に入れている。学校や地域施設で使われてきた建材を新たな価値を持つ製品へ再生することで、地域外へ諏訪の魅力を発信する取り組みにもつなげたい考えだ。


作業にはリビセンのスタッフに加え、活動を支援するボランティア組織「リビセンサポーターズ」も参加する。床板を剥がし、運び出し、釘を抜く一連の工程は人手を要する作業であり、地域住民だけでなく県外から訪れる支援者の協力によって成り立っているという。廃棄されるはずだった建材を再び社会へ循環させる過程そのものが、人と人とのつながりを生み出す場にもなっている。

諏訪市武道館の床板レスキューは6月22日と23日に実施済みで、城北小学校体育館については7月16日から18日、23日にかけて作業を予定している。作業内容は床板や壁材のレスキュー、床板の釘抜き、搬出作業などで、解体工事では通常目にすることの少ない建材分別回収の現場として、メディア向けの取材も呼びかけている。

少子化や施設の老朽化を背景に、全国では学校や公共施設の解体が増加している。今回の取り組みは、建築部材を廃棄物ではなく地域資源として捉え直し、行政、民間企業、市民が連携して循環利用を図る試みとして注目されそうだ。地域の記憶を宿した建材を次の世代へ受け継ぐモデルケースとして、今後の展開が注目される。




 ReBuilding Center JAPAN
https://rebuildingcenter.jp