2026年7月30日木曜日

【村上工作所】「鳴子こけし」制作者との共創から生まれたペンダントライト

 伝統工芸を現代の住空間の中でどう生かすのか――。その問いに対する一つの答えともいえる照明作品『灯るこけし』が誕生した。ソニーグループのデザイナーと、宮城県大崎市鳴子温泉で代々「鳴子こけし」を製作する桜井こけしとの共創から生まれたペンダントライトで、照明部分の製造を兵庫県多可町の照明メーカー、村上工作所が担当し、6月17日から伊勢丹新宿店で開催される展示販売会で公開された。
近年の建築・インテリアの分野では、単に伝統工芸を飾るのではなく、暮らしの中で使われるプロダクトとして再編集する動きが広がっている。『灯るこけし』もそうした潮流の中から生まれた作品だ。こけし特有の柔らかな曲線や木肌の表情を生かしながら、ペンダントライトという日常的な照明へと昇華させた。

デザインは、ソニーグループのクリエイティブセンターに所属する三島章正氏が担当。鳴子こけしの製作工程である「ろくろ挽き」から着想を得て、伝統的なこけしのフォルムを現代の照明器具として再構築した。木地製作は桜井こけしの櫻井尚道氏、描彩は櫻井昭寛氏が手掛けており、長年受け継がれてきた職人技と現代デザインが融合したプロダクトとなっている。
その中で重要な役割を果たしたのが村上工作所の照明技術だ。建築照明において光は単に空間を明るくするための設備ではなく、素材感や居心地、空間の印象そのものを左右する存在とされる。今回、同社は木地の美しさを損なうことなく内部から光を灯すための機構設計を担当。木という自然素材の温もりや滑らかな質感を残しながら、柔らかな光がにじみ出るよう細部まで工夫を重ねたという。

完成した『灯るこけし』は、工芸品でありながら照明器具として暮らしに溶け込む。昼間は木工芸としての存在感を放ち、夜になると穏やかな光によって空間に温かみを与える。まるでオブジェと照明の中間にあるような佇まいは、近年の住宅やホテル、ギャラリーなどで重視される「光による空間演出」の考え方とも親和性が高い。

また、このプロジェクトは伝統工芸を保存するだけではなく、新たな需要や価値創出へつなげる試みとしても注目され、地域に根差した職人技術、企業デザイナーによる現代的な解釈、そして照明メーカーの技術が交差することで、従来にはなかったプロダクトが生まれた。建築やインテリアの世界で求められるのが均質な製品ではなく、物語や地域性を備えた素材や家具へと移りつつある中、『灯るこけし』は伝統工芸を暮らしの道具として再定義する事例の一つの選択肢となりそうだ。





村上工作所
https://www.murakami-kousakusho.co.jp/



2026年7月29日水曜日

【堀田カーペット】ウールタイルカーペットコレクション「WOOLTILE for Home」の新商品「Tanbo(タンボ)」

堀田カーペットは、ウールタイルカーペットコレクション「WOOLTILE for Home」の新商品として、英国人デザイナーのフィリックス・コンラン氏と共同開発した「Tanbo(タンボ)」を発売した。7月1日から同社オンラインストアおよびフィリックス・コンラン氏の公式サイトで先行販売を開始しており、8月1日から全国の取扱店で一般販売を始める。

新商品は、2024年に奈良県東吉野村へ拠点を移したコンラン氏が、日本での暮らしのなかで親しんできた田んぼや四季折々の風景から着想を得て開発したウールタイルカーペット。かつて田んぼだった土地の隣に住み、いつか再び稲を植えたいと考えているという同氏の視点をもとに、水面に映る光の揺らぎや季節ごとに移り変わる田園の表情を床面に表現した。
デザインの核となるのは、「田」の字を思わせる四分割のパターンだ。1枚の50センチ角タイルを4区画に分け、2色の配色比率を変えた「1/4」「2/4」「3/4」「4/4」の4種類を展開。利用者が自由に組み合わせることで、整然とした幾何学的な表現から、田んぼの区画や光の変化を思わせるリズミカルなレイアウトまで、多彩な床の風景をつくり出せるようにした。

色は、春の水を張った田んぼをイメージした「ミズカガミ」、夏に育つ稲を表現した「ワカクサ」、収穫後の田畑を想起させる「カレホ」、冬の雪景色を映した「シモシロ」の4色を用意。日本の四季を映し出す色彩構成によって、住空間に自然な奥行きと変化をもたらす。


商品の誕生は、当初から商品化を目的としたものではなかった。工場見学や意見交換を重ねるなかで、コンラン氏がウールタイルによるデザイン案を提案したことが開発の出発点となった。堀田カーペットは、その発想が「既存の床の上に置くだけで空間を編集できる」という「WOOLTILE for Home」のコンセプトと合致すると判断し、製品化へと発展させた。

製造には、堀田カーペットが継承する「アキスタイル織機」を使用する。一般的なタイルカーペットが大判の反物から切り出されるのに対し、この織機は50センチ角のタイルを1枚ずつ製造できるため、高精度な柄表現が可能となる。「Tanbo」の特徴である均等な四分割デザインも、その技術によって実現した。

また、色の異なる糸を撚り合わせたツイード糸と、自然な毛流れを生み出すフリーズ糸を組み合わせることで、田園風景のような複雑な色の重なりや陰影を表現。単なる床材ではなく、季節や暮らしに応じて組み替えながら楽しむ“床の風景”として提案する。




堀田カーペット 
https://hdc.co.jp/


2026年7月28日火曜日

第13回 POLUS‐ポラス‐学生・建築デザインコンペティション。二次審査会 受賞者決定!最優秀賞は『こもり知らずの扉』

▲(写真)公開審査会 審査委員と各受賞者

今年のテーマは「脱家族の家」。応募数は過去最多の822点


 ポラスグループ ポラス株式会社(本社:埼玉県越谷市、代表取締役:中内 晃次郎)は、2026年7月8日に『第 13 回 POLUS-ポラス‐学生・建築デザインコンペティション』の二次審査会を開催し、審査の結果、最優秀賞1点、優秀賞2点、入選2点を決定しました。当初は優秀賞は1点、入選3点の予定でしたが、候補の2作品が同等の評価となり、特例として優秀賞2作品、入選2作品としました。

▲(写真)公開審査会風景

本コンペティションは、今年度は「脱家族の家」をテーマに2025年11月~2026年5月にかけて作品の募集を行い、過去最多の822点の応募作品から一次審査を通過した5点について、学生のプレゼンテーションや審査員との自由討議を経て、各受賞者を決定しました。

(以下、各賞の結果)
 
最優秀賞
作品名/こもり知らずの扉 
平出 さつき(京都美術工芸大学)

▲(写真)こもり知らずの扉 模型写真

優秀賞
作品名/「個」のつどい
石澤 航(九州大学大学院)

▲(写真)「個」のつどい 模型写真

優秀賞
作品名/壁で編む縁
八木 清花・岡 優志・吉井 洸貴(大阪工業大学大学院)

▲(写真)壁で編む縁 模型写真

入選
作品名/倉庫の家
光安 天舞(東京理科大学大学院)・村上 祥太(東京藝術大学大学院)

▲(写真)倉庫の家 模型写真

入選
作品名/「家族を編む」境界を滲ませる子供のスケール
吉川 大空・脇坂 献徒(京都工芸繊維大学大学院)

▲(写真)「家族を編む」境界を滲ませる子供のスケール
模型写真


■最優秀賞受賞者コメント

作品名/こもり知らずの扉
平出 さつき(京都美術工芸大学)

最優秀賞に選定いただきありがとうございます。今回の機会を励みとして、今後は誰かのサポートができるようなポジションに立って、身近な方々の手助けとなれるような設計ができるように取り組んでいきたいと思います。

■審査委員の講評
 
審査委員長 西沢 立衛氏 (横浜国立大学大学院建築都市スクールY-GSA教授)

 今年は大変多くの応募案が集まり、様々な案が競い合って、審査は簡単ではなかった。その激戦の中で最優秀賞に選ばれたのは「こもり知らずの扉」で、方丈のユニットが連続し、繋がったり分かれたりする、群的建築の提案であった。空間の変化と家族の大きさの変化が有機的・動的で、その形のなさは課題である「脱家族の家」に鋭く応えるものであった。的確なスケール感覚とディテールがあり、ひとつも諦めることなく全体をまとめあげた作者の努力の大きさを感じた。                                                                                                                                                                                                                                   
 優秀賞の『壁で編む縁』は、壁が領域を作り、また領域を乗り越え、立体的な新領域を作り出すというもので、私としては最優秀賞に次いで推した。屋根も考えてくれたら、さらに飛躍したのではないだろうか。
 優秀賞『「個」のつどい』は、異形平面の木造住宅がランダムに集合する案で、バラバラな個の表現に鋭さを感じた。他方でその集合には、新しい風景と感じられるものがなかった。
 入選『倉庫の家』は、大倉庫にいろんな人が住むという案で、そのおおらかさとアイデアの大胆さに魅力があったが、大倉庫空間の中に普通の集合住宅を建ててしまったのは残念だった。
入選『「家族を編む」境界を滲ませる子供のスケール』は、子供を家の中心に持ってくるところに提案性があったが、建築は普通であった。



■第13回 POLUS-ポラス-学生建築デザインコンペティション公式ホームページ

■ポラスグループ 公式ホームページ


2026年7月27日月曜日

【アイカ工業】高機能塗り床材の新ブランド「ジョリエースネオ」発売

アイカ工業は、高機能塗り床材の新ブランド「ジョリエースネオ」を立ち上げ、7月13日に発売した。半導体工場や精密機械工場、データセンター、クリーンルームといった高度な製造環境に向けた製品群で、低臭、低アウトガス、高耐久といった性能を強化。製造現場で求められる環境管理レベルの高度化に対応する新たな塗り床材ブランドとして展開する。
近年、半導体や電子部品の製造施設、データセンターなどでは、温度や湿度、清浄度の管理に加え、建材から発生する微量な化学物質への対策も重要なテーマとなっている。製造装置の高精度化が進むなか、床材に対しても従来以上に厳しい性能が求められるようになった。また、工場を稼働させながら進める改修工事の増加を背景に、施工時の臭気低減や環境負荷への配慮も重視されている。こうした市場ニーズを受けて誕生したのが「ジョリエースネオ」だ。アイカ工業が長年展開してきた塗り床材ブランド「ジョリエース」のうち、特に高機能な製品群を再編し、新たなブランドとして体系化した。新ブランドでは、従来製品を移行するだけでなく、「ジョリエースネオ E水系コーティング工法」と「ジョリエースネオ E水系ドーデンコーティング工法」の2工法を新たに開発。用途や要求性能に応じて選択できる全10工法をラインアップしている。

製品の特徴
クリーンな製造環境づくりに配慮した性能にある。水系タイプの工法では揮発性有機化合物(VOC)を使用せず、施工時の臭気を大幅に抑制。新築はもちろん、稼働中施設の改修工事や、臭気への配慮が求められる現場にも対応できる。また、厚生労働省が指定するVOC13物質や、文部科学省の学校環境衛生基準で定める6物質を含有しておらず、公共施設などでも安心して採用しやすい工法となっている。
中でも半導体工場などで注目されるのが、低アウトガス性能だ。アウトガスは建材などから放出されるごく微量のガス成分で、精密機器の誤作動や製品不良の原因になることがある。その発生を低く抑えることで、半導体製造施設やスーパークリーンルーム、データセンターなど、高度な環境管理が求められる施設へ対応可能な工法もラインナップしている。
※ジョリエースネオでは、用途や要求性能に応じた10工法をラインナップしており、工法ごとに備える機能や性能が異なります。

施工性の向上
ラインアップには、下地コンクリート打設後の早期施工に対応する工法や、省工程化を実現した工法を用意。工期短縮による早期稼働を可能にし、特に改修工事では休業期間の短縮や総工事費の抑制につながる。建設コストだけでなく、施設運営を含めたトータルコスト低減にも貢献する考えだ。

耐久性能の進化
新開発の「E水系コーティング工法」は、低アウトガス性能を維持しながら耐摩耗性や硬度を向上させ、紫外線による黄変も抑制。ジョリエースブランドから移行した「Eドーデン流しのべNCP工法 低アウトガス仕様」では、帯電防止性能を強化するとともに、従来必要だった導電中塗り層を不要とすることで施工工程を簡略化している。

ラインアップは全10工法。設計価格は3000円/平方メートルから。アイカ工業では半導体工場、精密機械工場、データセンターを中心に提案を進め、年間売上1億円を目指す。

2026年7月24日金曜日

【チームラボ】インド・ムンバイで開幕したグループ展「Second Nature」に参加

チームラボは、インド・ムンバイのニタ・ムケシュ・アンバニ文化センター(NMACC)で7月3日に開幕したグループ展「Second Nature」に参加し、展示作品を公開した。会期は2027年1月10日まで。同展は、文化センター内のアートハウス全4フロアを舞台に、人間、テクノロジー、自然の関係性をテーマとして開催されるもので、ランダム・インターナショナル、A.A.ムラカミ、サイモン・ヘイデンス、エス・デヴリンら国際的なアーティストとともに作品を展開する。

チームラボ《Nirvana: Fleeting Flowers, Radiance Within》(C) チームラボ
展覧会を企画したリライアンス・グループ取締役のイーシャ・アンバニ氏は、テクノロジーや自然、人間の創造性が相互に影響し合う時代の到来を背景に、好奇心や感情、思索を喚起する体験を目指したとしている。人工知能や高度なデジタル技術が社会に浸透するなか、アートを通じて未来との対話を促す場として位置付ける。

チームラボは、「生と死」「他者との関係性」「自然との共生」をテーマにした3作品を出展する。なかでも大型インスタレーション《Nirvana: Fleeting Flowers, Radiance Within》は、江戸時代の絵師・伊藤若冲による《鳥獣花木図屏風》や《樹花鳥獣図屏風》を着想源とした作品。若冲が用いた「升目画」の表現構造を現代的に再解釈し、花々によって描かれた世界を四方の壁面いっぱいに展開する。鑑賞者は絵画を外側から眺めるのではなく、その内部へ入り込み、身体を通して作品世界を体験する構成となっている。

作品内で咲く花々は、生まれ、成長し、やがて散っていく。鑑賞者が花に触れると花は散り、その部分の世界も変化する。さらに、自分だけでなく他者の行為によっても作品空間は絶えず変容するため、目の前に現れる風景は常に更新され続ける。光の反射によって生まれる煌めきも作品を特徴づける要素で、鑑賞者の動きに応じて光が揺らぎ、絵画空間と実空間が連続するような体験を生み出す。
チームラボ《呼応する小宇宙 - 固形化された光》(C) チームラボ
《呼応する小宇宙-固形化された光》は、チームラボが長年展開してきた「呼応する群体彫刻」シリーズの一作。空間に配置された卵形の彫刻「Ovoid」は、人に押されると光を強く放ちながら自ら立ち上がり、同時に音色を響かせる。その反応は周囲の彫刻へと伝播し、空間全体へ連鎖する。ここでは鑑賞者だけでなく、周囲の環境や他作品との関係性も作品を構成する要素となっており、個々の彫刻は独立した存在でありながら一つの生態系のようにつながり合う。
もう一つの出展作《花と人、コントロールできないけれども共に生きる》は、人間と自然の共生をテーマとした代表作の一つだ。花々は絶えず生まれ、咲き、散りながら空間を移ろい、人々が立ち止まれば周囲に花が咲き広がり、触れたり歩き回ったりすれば花は散っていく。作品はあらかじめ収録された映像ではなく、人々の行動を受けながらリアルタイムで生成され続けるため、同じ情景が再び現れることはない。

チームラボは本作について、自然を完全に制御するのではなく、そのルールに寄り添いながら共に生きる人間の営みを探る試みと位置付けている。他者の存在は作品鑑賞を妨げるものではなく、新たな変化をもたらす存在として組み込まれ、鑑賞者同士の関係性も作品の一部となる。

会場となるニタ・ムケシュ・アンバニ文化センターは、2023年に開館したインド有数の複合芸術施設で、舞台芸術や視覚芸術、伝統工芸など幅広い文化発信を担っている。今回の「Second Nature」は、テクノロジーとアートの最前線で活動する国際的なアーティストが集う大型企画展として開催されており、チームラボは3作品を通じて、人間、自然、他者の関係が絶えず影響を与え合う新たな鑑賞体験を提示している。




チームラボ

2026年7月23日木曜日

【バッファロー】建築家・青木淳に焦点を当てた新テレビCMの放映を開始

建築家・青木淳に焦点を当てたバッファローの新テレビCMが、7月21日から放映される。アーティストやクリエイターの創作活動をITインフラで支える同社のプロジェクト第5弾として制作されたもので、撮影の舞台には青木の代表作である青森県立美術館が選ばれた。
青木は1982年に東京大学大学院を修了後、磯崎新アトリエを経て1991年に青木淳建築計画事務所を設立。ルイ・ヴィトン表参道、青森県立美術館、京都市京セラ美術館などを手掛け、日本を代表する建築家として国内外で高い評価を受けてきた。現在は京都市京セラ美術館館長も務めている。

今回のCMでは、建築作品そのものではなく、その背後にある創造のプロセスに迫る。舞台となった青森県立美術館は、隣接する三内丸山遺跡の発掘現場に見られるトレンチ(壕)から着想を得た建築で、地面を掘り込んだような空間構成と白い展示室群によって独自の景観を生み出している。開館から20年を迎える今もなお、青木を代表する作品として語られる存在だ。
設計の現場では近年、手描きの図面やスケッチに加え、CGや動画、VRデータなど扱う情報量が飛躍的に増加している。CMでは、そうした建築家の仕事の変化にも触れている。青木は「昔は図面や手書きのスケッチだけで十分だったが、今は動画やCG、VR素材などが加わり、大容量のデータを扱う環境が不可欠になった」と語る。

また建築設計はデスクに向かう時間だけで完結する仕事ではない。模型制作や打ち合わせ、図面確認など、事務所内を移動しながら作業することも多く、安定したネットワーク環境が求められる。CMでは、そうした日常の設計風景を通して、建築家の創造を支える見えない基盤の存在を描き出す。

バッファローは今回の映像について、「主役はアーティスト」という考え方を掲げている。建築家の名前が作品として世に出る一方で、その創造活動を支える技術や環境は表に現れにくい。青木の仕事を追った今回のCMは、建築が完成する瞬間ではなく、その手前にある膨大な思考と試行錯誤、そして創造を支える環境に光を当てた内容となっている。

CM本編
バッファロー×AOKI Jun



2026年7月22日水曜日

共愛学園前橋国際大学4、5、6号館 合同内覧会 【SALHAUS、CAt、乾久美子建築設計事務所】

▲共愛学園前橋国際大学6号館「KYOAI CO-INNOVATION HUB」

SALHAUSが設計された共愛学園前橋国際大学6号館が竣工を迎えられた。共愛学園前橋国際大学は2010年の4号館設計プロポーザル以降、大学の教育ヴィジョンと共に、キャンパスのマスタープランを醸成していくなかで、5号館・6号館とキャンパスの整備を行ってきた。

今回は、大学のご厚意により、乾久美子建築設計事務所による4号館「KYOAI COMMONS」、CAtによる5号館「KYOAI GLOCAL GATEWAY」、SALHAUSによる6号館「KYOAI CO-INNOVATION HUB」を合わせた【3棟合同内覧会】が開催された。


見学会の開催に先立ち、大森昭生学長から大学のご紹介、各棟の設計者によるコンセプトや竣工までのプロセスなど説明が行われた。

大森学長は「校舎をつくるにあたって、大学のあるべき姿を学生や教職員と共に議論してきた。設計する際もビジョンを共有することで、本学の教育を象徴するような施設になった」と述べた。

▲大学の紹介を行う大森昭生学長


▲4号館について説明を行う乾久美子氏

▲5号館について説明を行う赤松佳珠子氏

▲6号館について説明を行う日野雅司氏

共愛学園前橋国際大学6号館

KYOAI CO-INNOVATION HUB 設計:SALHAUS

▲6号館全景 北西より見る

6号館「KYOAI CO-INNOVATION HUB」は情報系の学部「デジタル共創学部」の新設に伴う新校舎である。情報技術と地域社会とのかかわりを研究する領域であり、グループ活動などのアクティブラーニングを促す空間や、キッチンスタジオ、ホールなどの諸室が設置され、それらをまとめるように2層吹き抜けの「コラボレーションプラザ」という広場のような空間が考えられた。

▲2階から「コラボレーションプラザ」を見る

施設の中央に設けられた「コラボレーションプラザ」は階高が高く、見通しの良い明るい場所であり、周囲から気軽にアクセスすることが出来る。のこぎり屋根のハイサイドライトから自然光が取り込まれ、木の格子梁に反射した拡散光が室内に入り込むことで明るい環境が生み出されている。

▲2階から「コラボレーションプラザ」を見る

個別学習に使えるカウンターや棚が通路を縁取ることで、各エリアは緩やかにゾーニングされる。動線上に学習スペースやグループワークのための場所が設けられ、学生がお互いの活動を感じながら学習することが出来る。写真
奥の階段は湾曲することで、大きな入口を通った人の流れをスムーズに2階へと導く。

▲木の格子梁およびハイサイドライトの見上げ

上部の19m×19mの屋根は、木と鉄骨梁で架け渡される。木の格子梁は、スギ製材を9段積み重ねた2mほどの木梁ユニットを風車状に組み合わせることで、ダブルグリットの格子梁が構成される。格子梁内のテンションロッドを鉄骨梁、木材を変型留めとして読むことで、準耐火建築物を実現している。

▲1階 Co-Reserch labを見る

▲1階 レクチャーなどに利用できる段床のベンチ

▲1階 レクチャールーム 

▲2階 吹き抜けを囲うように設けられた自習スペース

▲2階 吹き抜けに張り出したプロジェクトルーム

共愛学園前橋国際大学4号館

KYOAI COMMONS 設計:乾久美子建築設計事務所

▲キャンパスプラザから見た北側外観

4号館「KYOAI COMMONS」はラウンジやカフェを中心とした学生が集う場所、メディアセンターや教室を中心とした学びの場という2つのプログラムを内包する建築である。プロポーザルの要項にあった、場所の「重ね使い」をキーワードに、短冊状の各棟と、トップライトによる明るい廊下が交互に並ぶことで全体が計画されている。

▲1階 ICエリアからラウンジを見る

各スペースは鉄筋コンクリート壁と鉄板壁の異なる厚さの壁柱(構造壁)で区切られる。廊下を挟んで向かい合う場所は最低限の間仕切りによって空間がゆるやかに繋がり、部屋同士が関係しあうように設計されている。

▲カフェを見る。天井の高さは6.1m

各廊下の天井にはすべてトップライトが設けられ、廊下を介して各棟に光が取り込まれる。
トップライトを支えるフラットバーも棟同氏を構造的に繋ぐ梁となっている。

並ぶ吹き抜け部分と2階建ての棟はブリッジで繋がる。

壁柱の配置や吹き抜けによる空間の抜けによって、向こう側が見えたり見えなかったするような心地よい「見え隠れ」のある空間を作り出し、新しい学びの場所を実現している。

▲2階廊下から食堂をみる


▲1階グループワークエリアから食堂を見る

▲2階教室 廊下からの採光によって明るい空間となっている

共愛学園前橋国際大学5号館

KYOAI GLOCAL GATEWAY 設計:赤松佳珠子+大村真也/CAt

▲南西側外観 フレキシブルラーニングエリア(FLA)を見通す

5号館「KYOAI GLOCAL GATEWAY」は4号館(KYOAI COMMONS)の竣工後、「学習の場」「集い・交流の場」「事務機能」を一体化した新たな施設として設計された。キャンパスとの関係から、施設の四隅をそれぞれ特徴付け、各エリアを「フレキシブルラーニングエリア」(以下、FLA)と名付けられた廊下空間が繋ぐことで建物が構成されている。


▲南西側 キャンパスゲート側の吹き抜け空間

キャンパスの入り口となる南西側のキャンパスゲートには天井高約8mの吹き抜け空間が設けられ、全面開放可能な折戸によって通りと繋がる。デッキやベンチによって学生や地域の方が気軽に訪れられる場所となっている。


▲事務スペースに設けられたフレキシブルワーキングエリア

南東側の事務スペースには職員の交流を生むことを狙いとした、フレキシブルワーキングエリアが設けられる。2層吹き抜けの空間であり、外部に設えられたグリーンテラスと一体的に利用可能な、開放的な場所となっている。

▲2階FLAが各所室を繋げる

2階には学生が集まるプロジェクトルームや職員の諸室が設けられ、FLAがそれらを繋げる。外周やハイサイドライトからの光が、天井ルーバーによって室内に引き込まれることで、各諸室まで光が届く。FLA沿いには机や棚などのインテリアが配置されることで、諸室からのアクティビティが表出する。

▲KYOAIコミュニティホール 

▲それぞれのエリアにはミドルスケールの什器が並ぶ


見学した各棟ともに共通して、学びの共有空間(ラーニング・コモンズ)を積極的に空間に用いることで、「アクティブラーニング」や「GLOCAL」といった大学の教育ビジョンを明快に反映した施設となっていた。また、キャンパスの全体計画を意識した設計を行うことで施設以外の様々な場所の使われ方も同時にデザインされていることが印象的であった。


■共愛学園前橋国際大学
〒379-2192 群馬県前橋市小屋原町1154-4
Google map URL
TEL.027-266-7575
FAX.027-266-7576

■共愛学園前橋国際大学6号館「KYOAI CO-INNOVATION HUB」
設計:SALHAUS
構造:佐藤淳構造設計事務所
設備:設備計画
サイン:氏デザイン
施工:塚本建設

■共愛学園前橋国際大学5号館「KYOAI GLOCAL GATEWAY」
設計:CAt
構造:小西泰孝建築構造設計
設備:設備計画
サイン:TAKIYAMA
施工:塚本建設

■共愛学園前橋国際大学4号館「KYOAI COMMONS」
設計:乾久美子建築設計事務所
構造:佐藤淳構造設計事務所
設備:環境エンジニアリング
サイン:list
施工:鹿島・小林特定共同企業体