板橋区蓮沼町にて、小堀哲夫建築設計事務所が手掛けた「トプコン創業建築2号館リノベーションプロジェクト」の見学会が5/20に行われた。
本計画は板橋区に本社を構える株式会社トプコン社屋の2号館のリノベーションプロジェクトであり、設計監修を小堀哲夫建築設計事務所が担当した。2号館は昭和初期の建築家であり、日本のコンクリート建築の開祖である阿部美樹志によって戦前に設計された建物である。築90年を迎え、老朽化が進み、当時は建て替えも検討されたが、2号館の歴史的価値と企業と地域の関係性を評価し、既存建物を活かした更新が選択された。
今回の計画について、小堀氏は“2号館が戦前に建てられ、数々の増築を経ているが、その記録が残されていないことから、解体していく中で初めて分かることがあった。判断すること、また見直すことをその都度積み重ね、結果として全体を成立させている”と述べている。
既存建物は空間全体が逆梁工法と大開口によって、構造材のみで簡潔に構成されることで、大空間と採光・通風が同時に成立する構造と環境が一体となった空間であり、歴史的評価に値する建築であるが、度重なる増築や建物の老朽化によって、建物のポテンシャルが失われていることが課題として挙げられた。
リノベーションを行うにあたり、既存建物の「何を残し、どのようにつなぐか」、「設計思想をどのように引き継ぐか」、「新たな知や活動が生まれる場としてどのように更新するか」がプロジェクトの主題となった。それらに対して、本プロジェクトでは「既存建物の中庭の再編」、「適材適所による耐震補強」「エンジニアリング」によって応えられている。
建築全体の計画として、もともと中庭を塞いでいた増築建物を解体、外部化し、構内の主要動線と繋ぐことで、社屋全体とつながる中庭として再編された。中庭に面して工場、カフェテリア、大講堂等の各機能が配置され、それぞれの場所で起こる活動が日常的に共有される空間となっている。大講堂およびカフェテリアは可動間仕切りによってイベント時などは一体的に利用が可能となり、社員が集える場として機能する。また、中庭に対して新たにレンズをモチーフとした庇を新設し、大講堂および、カフェテリアへの光環境を調節しながら、社員が佇める半屋外空間を生み出した。
耐震改修においては、柱、梁、ブレースなどを適材適所に組み合わせた耐震補強を行うことで、オリジナルの建築外観への影響を抑えながら必要な耐震性能を確保し、既存建築の立面の美しさや空間性を再生しながら、耐震性能を向上させた。中庭に面する立面は過去の増築時に壁によって塞がれていたが、再び開口を開け、既存柱の2.6mピッチにあわせるように鉄骨フレームによって補強し、ブレース材は端部の2か所に施される。また、建築内部においても隠れる部分にはブレース補強を行い、通路が必要な部分は格子フレームによって補強するなど、機能や空間性に合わせた補強が行われている。開口部はペアガラスにするなど環境性能に配慮した設えとなっている。
また、90年の間に繰り返し増築、拡張されることで取り付けられた配管などの外部インフラ類を企業の自社技術によって点群データとして取得し、可視情報化を行った。その後、配管などを撤去し、オリジナルの構造が現れるように再整理が行われた。データはデジタルアーカイブとして保存することで、取り壊された1号館とともに建築資産を将来へと継承する。
今回のリノベーションについてトプコンの渡邊氏は“建物は、完成した瞬間がゴールではありません。使われながら、少しずつ育ち、変わっていくものだと思っています”と述べる。実際に、建物の完成後、中庭で社員が楽器の練習を行っていたりや建物の周りで街の親子連れによる自転車教室が行われている様子が見られるなど、人の集まる雰囲気が徐々に醸成されていると言う。90年にわたり企業のものづくりを支えてきた建物は、リノベーションを経て、社員や地域連携の拠点として次の90年へと進んでいく。







































