2026年7月14日火曜日

【文心建設】建築家・青木淳との協業による集合住宅プロジェクト「文心月月」を公開

台湾の文心建設は、建築家・青木淳との協業による集合住宅プロジェクト「文心月月(ウィンシン・ユエユエ)」を台北市松山区で公開する。2026年7月の発表を予定する同プロジェクトは、高密度化が進むアジア都市において、住宅と都市の関係を改めて問い直す試みとして計画された。

計画地となった松山区寶清街周辺には、基隆河や高速道路、高架道路網といった大規模インフラが広がる一方、市場や路地、小さな店舗が今なお生活の風景を形づくっている。巨大な都市スケールと人間的な日常のスケールが交差するこの環境を前に、本計画では都市から切り離された住まいではなく、都市とのつながりを保ちながらも静けさを確保できる居住空間が模索された。
その思想は建築のデザインにも表れている。
公開されたスケッチでは、サンゴから着想を得た有機的な窓の形状が提案されており、均質なファサードでは生み出せない柔らかな表情を建物にもたらしている。街並みに対して過度な存在感を主張するのではなく、周辺環境へ自然に溶け込みながら、光や風、視線を取り込む構成が目指された。都市のランドマークとして際立つ建築ではなく、日常風景の一部として街と呼応する建築を志向している点が特徴といえる。
こうした考え方の背景には、日本建築が育んできた「内と外のあいだ」の空間意識がある。障子や縁側、軒といった伝統的な要素は、空間を分断するのではなく、人と自然、建築と街を緩やかにつなぐ役割を果たしてきた。本計画もまた、その思想を現代の都市型集合住宅へ応用する試みといえる。外部との関係を保ちながら、住戸内部には安心感や落ち着きを確保する。開放と保護、都市性と居住性という相反する要素のバランスがデザインの核となっている。
文心建設によれば、この協業の目的は著名建築家によるブランド化ではない。
住宅市場が成熟し、人々の関心が広さや設備といった性能から、空間体験や暮らしの質へ移るなかで、これからの住宅がどのような価値を提供できるのかを探ることにある。「文心月月」は、住まいを単なる不動産商品としてではなく、都市のなかで自分自身の居場所や時間を取り戻すための環境として提案するプロジェクトだ。急速な変化を続けるアジア都市において、住宅の新たな可能性を示す取り組みとして注目されそうだ。




2026年7月13日月曜日

【tool box】個室と開放感を両立する新商品「木製ガラス窓」発売

 住宅価格の上昇と専有面積の縮小が進む中、住み替えではなく今の住まいを工夫しながら住み続けるという選択が広がっている。そうした住環境の変化を背景に、toolboxは個室と開放感を両立する新商品「木製ガラス窓」を発売した。新製品は、子ども部屋やワークスペース、寝室など、住まいの中に新たな個室を設けたい一方で、光や風、人の気配まで遮断してしまうことには抵抗があるというニーズに応えるために開発された。高さ約1メートルの腰高サイズを採用した木製の室内窓で、大きなガラス面を通じて光や視線が抜けることで、小さな個室にも広がりを生み出す。

近年は在宅ワークやオンライン会議の定着に加え、子どもの成長に伴う学習環境の確保など、住まいの中に独立した空間を求める場面が増えている。一方で、限られた面積の中に壁を立てて部屋を増やせば、その分だけ採光や通風が失われ、住宅全体が閉鎖的に感じられることも少なくない。「木製ガラス窓」は、そうした課題に対し、仕切ることとつなげることの両立を目指した商品といえる。幅1500ミリの大きな開口部に加え、窓枠や中桟を25ミリまで細くすることで、できる限りガラス面を広く確保した。高さは900ミリと1100ミリの2種類を用意し、天井高や空間構成に応じて選択できる。

開閉方式は片引き、片開き、引き違いの3タイプを展開する。必要に応じて窓を開けることで、エアコンの風や自然の風を個室まで届けることができ、換気や空調効率にも配慮した設計となっている。ガラスはフラットガラス、型板ガラス、チェッカーガラスから選択可能で、空間の用途や好みに応じた使い分けにも対応する。
また、素材には無垢の白木を採用した。無塗装仕上げのため、フローリングや家具、建具の色に合わせて自由に塗装でき、住まい全体のインテリアに自然になじませることができる。
今回の新製品には、10年にわたり販売を続けてきた「木製室内窓」の経験が生かされている。2016年の発売当時、室内窓は建具職人による特注製作が一般的で、コストや納期の面から導入のハードルが高かった。そこでtoolboxは、住宅設計で使いやすい規格品として商品化し、リノベーションや住宅設計における選択肢として普及を進めてきた。

その後、多くの採用事例が集まる中で、「より大きな開口部が欲しい」という声が設計者や施主から寄せられるようになったという。空間のアクセントとして用いられる小窓ではなく、住まいの中に新たな個室をつくるための道具として室内窓を活用したいという需要が高まったことが、新商品の開発につながった。家を広げるのではなく、今ある家を使いこなす。そんな住まい方が現実味を増す時代に、「木製ガラス窓」は部屋を仕切るための建具であると同時に、住まいのつながりを保ちながら新しい居場所を生み出すための提案として注目を集めそうだ。






tool box

2026年7月10日金曜日

「ルーシー・リー展ー東西をつなぐ優美のうつわ」ー展が東京都庭園美術館で開催

 

20世紀を代表するイギリスの陶芸家、ルーシー・リーの回顧展「ルーシー・リー展ー東西をつなぐ優美のうつわ」展が東京都庭園美術館で7月4日から東京都庭園美術館で開幕した。担当学芸員は同館の勝田琴絵。

▲展覧会 会場風景

国内では約10年ぶりの回顧展となる本展は、国内貯蔵の作品66点が一堂に会するほか、ヨーゼフ・ホフマンや、バーナード・リーチ、など、ルーシー・リーと交流のあった作家たちの作品も合わせて展示される。


展覧会の会場となるアール・デコ建築

会場となる、東京都庭園美術館の本館は、1933年に朝香宮家の自邸として竣工したアール・デコ建築。うつわの魅力を引き出す邸宅空間で、リーの作品と旧朝香宮邸の建築の合わせた展示も見どころの一つである。

▲展覧会の会場となる東京都庭園美術館

▲展覧会 会場風景

展示構成

展覧会は本館と新館にまたがる全4章で構成され、リーの作品の特徴である、釉薬や掻き落としの技法などが展示と共に紹介され、彼女が生きた時代背景や交流の深い人と合わせて全容を紐解く内容となっている。

▲ルーシー・リー《白釉ピンク線文鉢》


▲ルーシーリー《熔岩釉鉢》(左)、《練りこみ花器》(右)


旧館会場の2階にはかつて居間や浴室、寝室だった展示室に、リーの花器や鉢、壺などが並び、旧朝香宮家の面影を感じながら、展示を巡ることが出来る。

▲展覧会 会場風景

展示は2013年に新設された新館へと続き、リーの作品に影響を与えた東洋陶磁や、1970年以降のリーの確立したスタイルが紹介される。また、本展では1989年に安藤忠雄が会場設計を手掛け、作品を水面に配置した展示手法にインスピレーションを得て、作品のシルエットが反射する素材を展示台の表面に採用している。

▲展覧会 会場風景

▲展示台に作品のシルエットが反射する

本展ではルーシー・リーの作品の特徴である、釉薬や技法、そして同世代の作家たちとの交流の軌跡を、アール・デコ建築の空間で追従できる貴重な機会となっている。


■展覧会情報
展覧会名:「ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―」

会期:2026年7月4日(土)〜9月13日(日)
会場:東京都庭園美術館(本館+新館)(東京都港区白金台5-21-9)
開館時間:10:00〜18:00(入館は閉館30分前まで)
 ※8月7日(金)、14日(金)、21日(金)、28日(金)は「サマーナイトミュージアム2026」として21:00まで開館(入館は閉館30分前まで)
休館日:毎週月曜(ただし7月20日(月・祝)は開館、7月21日(火)は休館)
観覧料:一般 ¥1,400、大学生 ¥1,120、高校生・65歳以上 ¥700/中学生以下無料 ※身体障害者手帳などを持参の場合(+付き添い2名まで)は無料




                                                                                                                                                   

【オカムラ】Foster + Partners Industrial Designと共同開発したタスクシーティング「MUKU」を発表

オカムラは、米シカゴで開催されたオフィス家具見本市「NeoCon2026」において、英国のデザイン集団であるFoster + Partners Industrial Designと共同開発したタスクシーティング「MUKU(ムク)」を発表した。発売は同年11月を予定している。

「MUKU」は、必要最小限の構成要素で成り立ちつつ、快適性と機能性を両立させたタスクチェアで、軽やかな外観により多様な空間に自然に溶け込む設計とした点が特徴となる。名称は純粋さや自然な美しさを意味する「無垢」に由来し、装飾を抑えた簡潔なデザイン思想を体現する。執務エリアや会議スペースに加え、在宅勤務といった幅広い利用環境に対応し、単体での使用はもちろん、複数脚を配置した場合でも空間の統一感を損なわない意匠とした。
機能面では、人間工学に基づく設計を土台に、オカムラ独自のアンクルチルトリクライニング機構や異なる硬さを組み合わせたクッションを採用し、長時間使用における身体負担の軽減を図った。加えて、座面の高さや奥行きの調整機能、前後左右に可動する4Dアジャストアーム、腰部を支えるランバーサポートを備え、利用者それぞれに適した姿勢を確保できるようにしている。こうした多様な調整機構をコンパクトに収めることで、外観の簡潔さと直感的な操作性を両立させている点も特徴の一つとなる。カラーは4色展開とし、空間に応じた選択の幅を持たせた。

開発にあたっては、両社が設計と試作を繰り返しながら検証を重ねるプロセスを採用した。精緻なエンジニアリングとデザインの融合を重視する共通の理念のもと、試行錯誤を積み重ねることで、機能と意匠のバランスを高い水準で実現したとしている。こうした開発手法により、国際市場において求められる品質やデザイン基準への対応を図った製品と位置づけられる。

Foster + Partners Industrial Designは、建築家ノーマン・フォスター氏が率いるFoster + Partnersの一部門として、家具から産業機器まで幅広い領域のプロダクトデザインを手がけてきた。芸術性と工芸的視点、さらに科学的アプローチを組み合わせた設計を特徴とし、メーカーや職人、スタートアップとの協働を通じて開発を進める体制を取る。試作と検証を重ねる反復的な手法や、サステナビリティを踏まえた設計思想も同組織の強みとされる。
近年、オフィス環境を取り巻く状況は、働き方の多様化やハイブリッドワークの定着によって大きく変化しており、機能性に加えて空間との調和を重視した家具への需要が高まっている。こうした動向を背景に、オカムラは国際的なデザインパートナーとの協業を通じて製品開発力を強化し、グローバル市場への対応を進めているとみられる。簡潔な意匠と高度な調整機能を兼ね備えた「MUKU」が、変化するワークプレイスにおいてどのように評価されるかが注目される。




オカムラ

2026年7月9日木曜日

ジョージ・ナカシマの造形-木の声を聴く

ギャラリーエークワッドは7月3日より「ジョージ・ナカシマの造形-木の声を聴く」展を開催する。

本展時はナカシマがおよそ30年かけて家族と築き上げた仕事と生活の場「ジョージ・ナカシマ・ウッドワーカーズ」をはじめとする建築の仕事に焦点を当て、ナカシマの軌跡を建築作品や家具と共に巡っていく。



【ワンダーウォール】片山正通氏が、新クルーズ船「AMANE(海音)」をトータルデザイン。2027年春に就航予定。

Wonderwall®を率いる片山正通氏が、日本郵船の新クルーズ船「AMANE(海音)」のトータルデザインを手掛けた。2027年春に就航予定の同船は、東京湾で長年親しまれてきたレストラン船「LADY CRYSTAL」の後継船として計画されたものだが、その設計の特徴は単なる豪華客船の演出ではない。

片山氏は、日本郵船が受け継いできた客船文化の歴史をひもとく中で、岩崎久彌の旧岩崎邸庭園に着目。邸宅と庭園が互いを引き立てながら一体の空間体験を形成していることから着想を得て、「東京湾を庭園に見立て、その上に浮かぶ邸宅をつくる」というコンセプトを導き出した。船そのものを主役にするのではなく、東京湾の風景を取り込むための器として構想した点に、本プロジェクトの独自性がある。
デザインの根底には、日本古来の精神性と西洋の技術や様式を融合する「和魂洋才」の思想が据えられている。船体外観は、船が本来持つ流麗な曲線を生かしながら、デッキと内部空間を連続したものとして捉えて構成。建築とランドスケープの関係性を船に置き換えたような設計となっている。また、乗船前の体験にも配慮し、桟橋から船首の個室や船内の様子が自然に視界へ入ってくる導線を計画。訪れた人が邸宅へ招かれるような感覚で船内へ導かれる演出が施されている。

△ 桟橋

△1F 廊下(ギャラリー)
△1F メインダイニング

△バーラウンジ
△2F個室
△3Fフライングデッキ

船内では、邸宅を巡るような体験が空間全体を通じて展開される。1階のギャラリーにはアーティスト山口幸士氏による作品を展示し、移動そのものがアート鑑賞の時間となるよう設計。中心となるメインダイニングは、日本建築に見られる格天井を現代的に再解釈した意匠を採り入れながら、柱の存在を感じさせない大らかな空間として計画されている。食事のためだけでなく、イベントやレセプションにも対応できる柔軟性を備え、船上の邸宅におけるリビングルームのような位置付けとなる。一方、船尾のバーラウンジは大開口のガラスによって海との距離を縮め、室内にいながら屋外のような開放感を味わえる空間とした。

特に片山氏のコンセプトが色濃く表れるのが、船首の個室と最上階のフライングデッキだ。東京湾の景色を最も印象的に受け止められる位置として計画された個室は、デッキと連続する構成によって室内外の境界を曖昧にしている。さらにフライングデッキは、「庭園としての東京湾」を最もダイレクトに体感できる場所として設計され、海上の風や光、広がる視界そのものが空間の一部となる。船内を豪華に装飾するのではなく、東京湾の風景を最大のデザイン要素として取り込むことで、建築、インテリア、ランドスケープが融合した新たな船上空間を実現している。

【新クルーズ船「AMANE」概要】
船名:AMANE(海音)
就航予定:2027年春
全長:約48.0m
全幅:約9.5m
喫水:約2.1m
総トン数:約480トン
定員:約90名(着席時)
クライアント:日本郵船株式会社
本船トータルデザイン:片山正通
(株式会社ワンダーウォール 代表)
ロゴデザイン:平林奈緒美
プロジェクトコンサルティング:寺田心平
(株式会社タイソンズアンドカンパニー    代表取締役社長)




ワンダーウォール
https://wonder-wall.com/ja

2026年7月8日水曜日

【HAY】プロダクトデザイナー倉本仁氏がデザインしたコートラック「KNIT」に新色「Bordeaux(ボルドー)」を追加

HAYは、プロダクトデザイナー倉本仁氏がデザインしたコートラック「KNIT」に、アジア限定カラー「Bordeaux(ボルドー)」を追加し、7月3日に発売した。販売はHAY TOKYO、HAY OSAKA、HAY ONLINE STOREで行う。

「KNIT」は、ロープや金属棒を“編む”ように扱う実験的なプロセスから生まれたコートラックだ。3本のスチールパイプが立体的に交差しながら互いを支え合う構造を採用し、装飾を排したシンプルなデザインでありながら、空間の中で彫刻作品のような存在感を放つ。機能を成立させるための構造そのものが造形となる点に、この製品の大きな魅力がある。
デザインを手掛けた倉本氏は、家具や家電、生活用品など幅広い分野で活躍する日本人デザイナー。素材に触れながら試作を重ねるプロセスを重視することで知られ、Red Dot Design AwardやiF Design Awardなど国際的なデザイン賞も受賞している。「KNIT」にもそうした姿勢が色濃く表れており、見た目の軽やかさと安定性を両立させながら、最小限の構成要素で豊かな表情を生み出している。
今回登場したボルドーは、既存のブラック、グレー、トフィー、ホワイトに続く新色として開発された。深みのある赤褐色を基調としながらも彩度を抑えた色調で、落ち着きと温かみを併せ持つのが特徴だ。近年のインテリアトレンドではニュートラルカラーや木質感のある素材使いが主流となる一方、空間に個性を与えるアクセントカラーへの関心も高まっている。ボルドーはそうした需要に応える色といえ、主張しすぎることなく空間に奥行きや品格を与える。この色は「KNIT」が持つ造形的な魅力をより際立たせる効果もある。ブラックでは構造の輪郭が引き締まり、ホワイトでは軽快さが強調されるのに対し、ボルドーは光の当たり方によって陰影を柔らかく表現し、立体的に交差するパイプの造形をより印象的に見せる。単なるカラーバリエーションの追加ではなく、プロダクトの見え方そのものに新たな解釈を与える提案といえそうだ。
用途面では、玄関や寝室、ウォークインクローゼットといった住宅空間はもちろん、ホテルの客室やラウンジ、オフィス、レストランなどの商業空間にも適する。壁面に固定する必要がない自立式であることからレイアウト変更が容易で、収納家具という役割にとどまらず、空間を構成するインテリアエレメントとしても機能する。コートラックという日常的な家具でありながら、構造美と色彩によって空間の印象を大きく変える存在として、あらためてその魅力を発信するモデルとなりそうだ。価格は4万1800円(税込)。



【HAY】
https://www.hay-japan.com/