2017年12月18日月曜日

スキーマ建築計画「ドシー恵比寿(℃恵比寿)」内覧会

恵比寿に12/16(土)よりオープンするカプセルホテル「ドシー恵比寿(℃恵比寿)」の内覧会へ。「ドシー恵比寿」は、トランジットサービスを提供するナインアワーズの新しいサービスで、独自のサウナと睡眠に特化した施設。元々カプセルホテルだった建物のリノベーションで、設計をスキーマ建築計画、サイン&グラフィックデザインを廣村デザイン事務所が手がけ、アドバイザーとして柴田文江氏を起用している。
従来のカプセルユニットを活かしてリユースし、そこに独自のサウナサービスであるロウリュとウォームピラー(冷水)を加え、新たな空間をデザインした。サウナのみでも、カプセルホテルで1時間~の仮眠、宿泊での利用もできる(男女ともに利用可能)。
外装は赤錆止めで塗り替え、広くはない間口ながら一際目を引く。
内装はFRPと木材を使ってデザイン。レセプションの机も土台にFRP、天板に木板を使ったオリジナルのもの。
客室階
既存カプセルの色であるベージュを館内全体に展開し、古いイメージをポジティブな印象に変えた。
サウナ階
本場フィンランドに倣い、室温は高めの90度前後に管理、熱したサウナストーンに客自身がミント水をかけてじんわりと蒸気浴を楽しむ“ロウリュ”を体験できる。クールダウンには水風呂ではなく、体に沿って静かに流れる水流に包まれるような浴び心地が特徴のTOTOのウォームピラーを5段階の水温で用意。
また2号店として2018年春に「ドシー五反田(℃五反田)」が開業予定。

2017年12月14日木曜日

女性ネットワークの会 主催「東リ・厚木工場見学会」開催

121日、日本建築仕上学会 女性ネットワークの会が主催する工場見学会が開催され、塩ビ床材やカーペット、カーテンなどを製造・販売する東リ株式会社の厚木工場へ。
▲東リ株式会社・厚木工場
甲子園球場とほぼ同じ広さの敷地内には複数の製造施設が設けられている

この日は25名の会員が参加し、およそ2時間かけて床タイルの製造ラインや「オフロケーションシステム」によるタイルカーペットのメンテナンスを行なうメイクアップセンター、カーテン縫製工場、検品の様子などを見学した。
▲製品説明を聞く参加者たち

東リのベーシック床材の中でも大きな位置を占める「ビニル床タイル」の主力工場である厚木工場。ここでは、汎用性が高く質感表現豊かなフレキシブル素材の「コンポジションビニル床タイル」や、意匠性にすぐれ、商業施設を主な用途とする「複層ビニル床タイル」、オフィスを主な用途とするOAフロア向けの寸法安定性にすぐれる「各種置敷きビニル床タイル」といった各種床タイルを製造している。さらには、オフロケーションシステムによるタイルカーペットのメンテナンスを行なうメイクアップセンターやカーテン縫製工場などの施設も。また、併設されている東リ物流株式会社厚木配送センターは、厚木工場で製造したビニル床タイルを全国に届けする配送拠点としての役割を担っている。

見学ツアーの後は質疑応答や「東リ株式会社における女性活用と新製品の活用案」と題したトークイベントも開催された。東リにおける現段階での女性総合職は9%だが、年々女性の採用も増えており、再来年の創立100周年に向けて採用を強化していく方針だそう。また、最近では全国転勤が前提の総合職として入社する女性も多くなってきており、女性社員の活躍がますます期待されている。
▲エリア限定職から希望する部署を目指して
総合職へと異動した持谷さん

今回の見学会を主催したの「女性ネットワークの会」、建築仕上げにともなう設計・材料・工法・施工等の技術的発展に貢献している日本建築仕上学会内にある女性技術者の交流を図る会。会員数は法人115社、個人会員数は正会員、準会員、名誉会員をあわせて370名ほど。設計、研究開発、施工、専門業等に従事する女性の建設業における職域の拡大を目指し、職種や会社以外のネットワークの構築や建設業への若手女性技術者育成を目的に、2014年にスタートした。ゲストを招いての講演会、現場見学会や座談会、展示会への出展など、女性が働きやすい建築業界を目指して企業間の垣根を越えて精力的に活動中。建築現場で働く女性へのアンケートも実施し、現場で女性が働き続けるために必要な施設、周囲の意識などを調査し、提案する活動も行なっている。

なお、女性ネットワークの会では、113日(土)・14日(日)に札幌市にて開催される建設産業ふれあい展にて「女性が輝く職場とは?」と題したトークショーを行なう予定だ。





東リ株式会社 https://www.toli.co.jp/
日本建築仕上学会 http://www.finex.jp/

2017年12月11日月曜日

「(仮称)弘前市芸術文化施設」が2020年度開館に向け本格始動、建築・改修担当は田根剛氏。

1127日(月)、青森県弘前市が推進する吉野町緑地周辺整備等FPI事業に関する記者発表会へ
▲本プロジェクトの中心となる煉瓦倉庫
1階建て(左)と2階建て(右)の2棟から成る

本事業は、JR弘前駅と弘前公園の中間に位置する吉野町煉瓦倉庫と緑地において、交流人口の増加や回遊性の向上による賑わいの創出、そして文化的なアイデンティティを支える拠点として、現在進行形のアートや土地に根差したアートを発信し、夢ある未来の基盤を官民連携によってつくる美術館を核とした文化交流施設「(仮称)弘前市芸術文化施設」を整備するもの。カフェ、屋外広場、視点場、メモリアルドッグなどを効果的に配置し、豊かな緑地と赤煉瓦倉庫を体験できる一体的な計画で、弘前市の行事と連動した屋外イベントや雪深い冬の季節にも屋内大空間でのライブや映画上映会を可能にするなど、弘前の四季を通じて楽しめる美術館にしていく。
▲左から南條氏、葛西市長、平出氏、田根氏

この日は市長の葛西憲之氏、複数企業の共同出資により設立された弘前芸術創造株式会社の代表取締役・平出和也氏、本事業の総合アドバイザーである南條史生氏、そして建築家の田根剛氏ら4名による事業の概要説明と見学会が開催された。
▲見学会の様子
ライブラリーに改修予定の空間を解説する南條氏と田根氏

煉瓦倉庫は、戦後、リンゴを原料としたシードルを日本で初めて生産した場であり、また近年では、弘前市出身の芸術家・奈良美智氏が展覧会を行なった場としても知名度の高い建物。「赤煉瓦倉庫の魅力を最大限活用し、現代アートのクリエイティブハブをつくること」を運営方針に掲げ、弘前市に残る吉野町煉瓦倉庫の改修と(仮称)弘前市芸術文化施設の創設という一連のプロジェクトを通して、「アートの感動を弘前にもたらし、人々が創造性の喜びへと向かう一連の流れをつくり出すこと」を最大のミッションとしている。
▲奈良氏の作品「AtoZ Memorial Dog」

美術館運営の基本コンセプトは「つくること、みせること、そして収蔵して歴史に残すこと」。世界中から新進気鋭のアーティストを招聘し、滞在させ、地域の人々と交流しつつ先端的な作品を制作してもらうという、今までになかったシステムを構築するという実験精神に満ちた多様な表現の可能性を示す。作品の制作現場と展示を直結させ、特徴ある展示空間と対話するアートを生み出し、歴史と現代アートを感じる場、「記憶装置」となるよう赤煉瓦倉庫の魅力を最大限活用し、現代アートのクリエイティブハブをつくることを目指していく。

なお、開館後は企画展と連動した主催プログラムはもとより、市民活動団体や事業との共催・提携プログラムも展開し、地域文化の再生やコミュニティの再構築に寄与していく。また、仕事の創出や人の移転も積極的に行なう予定。学芸に関しては広く全国から人材を求め、運営に関する人材は主に地域雇用を行ない、地域の活力創造の一助としていくという。

煉瓦倉庫の建築・改修は田根剛氏が担当。歴史と伝統に誇りを持ち、市として「レトロモダン」をコンセプトに現代の暮らしへと継続する弘前市民の高い文化意識と街への想いを汲み取り、歴史的建造物を多くの煉瓦を使って空間を組み立て直すプランを提案。改修方針は「現状をオリジナルの状態に修復するとともに、無用な建築デザインを付加せず、最小限の設備・機能を用いて現代美術館としての要請を満たすこと」。古いものを新しくしてしまうのではなく、過去のものを未来へと引き継ぐ『記憶の継承』をコンセプトに煉瓦倉庫を美術館へと生まれ変わらせる。
▲1階平面図
▲2階平面図

▲模型(スケールは1/50)

老朽化や経年によって傷んだ外壁を全て「赤煉瓦」で覆い、老朽化した屋根を「シードル・ゴールド」の屋根葺にすることで、光によって移ろう屋根の輝きが新たな美術館のイメージを創出。A棟は市民に開かれた文化施設として様々な活動が行なわれ、B棟は倉庫の持つ空間性を活かした国内でも稀な大型展示のできる展示空間を計画。また酷く傷んだC棟を「シードル・カフェ」として再生することでアートと市民をつなぐ吉野町緑地の中心の場所を。記憶の継承と風景の再生によって生まれる新たな芸術文化施設が弘前を世界へと繋げる場所に変身させる。20185月に着工し、2019年秋に完成予定。2020年春のオープンを目指す。

▲耐震改修については外側から鉄骨で固めていく方法ではなく
煉瓦と煉瓦の間に穴をあけ、その中に鉄骨を通す方法を採用
高度かつ世界でも珍しい例で、東京駅の建て替え時にも採用されたそう
▲展示室の壁には元々のコールタールの壁をそのまま生かし
「煉瓦倉庫でしかできない展示」というサイトスペシフィックを付与することで
アーティストの創造性を喚起する空間を生み出している


田根剛〔建築家〕/ ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS
1979年東京生まれ。ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTSを設立、フランス・パリを拠点に活動。2006年にエストニア国立博物館の国際設計競技に優勝し、10年の歳月をかけて2016年秋に開館。また2012年の新国立競技場基本構想国際デザイン競技では『古墳スタジアム』がファイナリストに選ばれるなど国際的な注目を集める。場所の記憶から建築をつくる「Archaeology of the Future」をコンセプトに、現在ヨーロッパと日本を中心に世界各地で多数のプロジェクトが進行中。主な作品に『エストニア国立博物館』(2016年)、『A House for Oiso』(2015年)、『とらやパリ』(2015年)、『LIGHT is TIME』(2014年)など。フランス文化庁新進建築家賞、フランス国外建築賞グランプリ、ミース・ファン・デル・ローエ欧州賞2017ノミネート、第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞など多数受賞。2012年よりコロンビア大学GSAPPで教鞭をとる。



【建築概要】
 設計      建築設計 ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS株式会社
         設計統括 株式会社NTTファシリティーズ
              株式会社MTTファシリティーズ東北
         構造設計 株式会社大林組
              スターツCAM株式会社
         設備設計 株式会社森村設計
 設計協力    照明設計 株式会社岡安泉照明設計事務所
 監理      ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS
 主な建物用途  美術館
 階数      地上2


■弘前芸術創造株式会社
弘前市吉野町緑地周辺整備等PFI事業の推進のため、スターツコーポレーション株式会社、株式会社大林組、スターツCAM株式会社、株式会社NTTファシリティーズ、株式会社南建設、エヌ・アンド・エー株式会社、スターツファシリティーサービス株式会社、株式会社西村組の共同出資にて2017年に設立。