伊東豊雄氏 |
諏訪湖について語る伊東氏 |
話は渋谷の大開発に移り、「高層化すればするほど中と外の関係は切れてしまう」と建築の高層化を批判。「近代主義の建築は20世紀に明るくて清潔でたくさんの人が都市に暮らせる建築を作ろうということでスタートしたが、現在東京ですら人口が減少しているのに高層建築が建ち続けるのは人と自然、人と人を切り分ける思想で成り立っている。どうやってもう一度人と自然、人と人の関係を回復するかという事こそ今我々が考えなければならない最大の問題だ」と訴える。
2011年におこった東日本大震災では、建築家にできることはないかという思いで三陸に通い、仮設住宅の過剰な仕切りによるプライバシーの確保より人と一緒に暮らしているという感覚のほうが大事なんだという住民の声からみんなの家プロジェクトを開始する。「切り分けられた仮設住宅は高層建築と同じで人と人のつながりが失われる」と強調。みんなの家は三陸で16件、熊本県に約100件実現した。
人と自然の関係の回復については、建築の中に自然を取り込む方法の例として自身唯一の高層建築シンガポールにある「キャピタグリーン(2014年)」を紹介。外装には豊かな緑化を施し、屋上庭園には象徴的な大型吸気口を設け、自然の力を利用して各階に新鮮で清涼な空気を供給している。
一方人と人の関係の回復については、「ぎふメディアコスモス(2015年)」を紹介。オープンな空間であるがさまざまな場所を用意することで自分で居場所を選べるプランになっている。2階の天井にあるグローブと呼ばれる半透明で漏斗形状のかさの下は内部感覚を味わえる場所。他にも「川口市めぐりの森(2018年)」や「山梨学院大学 国際リベラルアーツ学部棟(2015年)」、「台中国家歌劇院(2016年)」などを例にあげ、「未来的に自然と親しむこと」、「歴史を継承する」ことが人と自然、人と人が結ばれるために考えていくことと締めくくった。
ダイフレックス商品を屋根の防水に使用した「川口市めぐりの森」模型 |
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