2026年3月19日木曜日

多摩美術大学 上野毛キャンパスに新棟(本部棟・講堂)が竣工

多摩美術大学は、創立90周年記念事業として進めてきた上野毛キャンパスの新棟(本部棟・講堂)が竣工したことを発表した。本学創立の地である上野毛キャンパスの再整備計画において、教育・研究環境の刷新と地域社会へ向けた開放性の強化が重要なテーマとして掲げられ、その象徴ともいえる建築が完成した。新棟は2026年度より順次供用を開始する予定。
上野毛キャンパス再整備の背景
上野毛キャンパスは、1935年の多摩帝国美術学校の創設以来、同大学の美術・デザイン教育の中心として歴史を刻んできた。老朽化や耐震性への対応に加え、アート/デザイン教育のあり方が急速に変化するなかで、キャンパスに求められる空間や環境も進化が必要となった。創立90周年記念事業として位置づけられた今回の新棟整備は、教育基盤の刷新であると同時に、大学が地域に開かれ、多様な交流を生み出す場としての役割を、より強固にすることを目指している。

コンセプトの源泉となった一節
「雨露を凌ぎ、凍てることなく鉛筆が持て、熱中症の心配なく、友と師とふれ合い、競い合い、絆を結ぶことのできる清朗な覆いさえあればいい。」
この言葉は、青柳理事長が、新棟の設計を担った建築家・内藤廣氏へ渡したメモに記されていたものだ。学生が日々の創造活動を重ねるために本質的に必要なものを示したこの言葉は、新棟の建築理念の核となり、プロジェクト全体の思想を方向づけた。なお内藤氏は設計中であった2023年4月に多摩美術大学学長に就任している。

新棟の特徴
1|創造活動を支えるスタジオと教室
本部棟2~4階には天井高を確保した教室・スタジオが並ぶ。平面・立体・映像など、多様な表現に対応するための柔軟な空間構成が採用され、自然光の導入や動線計画にも細やかな配慮が施されている。藝術大学における「つくる」行為を徹底的に支え、学生が集中して制作に没頭できる環境を目指した計画だ。
2|地域に開かれたギャラリー「サーラブルゥ(Sala Blu)」▲
本部棟1階、環状八号線に面する位置に開設されるギャラリー「サーラブルゥ」は、天井高約6mの大空間を持ち、学生作品の展示だけでなく、プロジェクト成果の発表など多様な用途に応える。可動パネルによるレイアウト変更が可能で、地域の人々が気軽に立ち寄れる開放性を備える。
大学と都市の関係性を繋ぎ直す“表層としてのギャラリー”がここに誕生する。
3|トップライト「オクルス」が照らす講堂「オクルスホール」▲
環状八号線と駒沢通りの交差点に面して建てられた講堂「オクルスホール」は、新キャンパスのアイコンとなる外観を有する。
ドーム頂部には天窓(オクルス)が据えられ、柔らかな自然光が内部へと注ぐ。木質の壁には吸音材が施され、演劇や音楽など多様な身体表現に対応できる音響特性が確保されている。「オクルス(眼)」という古代ローマ建築に由来する形式は、単なる採光装置ではなく、学びの場を象徴する“光の装置”として空間の意味を深めている。
4|学科横断の交流を生む「サブチェロ(Subcaelo)」
本部棟5階には、学生や教職員が自由に行き交い、学びを横断させるコモンズとして交流テラス「サブチェロ」を設置。制作の合間の打ち合わせ、学生同士の自主企画、教員との対話など、多様な行為を受け止める場所としてデザインされ、学びの触媒となる空間が用意されている。
5|大屋根がつくり出すキャンパスの新たな表情
本部棟全体を覆う大屋根は、理事長の言葉にもある「清朗な覆い」を建築として表現したものだ。大屋根の下に広がる空間は中庭に向けて大きく開き、学生の動線と視線が交差する賑わいを演出する。単なる屋根ではなく、活動の広がりを象徴する「風景装置」として機能している。

■ 学長コメント
竣工に寄せて 多摩美術大学 学長 内藤廣
上野毛キャンパスは、本学の揺るぎない根拠地として長い歴史を積み重ねてきました。
このたび本部棟と講堂が新たに生まれ変わります。大通りに開くギャラリーは、芸術・デザイン教育を社会へ示す場に、また隣接する講堂は身体表現の拠点となります。本学が掲げる「自由と意力」の精神が、この新棟から力強く発信されることを願っています。


多摩美術大学 上野毛キャンパス新棟(本部棟・講堂)
建築概要
所在地:東京都世田谷区上野毛3-15-34
敷地面積:15,878.32㎡
延床面積:6,411.86㎡(本部棟)/795.62㎡(講堂)
構造:鉄骨造、一部 RC造
階数:本部棟 地上5階・地下1階/講堂 地上2階・地下1階
設計・監理:株式会社 内藤廣建築設計事務所
施工:前田建設工業株式会社



多摩美術大学

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