▲下のフロアは300以上の模型から構成される思考のジャングル
▲スケッチブック、模型を下から見上げるなど貴重な体験も
▲上のフロアにはシェルター社協力の3D加工技術を用いたインスタレーションが
内覧会当日は1時間半にわたって平田氏本人から趣旨説明と会場ツアーが行われた。
今回の展示に際して、5月下旬に平田晃久作品集「(仮)Discovering New」が発行される。書籍の発行にあたって3つの章立てを行ったと説明。
「Dicsovering New 」とは新しいを発見するという意味。その新しいとは1に形、2に自然、3にコミットメントが該当する。
1の形、2の自然とは、例えば自然界で花の周りに蝶が飛んでいる時、建築と違って空間を囲ったり閉じた領域を作っているわけではないのに、空間がふわふわと広がる。これを名付けられないか、きちんと扱えないかという構想の事。これは独立初期の考え方。3のコミットメントとは、建築の空間、自然の空間、人間がどう過ごしていくかを繋ぐという事。大きな公共プロジェクトに関わるようになって、このコミットメントという章が加わった。これは形、自然とは無関係であるが重要であり、直接は違うけども絡まりあっているもの。それを書籍とも関連させ、今回の展覧会で表現しようとしたそう。
会場は2フロアに渡って展開。下のフロアは室内と室外に構成されるが、今回平田氏は会場内外にまたがって軸を想定。この軸はそれぞれ書籍の3章に対応している。
書籍では、1つの章に4つのキーワードがある。会場ではそのキーワードを面として展開し、4つの面が1つの軸の周りに構成され、それぞれにブランチが絡まっている。その関係性の中で、似ていたり、影響を与え合っているものにより生まれる空間はまるで雲のよう。
▲中に入り込むことが出来る |
幼い頃住んでいたニュータウンにある四角い団地が外で虫取りをしていた野山の空間と全く違うと感じ、その自然を建築でも作れないかと思ったのが建築を志したきっかけだそう。蝶が飛んでいる等の発想もその当時から思っていた事と繋がっていて、はっきり囲い取らないけどある領域が出来ている関係を建築にできないか。それが氏のコンセプトである「からまりしろ」である。からまりしろとは、絡まる余地、のりしろのしろを意味する。建築は空間を作る事だという考えが20世紀の建築だとしたら、もう少し自然に近い空間、絡まる余地を作る概念で建築を作る事が現在の建築になるのではないか。
下のフロアは概念のからまりしろというフレームワークを作り、その交差点に建築の模型を置いている。例えば「Tree-ness House」は今回の書籍・展示のテーマである1の形の「ひだ」と「階層」というキーワード、2の「自然の発酵/浸食」の交錯から生まれている。このように複数の概念がクロスするところにプロジェクトが生まれ、その交差点が数多ある状態を会場に再現。単体の作品というよりは300個以上の模型によって今まで考えてきたことの総体を提示すると同時に、見る人がそこに何か自分の中で考えることがあるか、今後そこに何か加えてもいいし、今まで考えられていなかった交差点があるかを想像してもいい。思考を喚起するような開かれたネットワークをそのまま展示空間にしたかったと語る。
▲下フロアの展示を読み解くのに大事な図 要チェックである |
抽象度のある思考のジャングルに対し、上のフロアは逆に体験を重視したリアルな空間。実際のマテリアルである木でできたインスタレーションは3Dカットという三次元でカッティングのできる株式会社シェルター社から提案され、今回の展示に至った。これは、ある台湾のコンペで2当であったブリッジの構造体をアレンジした木造のインストラクチャーで、技術の問題、マテリアリティーの問題、それを実証・体験する問題が絡まるようにタブレットがぶら下がり、動画が見られる展示になっている。展示室奥、大きな壁面に映し出される動画では実際に「太田市美術館・図書館」、「Tree-ness House」に行ったような体験ができる。
▲約20分間の動画は写真家市川靖史による撮りおろし。 ゴールデンウィークのある一日、市民の方が実際に利用する姿が映し出される。 |
これまで、先鋭的な建築を設計する事に関心があったが最近は、建築なのか建築でなくなるのかのぎりぎりの地点、あるいはどこまで他所を受け入れたら自分が自分でなくなるのかといった、どこまで自分の個性を高められるかではなく、どこまで浸食されても自分が消えてなくならないのかという事に関心があるそう。それが漂う空間になっているのを感じてもらえればいいと語る。
最後に、あらゆる種類の人が作るという事に関わっていく時代だが、強い軸、個性を持った建築家という非常に特殊な存在が周りを吸着しながらどうやって建築を作っていけるのか、表現出来るのかがこれからのカギになるのではないかと締めくくった。
過去約10年間に取り組んだ国内外の建築活動と進行中のプロジェクトを、平田氏の建築哲学と世界観を体感できる本展示は2018年7月15日(日)まで。
同年5月31日(木)には平田氏本人のよる講演会がイイノホール(東京都千代田区内幸町2-1-1飯野ビルディング4F)にて行われる。
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展覧会情報
展覧会名(日): 平田晃久展 Discovering New
展覧会名(英):Akihisa HIRATA:Discovering New
会期:2018年5月24日(木)~7月15日(日)
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜
入場料:無料
会場 :TOTOギャラリー・間
〒107-0062 東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
TEL=03-3402-1010 URL=https://jp.toto.com/gallerma
交通案内:東京メトロ千代田線
乃木坂駅3番出口徒歩1分
都営地下鉄大江戸線 六本木駅8番出口徒歩6分
東京メトロ日比谷線 六本木駅4a番出口徒歩7分
東京メトロ銀座線・半蔵門線・都営地下鉄大江戸線 青山一丁目駅4番出口徒歩7分
主催:TOTO ギャラリー・間
企画: TOTOギャラリー・間運営委員会
特別顧問:安藤忠雄 委員:妹島和世/千葉 学/塚本由晴/エルウィン・ビライ
後援:一般社団法人
東京建築士会
一般社団法人 東京都建築士事務所協会
公益社団法人 日本建築家協会関東甲信越支部
一般社団法人 日本建築学会関東支部
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詳しくは下記を参照のこと▼
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