東京・西新宿にある住まいづくりの情報センター「リビングデザインセンターOZONE」の企画・設計を担当したビル勤務者向けの共用スペース『SHINJUKU PARK TOWER LOUNGE(新宿パークタワーラウンジ)』が2018年4月2日(月)にオープン。
内覧会当日は設計に携わった熊谷多生氏(リビングデザインセンターOZONE)と中川エリカ氏(中川エリカ建築設計事務所)によるプレゼンテーションが行われた。
SHINJUKU PARK TOWER LOUNGEは場所を作って終わりではなく、今後様々な展開を予定していると熊谷氏。
本スペースは、施設所在地であるビル「新宿パークタワー」の所有・運営を行う東京ガス都市開発株式会社からの問題点の解決が依頼の起点となった。
その問題点とは以下である。
① 8階に既にあるランチスペースの不足
ここは、平日は満席、休日は開放されず電気も付かない状態にもかかわらず利用者がいる現状。
② 1万1千人の勤務者満足度・ビル自体の付加価値の高上
③ トイレ渋滞の解消(設計:日建設計、施工:鹿島建設)
ここはかつてリビングデザインセンターOZONEこと東京ガスコミュニケーションズ株式会社のオフィス(天井が貼ってあり、タイル床のありふれたセミナールーム・会議室)であったが、都市型オフィスのパブリックスペースとして勤務者へ向けて開放されることになった。
中川氏は本ビルが1994年に竣工し、24年目になるが大規模な改修はなかったことにより、勤務者の勤務スタイルやニーズがずれていっているのではないかと感じたそう。そのズレを上手くチューニングしながら問題解決と都市型オフィスの新しい共用スペースの形を求めた。
問題であるランチ難民の解消としてのスペースだが、ランチ時以外の朝や日中、夕方の使われ方から解決を狙った。具体的には勤務者が自席以外で働くことのできるシェア空間、お客さんを連れてオープンな会議を行うこと、アフター5に友人と時間を過ごすなどの利用を視野に入れた。人数も滞在時間も不確定なオープンスペースに彼らが提案したのは「水平なパーティション」と呼ばれる異なる高さを持つ什器と低密に配した椅子である。これにより多様で多中心なワンルームが生まれた。
水平なパーティションとは本プログラムで生まれた造語である。普通、パーティションとは垂直に立っていて人と人を隔てたり、空間と空間を分けるために存在するが、今回は水平面を使って人々の距離をとれないか、異なった使い方が同時に行われ、空間を共有することが出来るのではないか、という挑戦が行われた。
また、低密な椅子の配置は集まる人の過ごし方によって自由に移動させやすく、空間に余白が生まれ、様々な利用が展開される。これは新たなイノベーションを呼ぶ仕組みになりうる。
▲一般的な使われ方と本プロジェクトの比較 |
大きく資料を広げたり、1人で短時間の準備に利用したり、5人で打ち合わせをすることも、10人でコーヒーを片手に集まることも、ひとつの平面で行うことが出来る。これが500㎡という広さで展開していくと、都市の中で働いているという意識を持ちながらゆるいコミュニティが出来ていくことが期待される。
水平なパーティションは高さが3種類存在。カバンやコーヒーや軽食を傍に置いて広々と腰掛けることのできる430mmのものと、テーブルとして使うことのできる730mmのもの、立って使うことも、スツールに腰掛けながら使うこともできるハイカウンター1100mmのものが用意され、これらを組み合わせながら横断的に使うことを想定。
このアイデアは喫茶店での2人がけや4人がけの席を1人が荷物置きなどに使用し占有している場面を目の当たりにしたことから生まれた。200席用意しても全てが使われるような空間の実現のために水平なパーティションの考えに至ったのだ。
また、1人だったり2人だったり4人だったり、なんとなくここに集まると良さそうだと誘発するように足元のしつらえを全て変えている。ひとつとして同じものがなく、現場に入ってからも検査が続行し、手作りに近い作り方になった。押したり揺らしたりと強度など実際に確かめながら設計者、クライアントの皆で行ったと語る。
▲机の脚元は木もあれば、鉄骨もある |
▲水平面の距離によって人々を緩やかに分節したり、繋げる |
▲ホワイトボードになった壁面はオープンな会議の手助けをする |
▲椅子はスツールや背もたれ付きなど組み合わせにより多様な居場所が生まれる |
使用者が適度な距離感を選び取りながら思い思いに過ごせる様々なアクティビティを許容するシームレスなワンルームになったように思われる。外を望め、天気を感じられる空間で過ごすことは都市で働く中で価値になるのではないか。
所在地:東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー8階
※新宿パークタワービル勤務者のみ利用可能
面積:約530㎡
座席:約180席(最大200名程度)
利用用途:ランチスペース、リフレッシュ、簡易な打ち合わせ、Wi-Fi接続(非常時含む)など
運営:東京ガス都市開発株式会社
企画・設計:中川エリカ建築設計事務所
リビングデザインセンターOZONE(運営:東京ガスコミュニケーションズ株式会社)
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