2011年3月31日木曜日

日土小学校と松村正恒展

竹中工務店・ギャラリーA4にて「木造モダニズムの可能性 日土小学校と松村正恒展」が開催されている。
土日小学校は愛媛県八幡浜市役所に勤務していた建築家松村正恒氏によって戦後設計された木造小学校。戦後木造建築として初の重要文化財2009年に終了した保存再生工事についての解説や松村氏の設計した小学校を紹介している。






ギャラリー内に日土小学校を再現したものは、実際に日土小学校にいる感覚を覚える。



6月3日まで

2011年3月30日水曜日

苅部寛子建築設計事務所+成瀬・猪熊建築設計事務所オープンハウス

都内にて、苅部寛子建築設計事務所と成瀬・猪熊建築設計事務所が手掛けた代田のマンションの改修工事の内覧会を見学。随所で新たな設計手法に挑戦している。

物件は築25年の新耐震の低層集合住宅の1室。特徴的なLDKの壁は、通常は壁紙クロスを貼る前にモルタルの凹凸を平にする為の「パテ扱き」を前面に施し、露出させた状態。擦れて汚れが付着しないよう、上からウレタンクリアを塗装している。

LDKの改装前。奥の隣室は食堂と、左側が台所だった。境の壁は躯躰なので、開口はこのまま、↓ 和室にチェンジ。

和室と手前・LDKは引き戸で仕切る。

大きな引き戸は通常のフラッシュ戸。小口の処理で、あたかも何枚もの合板を張り合わせたように見せている。床の仕上げ材はラーチフローリング。

パテ扱きの壁、ラーチの扉と床、グレーのモルタル天井、躯躰の現わし、そして畳と、仕上げはそれぞれだが、統一感があってスッキリ見える。
改装前は、画像手前の位置に台所があった。

LDK:横長の大きなキッチンカウンターは、L字ブラケット5本で支えている。換気口を画面左上の箇所で確保できた為、厨房の位置を思い切って此処まで動かすことが可能となった。

1口ガスコンロ+2口IHクッキングヒーター。これで1つの製品かと思ったら、異なる2製品を並べたもの。

廊下の位置はリノベ前後で変わらず。向かって左は玄関土間。右は前述のLDK(リーン・ロゼのソファ「カラン」がチラと見えている)。

廊下の突き当たり、アトリエとして使用予定。奥の壁がパテ扱き仕上げ。

廊下との仕切りはなんと、天井まで高さのある大きなフレキシブルボード(繊維強化セメント板)。ウレタンクリア塗装を施し、扉として使っている。

フレキシブルボードの扉を閉めた状態。扉ではなく、壁に見える。

廊下の反対側。元はトイレだったところを洗面室(コーリアン一体成形の洗面カウンター)に。画面右奥が浴室、その手前の木の扉を開けるとトイレ。
トイレと浴室の間に収まっていて見えないが、こちらの仕切り戸もフレキシブルボードを採用。

ガラス壁と扉の取り付けを待つ浴室。壁の色は、合板の上に透明のFRPを塗装し、下地のラーチ材とモルタルが透けて見えている。

この横にテラスへ出る開口部がある関係で、内寸が670しかとれなかったトイレ。柱を敢えてむき出しにして、間にリモコンやペーパーホルダーなどを納めたり、手洗い器も敢えて背面に設置して、広さを確保した。

洗面室の左にある居室。画面右に収納棚。

奥のランプはシルバーボール(使用例を初めて見た)。電球のガラス半分が反射鏡で、点灯すると壁側だけを照らし、眩しくない。

震災から日も浅く、開催を迷ったという今回のオープンハウスは、来場者の人数を制限して行なわれた。部材納期にも変更があり、昨日やっと届いたものもあるという中、開催に尽力された施主をはじめ関係者の方々に対し、厚く御礼申し上げます。

2011年3月29日火曜日

川辺直哉建築設計事務所《LUZ白金》オープンハウス

都内にて、川辺直哉建築設計事務所《LUZ白金》オープンハウスを見学。

立地は準工業地帯で、周囲には住宅が建て込んでおり、3方がかなり近接している。此処に5層13戸の集合住宅(賃貸)を建てるに際し、外部よりも内部空間をいかに豊かなものにするかを設計の主軸に据えた。見学中、部屋の外の廊下に居るのにまるで室内に居るような、不思議な感覚を何度か味わった。

2F共有部。奥の四角い窓の向こうは202号室、さらに向こうにも別の窓の端が重なり、2つの窓フレームを通して外の景色が抜けて見える。上方には3F共有廊下を歩く人の姿が見える。

階段を上がりきり、2F見下ろしと、3F共有廊下。
壁・床・天井の仕上げはモルタル。構造はRC造。

同じく3F共有廊下のEV前から、301号室を見る。共有部→室内(301)→窓を通して外部の景色という流れ。

5Fまで階段を上がりきったところから4F共有部見下ろし。階段上の縦長の嵌め込み窓から居室内部が見える。画面左に映っている階段は屋上に続く。

配布資料でいうところの「部屋のような広さで繋がる共有部によって、住環境を補完」する為に、意匠上で細かな工夫をしている。共有部に面して開けられた窓 のサッシをよく見ると、アルミ枠の上からグレーに塗装した木の枠をわざわざ嵌め込んである。これは、窓枠を金属のアルミのままにしておくと、その質感から 外部からの眺めを連想させてしまうのを避け、共有部に居ながらにして、あたかも室内に居るかのような感覚を維持する為である。EVのドア、各室ドア、玄関呼び鈴のスイッチボックスに至るまで、モルタルの色に合わせたグ レーで統一感を出している。

玄関呼び鈴も、通常のインターフォンの形状では「いかにも外部に居る」と連想させてしまうので、室内スイッチに似たものを選んだ。

301号室内観。

同301号室、共有部に面した窓からの室外の眺め。共有部廊下を挟んで、302号室の玄関ガラス戸から室内に立って居る人が、更に外の景色が見えている。

301号室の水まわり。

前述302号室内観。

昇り降りを繰り返し、13戸全て見学したが、1つとして同じ部屋タイプがない。物件が建つ区の「ワンルーム条例」では、規定の平米以上の部屋タイプが7戸以上ある場合、管理人室などを設けなければならないが、今回はこれを逆手にとり、上限の6戸におさえ、余裕が出来た分で他の7戸や共有スペースのを拡張、豊かな内部空間へと転じた。まるでジグソーパズルを仕上げていくような作業だったという。

2F共有部廊下から、3Fへ続く階段。共有部では随所に外からの光が差し込み、家の中の階段を昇り降りしているような感覚に。

最上階の1室。ちなみに最も賃貸料の高いタイプ。


同上5F居室の水まわり。浴室からのナイスビュー。

見学中、各部屋や共有廊下のあちこちに、工事中の部屋の写真パネルが掛かっていた。川辺明伸氏撮影による作品も合わせて堪能。

「アートフェア東京 2011」開催延期

3/29追記:「アートフェア東京 2011」は、会場の東京国際フォーラムが東日本震災避難者受入施設に指定された為、開催延期になったとのこと。
詳細は公式サイト参照:http://www.artfairtokyo.com/

2011年3月28日月曜日

OZONEにてセミナー「現代住宅設計に求められる視点」第3回を聴講

リビングデザインセンターOZONEにて、プロフェショナルセミナー「現代住宅設計に求められる視点」の最終回を聴講(会場画像提供:OZONE)。「悦楽」をテーマに、谷尻誠氏、永山祐子氏、長谷川豪氏が語る。企画・モデレーターは門脇耕造氏。

震災後の夜間イベントとあって、当初は中止やテーマ変更も考えたそうだが、今この時期だからこそ、という共通意志のもとに開催された。セミナー後の懇親会の席上での谷尻氏の言葉と、それを受けて「皆さんと此処で同じ時間を共有できたことが嬉しい」と述べた主催側の姿勢が印象に残る。
なお、OZONEは4/1より営業時間を通常に戻すとのこと。

南洋堂の建築トランプ第二弾「ARCHIBOX in JAPAN」

南洋堂書店さんから話題の建築トランプ第二弾「ARCHIBOX in JAPAN」が届く。おおお、なんて嬉しいサプライズ。
選者は倉方俊輔氏、イラストはTOKUMA氏(bowlgraphics)。企画・販売は南洋堂書店

1924年以前がダイヤ、1925~49年がクラブ、1950-74年がハート、1975年以降がスペードで、エースからキングまで13のビルディングタイプに分かれている。
このシルエットでどの建築か判るという絶妙さ。

ジョーカーの2枚は「シンボル」。伊東忠太の「東京都慰霊堂の妖怪」、吉阪隆正「大学セミナーハウスの眼」が選ばれている。掲載一覧やパッケージまでおシャレ(昔、こういうシガレットケースみたいなチョコレート菓子がありましたよね。ふと思い出し)。

2011年3月26日土曜日

手塚建築研究所《豪徳寺商店街の階段ハウス》オープンハウス

手塚建築研究所《豪徳寺商店街の階段ハウス》オープンハウスを見学。

敷地は商店街に面し、10メートルの高さ制限がある。両隣と奥の3方を厳しく囲まれ、仮にそのまま敷地いっぱいに建てると容積率に引っ掛かる為、4層を階段状にセットバックさせている。


この解により、商店街の両隣、街並みに違和感なく溶け込んだフォルムにもなっている。

1Fは貸店舗、奥は和室、上層階への階段がある。

1Fから4Fまで一直線の階段。

2Fキッチンの端から、リビング・ダイニングを見る。

同2Fリビング・ダイニング。左側1列は収納+トイレ。

2Fベランダ(商店街側)から上層見上げ

3F居室(商店街側)

3F浴室。対面は洗面室。

3F居室。
2つの居室はそれぞれ独立していて、2室に挟まれて水回り(バス+洗面室)がフロア中央に位置している。

最上階(4F)へ。

4Fまで昇りきったところから振り返り。

4F居室 左側が階段。

4Fベランダから商店街を見下ろす。

4F水回り、バスタブ側

同、洗面室側

屋上に続く階段(見学は不可)

なお、今回のオープンハウスは「東北関東大震災義援金支援オープンハウス」であった。来場者からの募金(500円以上)は、手塚事務所での募金と合わせ、日本赤十字社に寄付される。以下、同事務所サイト3/22掲載文より要所転載。

「震災直後はこのオープンハウスを中止することを想定していたのですが、それでは被災した方々を助けることにはならないと考えました。我々の責務は単純に追悼の意を表することよりも、可能な限り健全な経済活動を続け、被災者の方々を支援することだと思います。(略) 今後、手塚建築研究所は、積極的にこの東北関東大震災義援金オープンハウスを行なっていこうと思います。建築家の方々にこの輪が広がって行くことを願っています。」