都内にて、
川辺直哉建築設計事務所《LUZ白金》オープンハウスを見学。

立地は準工業地帯で、周囲には住宅が建て込んでおり、3方がかなり近接している。此処に5層13戸の集合住宅(賃貸)を建てるに際し、外部よりも内部空間をいかに豊かなものにするかを設計の主軸に据えた。見学中、部屋の外の廊下に居るのにまるで室内に居るような、不思議な感覚を何度か味わった。

2F共有部。奥の四角い窓の向こうは202号室、さらに向こうにも別の窓の端が重なり、2つの窓フレームを通して外の景色が抜けて見える。上方には3F共有廊下を歩く人の姿が見える。

階段を上がりきり、2F見下ろしと、3F共有廊下。
壁・床・天井の仕上げはモルタル。構造はRC造。

同じく3F共有廊下のEV前から、301号室を見る。共有部→室内(301)→窓を通して外部の景色という流れ。

5Fまで階段を上がりきったところから4F共有部見下ろし。階段上の縦長の嵌め込み窓から居室内部が見える。画面左に映っている階段は屋上に続く。

配布資料でいうところの「部屋のような広さで繋がる共有部によって、住環境を補完」する為に、意匠上で細かな工夫をしている。共有部に面して開けられた窓 のサッシをよく見ると、アルミ枠の上からグレーに塗装した木の枠をわざわざ嵌め込んである。これは、窓枠を金属のアルミのままにしておくと、その質感から 外部からの眺めを連想させてしまうのを避け、共有部に居ながらにして、あたかも室内に居るかのような感覚を維持する為である。EVのドア、各室ドア、玄関呼び鈴のスイッチボックスに至るまで、モルタルの色に合わせたグ レーで統一感を出している。

玄関呼び鈴も、通常のインターフォンの形状では「いかにも外部に居る」と連想させてしまうので、室内スイッチに似たものを選んだ。

301号室内観。

同301号室、共有部に面した窓からの室外の眺め。共有部廊下を挟んで、302号室の玄関ガラス戸から室内に立って居る人が、更に外の景色が見えている。

301号室の水まわり。

前述302号室内観。
昇り降りを繰り返し、13戸全て見学したが、1つとして同じ部屋タイプがない。物件が建つ区の「ワンルーム条例」では、規定の平米以上の部屋タイプが7戸以上ある場合、管理人室などを設けなければならないが、今回はこれを逆手にとり、上限の6戸におさえ、余裕が出来た分で他の7戸や共有スペースのを拡張、豊かな内部空間へと転じた。まるでジグソーパズルを仕上げていくような作業だったという。

2F共有部廊下から、3Fへ続く階段。共有部では随所に外からの光が差し込み、家の中の階段を昇り降りしているような感覚に。

最上階の1室。ちなみに最も賃貸料の高いタイプ。


同上5F居室の水まわり。浴室からのナイスビュー。

見学中、各部屋や共有廊下のあちこちに、工事中の部屋の写真パネルが掛かっていた。川辺明伸氏撮影による作品も合わせて堪能。