TOTOギャラリー・間にて
2020年1月16日(木)から開催中の増田信吾+大坪克亘展「それは本当に必要か。」へ。
人間・時間・空間それぞれの間合いという、日本特有の概念を表象する「間」の一字を名称とした「TOTOギャラリー・間(ま)」は、社会貢献活動の一環としてTOTOが運営する、建築とデザインの専門ギャラリー。
1985(昭和60)年10月の開設以来、国内外の建築家やデザイナーの個展にこだわり続け、今回、独自性に富んだ建築作品を生み出している若手建築家ユニット 増田信吾+大坪克亘の個展「それは本当に必要か。」を開催。
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大坪克亘氏、増田信吾氏 |
内覧会当日は増田氏、大坪氏から20分間の趣旨説明が行われた後、実際に展示を見て回る20分間の会場ツアーが行われた。
本展は、「躯体の窓」(2014)から6年間でつくられた9物件を紹介している。2007年に大学を卒業してから設計活動をしている2人だが、「躯体の窓」(2014)ができるまで何をしていたのか。
増田氏は「1982年に生まれた。ものに溢れ、何不自由ない生活をしてきている中で、新しい何か“もの”をつくるという欲が、上の世代と比べると欠けていると思いながら、では何をつくるかという問いを強みにして設計してきた」と話す。
2人が大学を卒業してすぐに設計したのは、住宅の塀だった。10m足らずの壁が、住宅の空間を変えずとも、人の生活と庭の植生、街並みを巻きこんでいった時、「ものとものの間を変えるだけで、空間を揺るがす設計があり得るのではないかと学んだ」という。
それから山口県での東屋や、北海道での公園の休憩所の設計を通し、前提を疑い、施主に欲しいといわれたものをつくるより、その場に本当に必要なものは何かを考えるようになった。ここでは内覧会で説明のあった3作品を紹介する。
「躯体の窓」(2014)は、鉄筋コンクリート2階建てのアパートメントを週末住宅とスタジオにリノベーションする計画で、当初はインテリアを依頼されていた。施主の話を伺ううちに、この場に必要なのはインテリアではなく、窓という答えに至った。この窓は、内部への採光とともに、北側に面する庭へ太陽光を反射させ、明るさを与えている。
「躯体の窓」(2014)
リビングプール(2014)は、山形県のリノベーション計画。基礎を住宅と自然との間を取り持つ境界と捉えなおし、地面を下げることで視界の角度を操作している。ぜひ模型の内部を覗いて見てほしい。
リビングプール(2014)
始めの屋根(2016)は、東京都の2階建て計量鉄骨造の住宅のすぐ脇に新しいスケールの屋根をかけた計画。母屋と離れをつなぐ外廊下の機能を持つ。細いものをつくるとき、普通はゆがみを修正し真っ直ぐにするが、その行為を不自然に感じた2人は、自重でたわむことを享受した設計をしている。
始めの屋根(2016)
「プロジェクト」の紹介よりも、「思考」の展示になるように試みている本展は、9つのプロジェクトを3つの枠組みを使って分解し、建物全体に散りばめている。
3階:Adaptation[適応] 場がうまく回りだす転換点の探求
窓や基礎、軒といった見過ごされがちな部分に着目した、作品のキーとなる部分模型を1/1から1/5までのスケールで展示。
4階:Attitude[姿勢] 場の診断から、最も重要な前提の発見
周辺を含む模型と、スケッチや図面が並ぶ。
1階、地下1階:Appearance[様相] 場に適応する建築と、その周辺への影響
同建物、セラトレーディング 東京ショールームには、写真家 永井杏奈氏による写真が並ぶ。設計過程や敷地模型・モックアップとは違う視点から作品を見られる。
本当に設計すべきことをどのように見出し、環境の中で定着させていくのか、彼らの探求の軌跡が見られる本展は、3月22日(日)まで。入場無料。
TOTO出版より刊行される『Adaptation 増田信吾+大坪克亘作品集』も要チェック。