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2026年7月21日火曜日

【牛窓オリーブ園】「木材を紡ぐ次世代コネクター」として活かされる岡山県のオリーブ残渣

2026年6月28日から7月2日にかけてスペイン・バルセロナで開かれる世界建築家連合(UIA)世界大会に、日本建築家協会(JIA)が食品廃棄物を建築材料として活用した茶室「カタラ庵」を出展した。会場となったバルセロナで議論される循環型社会と建築の関係に対し、岡山県瀬戸内市の牛窓オリーブ園で発生したオリーブ残渣を建築の接合部材へ転換する提案で応える。

世界120カ国以上の建築家や研究者らが集う同大会は、「Becoming. Architectures for a planet in transition(生成する建築―移行期の惑星のために)」をテーマに開催される。JIAは主要テーマの一つである「Becoming Circular(循環へ)」に呼応し、地域で生まれた食品由来の副産物を建築資源へと再編集した空間を展示する計画した。
カタラ庵で建築的な核となるのは、構造を支える小さなコネクターである。使用されるのは、日本オリーブがエキストラバージンオリーブオイルを搾油する過程で生じるオリーブ残渣だ。残渣は通常、食品生産の副産物として扱われるが、今回は樹脂を用いない「フードコンクリート」技術によって成形され、建築の接合部材として再生された。建築において接合部は、単に部材同士を結び付けるだけではなく、構造と形態の双方を決定づける重要な要素とされる。その部分に食品廃棄物由来の材料を採用した点に、このプロジェクトの問題提起がある。
展示建築は、素材の再利用にとどまらず、建築のライフサイクル全体を循環の中で捉えている。展示終了後には土へ還ることを前提としており、建築物を長期保存の対象としてのみ考える従来の発想から一歩踏み込み、自然の循環へ再び接続される存在として位置付けた。資源を採取し、製造し、使用し、廃棄するという直線的な流れではなく、建築そのものを循環系の一部として設計する試みといえる。

形態生成にも土地との関係性が組み込まれている。茶室を構成するジョイントの角度は、バルセロナの緯度である北緯41度を基準に設計されており、地中海性気候の日射や風環境に応答する構成が採用された。普遍的な建築を目指すのではなく、その場所の環境条件から形を導き出す考え方であり、地域固有性を重視する近年の建築潮流とも重なる。
さらに、建築の移動そのものも設計対象となった。茶室全体はスーツケース7個に収まる構成とされ、設計者自らが現地で組み立てる計画になっている。仮設建築でありながら輸送時の環境負荷低減まで視野に入れ、建てる行為だけでなく、運ぶことや解体することまで含めて建築として捉えている点が特徴的だ。

オリーブ残渣の採用には、開催地カタルーニャと牛窓を結ぶ地域的な共通性もある。カタルーニャ地方は古代ローマ時代から続くオリーブオイルの産地として知られ、日本オリーブもバルセロナ近郊と牛窓の双方で農園を運営している。こうした縁からJIAが協力を打診し、日本オリーブが長年研究してきた残渣活用の取り組みと大会テーマが結び付いた。
日本オリーブによると、オリーブ由来の副産物には建築との関わりを示唆する歴史的記録も残されている。古代ローマの博物学者プリニウスの『博物誌』には、オリーブの搾汁液が壁や床などに利用されていたとの記述があり、建築材料としての可能性は古くから存在していたとみられる。今回のプロジェクトは、その歴史的記憶を現代の材料技術によって読み替える試みとも位置付けられる。

設計を担当した三菱地所設計の藤貴彰氏は、オリーブ残渣について「成形しやすく、滑らかで美しい質感を持つ」と評価する。建築材料として求められる性能だけでなく、触覚や視覚に訴える素材性も備えているという。

カタラ庵は、廃棄物の再利用を訴える展示ではない。むしろ、建築が何を資源とみなし、どのような物質を社会の循環へ組み込むのかを問い直す提案といえる。これまで食品生産の残り物として扱われてきたオリーブ残渣は、今回は建築を成立させる接合部として新たな役割を与えられた。小さなコネクターに託されたのは、素材の再評価であると同時に、循環型社会における建築の新たなあり方を探る試みでもある。





牛窓オリーブ園
https://nippon-olive.info/


2026年6月5日金曜日

茶室《カタラ庵》を出展 : UIA 世界建築家大会2026 バルセロナ・JIA 展示ブース


日本建築家協会(JIA)は、2026年6月にスペイン・バルセロナにて開催される国際建築家連合(UIA)のWorld Congress of Architectsに、食料廃棄物による構造体を実現した茶室《カタラ庵》を出展する。

カタラ庵》は「World Food Waste Tea House」プロジェクトの一環として構想され、世界各地で生まれる食料廃棄物を建材へと変換し、その土地の環境や文化に応答する新たな茶室を創出する試みである。

三菱地所設計の藤貴彰氏らが、これまでに《ベネチ庵》(ヴェネチア・ビエンナーレ2023)、《アラビ庵》(ドバイ・デザインウィーク2023)を制作・発表し、国際的な評価を得ている。


茶室を制作するにあたり、各地の緯度に基づいてパーツの形態を決定するアルゴリズムを構築。建材をつなげるパーツには、食料廃棄物を加工したコンクリート並みの強度を持つフードコンクリート(写真1)を使用し、利用する廃棄物や環境によって異なる茶室が生まれる可能性を持ったプロジェクトである。

▲(写真1) 食品廃棄物を利用した、「フードコンクリート」

2023年に制作された《ベネチ庵》では、ヴェネチアの経度から導かれた形態とイタリアの食品廃棄物であるパスタなどを建築材料として活用した茶室を生み出した。建材はすべてスーツケースに収まるサイズとすることで、自主運搬・セルフビルドを可能とし、輸送時のCO₂削減にも寄与した、サスティナブルなデザインがなされている


今回の出展会場であるカタルーニャ地域はワインやオリーブオイルの生産で知られる一方、大量の有機廃棄物が日々生み出されている。《カタラ庵》(写真2)はオリーブ搾りかすやコルクといった地域の素材を建材として利用することで、有機廃棄物を、土地の記憶や産業の痕跡を宿した資源として捉え、新たな建築へと転化するプロジェクトである。

▲(写真2)カタラ庵 茶室全景

また、今回の《カタラ庵》の発表にあわせて、会場では循環型社会をテーマとした建築プロジェクトも展示予定である。

■展覧会詳細

展覧会名(英):Catal-An Tea House, JIA Exhibition at UIA World

        Congress of Architects 2026 Barcelona

展⽰⽇程:6 29 ⽇(⽉)〜7 2 ⽇(⽊)10001700 

     ※7 2 ⽇は1400 まで

展⽰会場:DHubDisseny Hub Barcelona

     B1FExhibition: UIA Member Sections

主催 :(公社)⽇本建築家協会 協⼒:藤貴彰(株式会社三菱地所設計)

協賛:⽇本オリーブ株式会社、⽇本化⼯機材株式会社、NORDIC STEAM 株式会社、株式会社三菱地所設計、寺岡オート・ドアシステム株式会社、株式会社松⽥平⽥設計、株式会社JR 東⽇本建築設計、株式会社ユニオン、郡リース株式会社、株式会社総合資格、⽇新⼯業株式会社、株式会社オクジュー、株式会社オカムラ、東リ株式会社、株式会社⼤建設計、株式会社安井建築設計事務所、株式会社東畑建築事務所(6 1 ⽇時点)

展覧会公式HP:https://uia2026bcn.org/


2025年6月11日水曜日

第15回関西建築家新人賞受賞者決定

公益社団法人 日本建築家協会近畿支部は、第15回関西建築家新人賞受賞者を決定・発表した。

■第15回関西建築家新人賞受賞者及び作品 

◯受賞者 

新森 雄大(にいもり ゆうだい)  一級建築士事務所 Niimori Jamison 

日本建築家協会(JIA)正会員  

作品名 「pedestals」 (休憩所兼ギャラリー)

関西建築家新人賞は近畿支部地域で活躍する45歳以下のJIA会員に対し、設計活動に携わる意欲に満ち溢れた建築家の育成と発掘のために設置された。

今回の募集は、近畿支部地域内に 2019年1月1日~2025年2月28日迄の間に建てられた建築1点を審査対象とし、その建築活動を行った建築家に対して与えられた。審査員は岸下真理氏(審査員長)、倉方俊輔氏(審査員)、田口雅一氏(審査員)の三名。

今回は8人から応募があり、書類審査(図面・写真による審査)及び現地審査を行った。

審査講評・新森氏略歴はこちら

2024年2月1日木曜日

2023 年度 JIA 日本建築大賞 JIA 優秀建築賞決定

 公益社団法人日本建築家協会は2023年度のJIA日本建築大賞およびJIA優秀建築賞の公開審査を1月31日に開催、各受賞作品を発表した。

JIA 日本建築大賞は山﨑健太郎:山﨑健太郎デザインワークショップ設計「52間の縁側」が受賞した。

52間の縁側(撮影:黒住直臣) 

「52間の縁側」は2023年グッドデザイン大賞に続いての受賞となる。

JIA 優秀建築賞は後藤邸(後藤武、後藤千恵:株式会社後藤武建築設計事務所)、春日台センターセンター(金野千恵:t e c o)、高槻城公園芸術文化劇場(江副敏史、多喜茂、高畑貴良志、差尾孝裕:株式会社日建設計)3作品が受賞した。



2018年9月14日金曜日

JIA建築家大会2018東京 槇文彦基調講演

2018年9月13日(木)~15日(土)公益財団法人日本建築家協会(JIA)は明治大学駿河台キャンパス、グランドハイアット東京、建築家会館にて「JIA建築家大会2018東京―素なることと多様な相」を開催中。


JIA建築家大会とは全国10支部の建築家が1年に1度一堂に会し、討議・研鑽・発信する場であり、本東京大会は11年ぶりになる。
今回、アジア21の国と地域の建築家による国際交流と情報発信の場として、ACAとForumを1年ごとに交互に開催するARCASIA(アジア建築家評議会)大会と同時に東京で開催する運びとなった。
JIAはこの同時開催する東京大会について「東京の地域性よりむしろ、建築家の職能やJIAの存在意義そのものを大きくテーマに掲げ、 これらを見直す絶好の機会にしたい」とした。


大会テーマ「素なることと多様な相」
・ARCASIA大会テーマ 「Simplicity | Multiplicity」の邦題
・単純な形や単位から多様な空間を構築していく現代的な設計手法
・限られた材料と技術で様々な用途や規模の建築を生む建築家の職能

この度は、13日(木)にあった基調講演2キーノートスピーカー槇文彦(槙総合計画事務所)「Multiplicity | City」を聴講した。


ヒルサイドテラス(1969~1998年)など自身の初期の作品から東京電機大学北千住キャンパス(2017年)などの最新作まで約14の作品を例に「低密度の優位性」を紹介した。

「文化的な活動とは無償の愛ではないか」とエッフェル塔を例に挙げ語り、「人間的なアプローチとは技術が発達しても人間は変わらないということ。人間の知恵を大切にしよう。」と締めくくり、会場は拍手喝采した。

また、大会期間中、展示会も多く開催されている。
アジアの幅広いひとびとが文化交流する様を見て、素晴らしい大会だと思わされた。

▲メイン会場2階「建築未来展」

▲メイン会場1階カントリーレポート展・ACGSA展・アルカジア学生コンペ展

本大会の詳細はこちらを参照のこと。