2018年5月30日水曜日

マルニ木工「MARUNI COLLECTION 2018 東京展」

東日本橋にあるマルニ木工にて、今年のミラノサローネ国際家具見本市で発表された新作の「MARUNI COLLECTION 2018 東京展」が開催された(5/28-29)。 同社は、1928年の創業以来、広島で「工芸の工業化」をモットーに木製家具を作り続けてきており、創業90周年、MARUNI COLLECTION 10周年を迎えた。そんな記念の年となる今回は、深澤直人氏デザインのRoundishアームチェアやジャスパー・モリソン氏デザインのFuguチェアなど、木製チェアの新作を中心とした様々なアイテムを発表。人気のT&Oシリーズには、バーテーブルやオーク材が新たに加わった。
<Roundish アームチェア/深澤直人氏>
背もたれ・肘・座面が一体となった形が特徴。一枚の積層合板をひねりながら三次元に曲げて、座る人を包み込むような快適な座り心地を実現。
<Fugu チェア・アームチェア/ジャスパー・モリソン氏>
クッションや張地なしで、最高に座り心地のよい木製椅子をデザインするという意図から生まれたもの。
<T&O ラウンドバーテーブル63・T3 バースツールHigh/ジャスパーモリソン氏>
その他、90周年を記念し全世界で限定90脚のみ販売する特別なHIROSHIMAアームチェアとT&O・T1チェア、ワイドタイプやシェーズロングタイプのHIROSHIMAソファなども展示。
会期終了後も新商品のいくつかはmaruni tokyoで見ることができる。「MARUNI COLLECTION 2018」については、今後、広島・大阪にても展示会を予定(詳細)。

2018年5月29日火曜日

建築倉庫「ル・コルビュジエ / チャンディガール展 ‐創造とコンテクスト‐」内覧会

建築倉庫ミュージアムでは2018年5月26日(土)から「ル・コルビュジエ / チャンディガール展 ‐創造とコンテクスト‐」を開催中。

寺田倉庫は保存・保管のプロフェッショナルとして、お客様にとって本当に価値のあるモノを大切にお預かりし、未来へ届ける「蔵」でありたいという考えのもと、2016年春に模型を『展示しながら保存する』新しい発想のミュージアムとして東京・天王洲アイルに「建築倉庫ミュージアム」をオープンした。
昨年末より更なる展示の充実化を図るために一時休館していたため、今回のル・コルビュジエ / チャンディガール展 ‐創造とコンテクスト‐」はリニューアルオープン初の企画展になる。

内覧会当日は特別鑑賞会と監修を担当した千葉学氏(建築家/東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授)によるオープニングレセプションが行われた。




千葉氏は寺田倉庫からギャラリーを一新するので企画をできないかと持ち掛けられ、今回の展覧会全体のアドバイザリーとして加わっている鈴木布美子氏からル・コルビュジエあるいはチャンディガールをやれないかという話をいただいたため、企画・構想はもともとあったという経緯を話す。

千葉氏は約10年前にチャンディガールへ行き、コルビュジエのインドでの建築に大変感銘を受けたそう。チャンディガールはコルビュジエの構想した都市全てが出来ているわけではないが、そこで彼が考えた事やあるいはそれがインドの町、社会でどう受け止められたのかという事を改めて考えたいと語る。

▲展示は模型やスケッチ、コルビュジエがしたためた文章もあり、様々なことが感じ取れる。

最近、建築家が都市について語ることが大変少なくなってきている。また今の時代に都市を0から構想することはほとんどリアリティがないことだがそれでも都市について考えを巡らすことは価値があるはずである。
今回の展示を通じて彼が一体何を当時考えていたのか、インドというその土地・文化に触れたことが彼にどんな影響を与えたのか、あるいは今の時代に改めて都市を計画するということにどんな価値や意味があるのかを考えるきっかけになると良いと思い企画をしたそう。

▲周辺環境を伴った議事堂の透視図
▲スタディスケッチや図面、表
▲インドの気候・風土を感じる写真家ホンマタカシ氏の写真・映像。
フロアはチャンディガール計画の図面をもとに模型が配置される。
▲ピエール・ジャンヌレによる家具とヒマラヤ山脈を背景にした計画全体の立面図



最後に、初めて見る資料も多く拝見し展覧会の企画を進めていくプロセスでも興味深い時間を過ごせた。今回この展示でいろんな形で協力いただいた皆さんに改めて深く感謝申し上げたい。監修の加藤氏はコルビュジエの専門家なので質問は彼に。僕も一緒に講義を受けたいと締めくくる。


また、建築倉庫ミュージアムは今回のリニューアルで展示室が2つになり、もうひとつの展示室では「建築倉庫ミュージアムが選ぶ30代建築家 –世代と社会 が生み出す建築的地層−」が同時開催中。



どちらの展示も7月16日(月・祝)まで。

「ル・コルビュジエ / チャンディガール展 ‐創造とコンテクスト‐」展では62日(土)にシンポジウム「ル・コルビュジエー都市への眼差しー」、630日(土)にギャラリートークが開催される。

詳細は以下を参照のこと。
建築倉庫ミュージアムURL:https://archi-depot.com/

中川エリカ建築設計事務所×OZONE「SHINJUKU PARK TOWER LOUNGE」内覧会


東京・西新宿にある住まいづくりの情報センター「リビングデザインセンターOZONE」の企画・設計を担当したビル勤務者向けの共用スペース『SHINJUKU PARK TOWER LOUNGE(新宿パークタワーラウンジ)』が201842日(月)にオープン。




内覧会当日は設計に携わった熊谷多生氏(リビングデザインセンターOZONE)と中川エリカ氏(中川エリカ建築設計事務所)によるプレゼンテーションが行われた。


SHINJUKU PARK TOWER LOUNGEは場所を作って終わりではなく、今後様々な展開を予定していると熊谷氏。
本スペースは、施設所在地であるビル「新宿パークタワー」の所有・運営を行う東京ガス都市開発株式会社からの問題点の解決が依頼の起点となった。

その問題点とは以下である。
① 8階に既にあるランチスペースの不足
ここは、平日は満席、休日は開放されず電気も付かない状態にもかかわらず利用者がいる現状。
② 11千人の勤務者満足度・ビル自体の付加価値の高上
③ トイレ渋滞の解消(設計:日建設計、施工:鹿島建設)

ここはかつてリビングデザインセンターOZONEこと東京ガスコミュニケーションズ株式会社のオフィス(天井が貼ってあり、タイル床のありふれたセミナールーム・会議室)であったが、都市型オフィスのパブリックスペースとして勤務者へ向けて開放されることになった。

中川氏は本ビルが1994年に竣工し、24年目になるが大規模な改修はなかったことにより、勤務者の勤務スタイルやニーズがずれていっているのではないかと感じたそう。そのズレを上手くチューニングしながら問題解決と都市型オフィスの新しい共用スペースの形を求めた。
問題であるランチ難民の解消としてのスペースだが、ランチ時以外の朝や日中、夕方の使われ方から解決を狙った。具体的には勤務者が自席以外で働くことのできるシェア空間、お客さんを連れてオープンな会議を行うこと、アフター5に友人と時間を過ごすなどの利用を視野に入れた。人数も滞在時間も不確定なオープンスペースに彼らが提案したのは「水平なパーティション」と呼ばれる異なる高さを持つ什器と低密に配した椅子である。これにより多様で多中心なワンルームが生まれた。

水平なパーティションとは本プログラムで生まれた造語である。普通、パーティションとは垂直に立っていて人と人を隔てたり、空間と空間を分けるために存在するが、今回は水平面を使って人々の距離をとれないか、異なった使い方が同時に行われ、空間を共有することが出来るのではないか、という挑戦が行われた。

また、低密な椅子の配置は集まる人の過ごし方によって自由に移動させやすく、空間に余白が生まれ、様々な利用が展開される。これは新たなイノベーションを呼ぶ仕組みになりうる。 
▲一般的な使われ方と本プロジェクトの比較

大きく資料を広げたり、1人で短時間の準備に利用したり、5人で打ち合わせをすることも、10人でコーヒーを片手に集まることも、ひとつの平面で行うことが出来る。これが500㎡という広さで展開していくと、都市の中で働いているという意識を持ちながらゆるいコミュニティが出来ていくことが期待される。


水平なパーティションは高さが3種類存在。カバンやコーヒーや軽食を傍に置いて広々と腰掛けることのできる430mmのものと、テーブルとして使うことのできる730mmのもの、立って使うことも、スツールに腰掛けながら使うこともできるハイカウンター1100mmのものが用意され、これらを組み合わせながら横断的に使うことを想定。
このアイデアは喫茶店での2人がけや4人がけの席を1人が荷物置きなどに使用し占有している場面を目の当たりにしたことから生まれた。200席用意しても全てが使われるような空間の実現のために水平なパーティションの考えに至ったのだ。

また、1人だったり2人だったり4人だったり、なんとなくここに集まると良さそうだと誘発するように足元のしつらえを全て変えている。ひとつとして同じものがなく、現場に入ってからも検査が続行し、手作りに近い作り方になった。押したり揺らしたりと強度など実際に確かめながら設計者、クライアントの皆で行ったと語る。

▲荷物置きがあるなど場所により表情が異なる
▲机の脚元は木もあれば、鉄骨もある
▲水平面の距離によって人々を緩やかに分節したり、繋げる
▲緑の周りにはゆったりくつろげるソファ席も
▲ホワイトボードになった壁面はオープンな会議の手助けをする
▲椅子はスツールや背もたれ付きなど組み合わせにより多様な居場所が生まれる




使用者が適度な距離感を選び取りながら思い思いに過ごせる様々なアクティビティを許容するシームレスなワンルームになったように思われる。外を望め、天気を感じられる空間で過ごすことは都市で働く中で価値になるのではないか。





 ●施設概要
施設名:SHINJUKU PARK TOWER LOUNGE(新宿パークタワーラウンジ)
所在地:東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー8階
    ※新宿パークタワービル勤務者のみ利用可能
面積:約530㎡
座席:約180席(最大200名程度)
利用用途:ランチスペース、リフレッシュ、簡易な打ち合わせ、Wi-Fi接続(非常時含む)など
運営:東京ガス都市開発株式会社
企画・設計:中川エリカ建築設計事務所
      リビングデザインセンターOZONE(運営:東京ガスコミュニケーションズ株式会社)


2018年5月25日金曜日

平田晃久展「Discovering New」内覧会

TOTOギャラリー・間では、建築家・平田晃久氏(平田晃久建築設計事務所)の個展「平田晃久展 Discovering New」を2018年5月24日(木)から開催中。





▲下のフロアは300以上の模型から構成される思考のジャングル

▲スケッチブック、模型を下から見上げるなど貴重な体験も



▲上のフロアにはシェルター社協力の3D加工技術を用いたインスタレーションが







内覧会当日は1時間半にわたって平田氏本人から趣旨説明と会場ツアーが行われた。

今回の展示に際して、5月下旬に平田晃久作品集「(仮)Discovering New」が発行される。書籍の発行にあたって3つの章立てを行ったと説明。
「Dicsovering New 」とは新しいを発見するという意味。その新しいとは1に形、2に自然、3にコミットメントが該当する。
1の形、2の自然とは、例えば自然界で花の周りに蝶が飛んでいる時、建築と違って空間を囲ったり閉じた領域を作っているわけではないのに、空間がふわふわと広がる。これを名付けられないか、きちんと扱えないかという構想の事。これは独立初期の考え方。3のコミットメントとは、建築の空間、自然の空間、人間がどう過ごしていくかを繋ぐという事。大きな公共プロジェクトに関わるようになって、このコミットメントという章が加わった。これは形、自然とは無関係であるが重要であり、直接は違うけども絡まりあっているもの。それを書籍とも関連させ、今回の展覧会で表現しようとしたそう。

会場は2フロアに渡って展開。下のフロアは室内と室外に構成されるが、今回平田氏は会場内外にまたがって軸を想定。この軸はそれぞれ書籍の3章に対応している。
書籍では、1つの章に4つのキーワードがある。会場ではそのキーワードを面として展開し、4つの面が1つの軸の周りに構成され、それぞれにブランチが絡まっている。その関係性の中で、似ていたり、影響を与え合っているものにより生まれる空間はまるで雲のよう。
▲中に入り込むことが出来る
幼い頃住んでいたニュータウンにある四角い団地が外で虫取りをしていた野山の空間と全く違うと感じ、その自然を建築でも作れないかと思ったのが建築を志したきっかけだそう。蝶が飛んでいる等の発想もその当時から思っていた事と繋がっていて、はっきり囲い取らないけどある領域が出来ている関係を建築にできないか。それが氏のコンセプトである「からまりしろ」である。からまりしろとは、絡まる余地、のりしろのしろを意味する。建築は空間を作る事だという考えが20世紀の建築だとしたら、もう少し自然に近い空間、絡まる余地を作る概念で建築を作る事が現在の建築になるのではないか。
下のフロアは概念のからまりしろというフレームワークを作り、その交差点に建築の模型を置いている。例えば「Tree-ness House」は今回の書籍・展示のテーマである1の形の「ひだ」と「階層」というキーワード、2の「自然の発酵/浸食」の交錯から生まれている。このように複数の概念がクロスするところにプロジェクトが生まれ、その交差点が数多ある状態を会場に再現。単体の作品というよりは300個以上の模型によって今まで考えてきたことの総体を提示すると同時に、見る人がそこに何か自分の中で考えることがあるか、今後そこに何か加えてもいいし、今まで考えられていなかった交差点があるかを想像してもいい。思考を喚起するような開かれたネットワークをそのまま展示空間にしたかったと語る。
▲下フロアの展示を読み解くのに大事な図 要チェックである

抽象度のある思考のジャングルに対し、
上のフロアは逆に体験を重視したリアルな空間。実際のマテリアルである木でできたインスタレーションは3Dカットという三次元でカッティングのできる株式会社シェルター社から提案され、今回の展示に至った。これは、ある台湾のコンペで2当であったブリッジの構造体をアレンジした木造のインストラクチャーで、技術の問題、マテリアリティーの問題、それを実証・体験する問題が絡まるようにタブレットがぶら下がり、動画が見られる展示になっている。展示室奥、大きな壁面に映し出される動画では実際に「太田市美術館・図書館」、「Tree-ness House」に行ったような体験ができる。
▲約20分間の動画は写真家市川靖史による撮りおろし。
ゴールデンウィークのある一日、市民の方が実際に利用する姿が映し出される。
これまで、先鋭的な建築を設計する事に関心があったが最近は、建築なのか建築でなくなるのかのぎりぎりの地点、あるいはどこまで他所を受け入れたら自分が自分でなくなるのかといった、どこまで自分の個性を高められるかではなく、どこまで浸食されても自分が消えてなくならないのかという事に関心があるそう。それが漂う空間になっているのを感じてもらえればいいと語る。

最後に、あらゆる種類の人が作るという事に関わっていく時代だが、強い軸、個性を持った建築家という非常に特殊な存在が周りを吸着しながらどうやって建築を作っていけるのか、表現出来るのかがこれからのカギになるのではないかと締めくくった。


過去約10年間に取り組んだ国内外の建築活動と進行中のプロジェクトを、平田氏の建築哲学と世界観を体感できる本展示は2018年7月15日(日)まで。
同年5月31日(木)には平田氏本人のよる講演会がイイノホール(東京都千代田区内幸町2-1-1飯野ビルディング4F)にて行われる。




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展覧会情報

展覧会名(): 平田晃久展 Discovering New 
展覧会名():Akihisa HIRATADiscovering New
会期:2018524日(木)~715日(日)
開館時間:11:0018:00
休館日:月曜
入場料:無料
会場 :TOTOギャラリー・間
107-0062 東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
TEL03-3402-1010 URLhttps://jp.toto.com/gallerma 
交通案内東京メトロ千代田線 乃木坂駅3番出口徒歩1
     都営地下鉄大江戸線 六本木駅8番出口徒歩6
     東京メトロ日比谷線 六本木駅4a番出口徒歩7
     東京メトロ銀座線・半蔵門線・都営地下鉄大江戸線 青山一丁目駅4番出口徒歩7 
主催:TOTO ギャラリー・間
企画: TOTOギャラリー・間運営委員会
特別顧問:安藤忠雄 委員:妹島和世/千葉 学/塚本由晴/エルウィン・ビライ 
後援:一般社団法人 東京建築士会
   一般社団法人 東京都建築士事務所協会
   公益社団法人 日本建築家協会関東甲信越支部
   一般社団法人 日本建築学会関東支部
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