代表作の一つ「岡田邸」はO邸で発表していたが今回施主の名前が初めて公表された |
人間・時間・空間それぞれの間合いという、日本特有の概念を表象する「間」の一字を名称とした「TOTOギャラリー・間(ま)」は、社会貢献活動の一環としてTOTOが運営する、建築とデザインの専門ギャラリー。
内覧会当日は中山氏から20分間の趣旨説明が行われた後、実際に展示を見て回る20分間の会場ツアーが行われた。
本展ではギャラリー全体がミニシアターとなり、中山氏ではない6人の監督が今回のために撮り下ろした短編映画6作品を上映。(5作品の予定が急遽1本追加されたのは展覧会開催前日だそう)
ロビーに見立てた展示室には、映画のメイキングや、撮影された建築を紹介するためのドローイング、模型などが置かれている。
4階で6本の映画が上映される |
3階ロビーにあるタイムテーブル 全6作品観るには1時間かかる |
中山氏は1972年生まれで2000年に東京藝術大学大学院を修了しているが、学生でない空白の時間を数年過ごしている。
「通知表に1と2が並ぶような高校生で、ほとんど映画を見たことがない、本も読まない、好きな音楽もない、美術になんて全く興味がなかった。とある建築のギャラリーであったザハ・ハディドの展覧会で建築と出会い、色々な文化に興味を持つようになった。建築を知ることは世界が一つ始まることだった」とバックボーンを語り、「手を動かすのは早くない。そんな高校時代を過ごしたせいもあり作品は少ない」と話す氏は本展を開催するのが「怖かった」と胸の内を明かす。
「どんな展示にするのかを考えたとき、自分の世界観だけを展示し思想を伝える形は僕たちには早すぎる。僕が影響を受けた周りの出来事や文化を伝え、これから建築を学ぶ学生や建築の実務を行う者、建築を愛す方、建築に興味がない方が、ここで映画を見たり本を読んだりすることでどこか響くような場所づくりをしたい」という。
また、「ギャラリー・間のギャラリーをシネにするとシネ・間(シネマ)になるダジャレを思いついた」とし映画館にするコンセプトを膨らませていった。
本展は4階で上映される映画がメインになるが、ここでは3階ロビーに展示される模型中心に紹介する。
「岡田邸」(2009)
当時3人だった家族のための住宅。
今は5人が暮らしていて想定していなかった設計のため「カオス」な使われ方をしている。
映像にはその様子が隠されることなく映っている。
「2004」(2006)
氏の最初のプロジェクト。
施主が変わり、建築のそれからの時間「, and then」を撮影することができないため展示のリストから外れていたが、約10年前の卒業制作の展覧会で出会ったアーティストの協力のもとアニメーションとスライドショーによって映像化された。
「弦と弧」(2017)
2階建ての大きさに、かたちがばらばらな10層の平面が重なった住居件仕事場。
「映画全作品が4:3の画面で見ているのは退屈してしまうし、空間体験として建築家が参加するには」とリコーとの共同でカメラを開発。上下するカメラが朝から晩までを記録している。
「家と道」(2013)
未発表だった作品で、本展初公開。
映像は4台のカメラを同時に撮影している。映像は1台ずつ再生され、4回繰り返される。最後に4台同時に再生されるとき、音楽が1台ずつ違うことが分かる。4重奏となる設計。
「mitosaya 薬草園蒸留所」(2018)
人の来なくなってしまった薬草園を、果物と薬草を使った蒸留所に生まれ変わらせる計画。施主が頭につけたGoProで一人称目線でものを作る様子を伝える。
「かみのいし」
4階を映画館、3階をロビーにしたときテラスをどうするか。
氏は、もともとこの場所にあったおおきな岩へのオマージュとして石をつくることを思いつき、以前砂山太一氏との共同プロジェクトであった「かみのいし」の展開図を拡大出力し「きのいし」を置くことになった。
4階と3階を繋ぐプロジェクトとして映像を作成し、開催前日に急遽映画に加わった。
会場構成は「線形ではなくランダムで、ちょっとした思い付きから始まるエキシビジョンを許容できる余白をもった」中山事務所の設計プロセスと同じように考えられている。それは時間軸でも建築の機能でグループ分けされたわけでもない。「どこに何をおいてもいい」というフォーマットだけ決めたという。