2011年12月28日水曜日

東京あちこち建築中あれこれ

師走の東京、建設中の建物をあちこちで目にする。

中央区京橋2《清水建設新本社屋》2012年春竣工予定。地上22階+地下3階、特徴的なファサードはハイブリッド外装システム(参考:清水建設2011.1.25 ニュースリリース)。

渋谷駅東口東急文化会館跡地に建つ《渋谷ヒカリエ》は2012年4月26 日開業予定(こないだ「ブラタモリ」で「此処が一番渋谷で深い谷底」と吹き抜け空間が紹介されてたように記憶している)。設計:日建設計・東急設計コンサルタント共同企業体

神宮前交差点、GAP原宿店跡地に建設中の《(仮称)表参道プロジェクト》。既出のイメージ図の通り、屋上に植える樹木の枝葉が幌の上に覗いて見える。(設計:竹中工務店、NAP建築設計事務所)。2012年春オープン予定。

村野藤吾設計の京橋三丁目ビルディング跡地および片倉ビル(片倉工業旧本社屋)跡地で進行中の《(仮称)京橋3-1プロジェクト》。こちらは未だ先の2013年春竣工予定。地上24階+地下4階。日建設計・日本設計JV、清水建設・大成建設JVほか。
来年も新しい建物やイベントに数多く出逢えることを希望し、2011年の仕事納め。

2011年12月27日火曜日

清水建設東京木工場見学ツアー レポート

江戸時代より木材問屋が軒を連ねた東京都江東区・木場にある清水建設東京木工場。今回チーム・ティンバライズの主催により、同木工場の見学ツアーが開催された。
清水建設は1803年の開業から今年で創業217年をむかえる。東京木工場は清水組切組場として1884年に開設され、今年で127年目。越中富山の大工だった創業者・清水喜助のルーツを残そうという方針から大手ゼネコン5社の中で唯一木を扱う部門を持ち、宮大工の頃から培われてきた木工技術を大切に、常に技術革新を続けている。

現在は東京木工場のみで使用されている、マル喜のロゴマーク。(参考リンク:「清水建設の歴史」)



 


木工場は2400坪という広さで、設計・製作・施工・メンテナンスまでを一貫して行っている。その他、加工時に機械から出た微塵を再利用したバイオマス(カーボンエネルギー)の研究も進行中。発電量は1kgあたり1kwで、木工場で使用される電力の10%程を補っているという。オフィスで出されるシュレッダーの紙ゴミを再利用する研究も進んでいる。以下、同木工場が誇る主な技術を紹介したい。


■単板検収
単板とは厚さ0.21.5mmという薄さで紙状にスライスされた木材のこと。11枚検査・選別された単板は、ベニヤ板等の台板へと貼り付けられる。図面通りかつ木目に違和感が無いよう仕上げるため、単板が何枚必要かを正確に計算し、木目と単板の両端が可能な限りまっすぐ平行になるようカットするには熟練された技が必要。
稀少木材の単板も保存されている。

■練り付け
台板へ検収された単板を貼り付ける作業を「練り付け」という。同木工場にはさまざまな材種の単板が保管されているが、癖やプレス後の伸縮の程度は材種によって異なる。各単板の特徴を見極め、伸縮率を計算に入れた上で単板を配置していく技術が必要である。曲がった木ほど枚数が増えるそう。

写真左では、合計10枚の単板が練り付けされている。天然木目の変化は、写真右のように斜めになるのがポイント。プリントではこうならない。(写真右はブラジリアンローズウッドの単板練り付け)


■木取・加工
木取とは丸太等を使用目的に適した大きさに製材すること。木目や材質を合わせなければならないため、豊富な知識と長年の勘が不可欠だ。図面通りの形を造るためには、使用する刃物の形状から整える必要がある。数百種類も保管されている刃物の中から、図面の曲線に最も近い形状を選りぬき、仕上がりをイメージしながらグラインダーで研ぎあげていく。

複雑な形をした刃。刃物屋に依頼せず、全て自社で整えている。


■造作
造作の基本的組立方法はあるが、造るものにより毎回形や材質が異なるため、その都度最適な仕口や加工方法が考案されている。丁寧さに加え納期に間に合わせることも勿論重要で、「キレイかつ早く」がモットー。全国技能グランプリや技能五輪で何度も優勝・入賞しており、その技術は世間に広く認められている。


多数の単板の種類と共に、木工技術についての展示もされている。工場の1階では「stream DEW 2011 清水建設 建築作品展」が開催されていた(20111215日~21日)


近年無垢材の人気が上がっているが、良い木を入手することが困難な場合も。無垢材ではなく、単板だからこその良さもあると、同木工場・田中氏は語った。
歌舞伎座の改修工事伊勢神宮の神楽殿でも、匠の技は存分に振るわれている。見学を終え、チーム・ティンバライズ理事長である腰原氏は、どのように木が使えるようになるのかを設計者がまず知り、設計者側から提案出来たらいい。また造り手と設計者が競い合いながら、一緒に新しいものをつくって行きたい、と語った。

2011年12月25日日曜日

エスパス ルイ・ヴィトン東京にて「GEOMETRY OF LIGHT」最終日

原宿のエスパス ルイ・ヴィトン東京へ。アリソン・ショッツによるエキシビション「GEOMETRY OF LIGHT」は評判通りの素晴らしさだった。

展覧会タイトルでもあるインスタレーション作品「Geometry of Light」は、何本ものステンレスワイヤーが手前上方から奥へと緩やかな曲線を描いてたれ下がり、ワイヤー1本1本に透明なアクリルのフレンネルレンズが面をこちら側に向けて数珠のように繋がっている。

側面を見るとそれがよく判るが、会場に一歩、足を踏み入れると、ボコボコした水の塊というか、樹氷がぐわっと奥から迫り上がってくる感じ。レンズの集まりだと頭で解っていても、ものすごいボリュームがある。

「陽があるとないとで全然違う」と会場スタッフの方が仰るので、1時間後に舞い戻る。確かに、太陽が雲に隠れたり出てきたり、刻々と表情を変え、見飽きない。夕暮れ時には部屋全体がオレンジ色に染まってそれは美しいとのこと。

Alyson Shotz :「拡大した世界観のようなもの、より辛抱強い見方、より長く、よりつぶさに物事の変化を見てとる能力、ある時点での光の変化に気付く能力、あるいは自分自身の世界について別の捉え方をする能力―—そういったものを得ていただければと思います」(展覧会パンフレットより転載。「作品を見終わった後、人々に何を得てもらいたいですか?」というインタビュア(Philippe Vergne氏)の問いに答えて)

会期は本日20時まで。
参考:YouTube にメイキング映像あり。

2011年12月16日金曜日

PeclersParis×谷尻誠「You Make The Rule 再描写を試みる家展」始まる

西新宿のリビングデザインセンターOZONEで「PeclersParis × MAKOTO TANIJIRI You Make The Rule 再描写を試みる家展」始まる。3F OZONEプラザに発砲スチロールによる「家」が出現。

以下、チラシより転載。
「家を模した大きな白い塊から「YOU MAKE THE RULE」の視点で人の居場所を作り出します。外に向かって掘れば窓に、窪みをつければ椅子に、ペンを差したらペン立てに、掘って水を溜めれば風呂に―行為によって名前が決まる、完成のない空間と生活のシーンを展示します。」

先ずはぐるっと時計まわりに巡ってみる。

発砲スチロールの総量は143立米。煉瓦を模した一部外壁の模様や、窓などの開口部はスコップによる手掘り。掘ることで形が変わり続ける状況=完成されない、自由に場所が生まれる素材ということで選ばれた"建材"である。手前のテーブルの脚をよく見ると、これも発砲スチロール製。

靴を脱いで2階に上がれる。上階はどうなっているのかというと、

屋上にSATIS/LIXILが! 未来にはこんな場所もアリだろうと、ネーミングは「排出するところ」、広さは6平米。

工業用接着剤で施工されているとのこと、果たして何人乗ってもダイジョウブなんだろうか?
技術協力(構造):東京藝術大学 金田充弘研究室。

階段前、左側の壁にスコップがめり込んでいる(でも、ところどころに「ほじらないでください」と注意書きが)。

靴をぬいで、お邪魔します。靴下の裏が床暖房しているみたいに暖かかった。

バスタブはJAXSON製。ほか、ウエスト、グローエジャパン、スタジオノイ、東リ、日本フロス、平田タイル、リラインス、リンナイなど協力会社多数。

この開口部もスコップでほじったのかと思いながら、背を屈めて中に入る。白い"かまくら"のような空間が、壁・床・天井で仕切られ、無意識のうちに空間を意識してしまうのを避け、空間の境界を曖昧にさせている、とのこと(OZONE担当Kさん談)。

101号室:LDK(7.2平米)。テーブルの上に2つ並んだ白いプレートはTONERICOの「CELL PLATE」。野菜が吊られ、照明器具は(キャンベル)スープ缶のデザイン。非現実感と規制概念を壊す演出効果を狙っている。

4.5平米の103号室:寝室。寝転がったら、髪の毛に発泡スチロールの小さい塊が付着したのに気付かず、暫く会場を徘徊したので注意(親切なU氏に取って貰う)。

「外に向かって掘れば窓に」、そして「本を差したら本棚に」ということか。
果物はシャンデリアの見立て。

102号室:スタディの部屋の壁。「ペンを差したらペン立てに」。

見上げたところにペンギン。

上階の「高いところ」からの見下ろし。

後で会場スタッフに「建物内の空間スケールは実際の80%程度に抑えている」と聞き、ナットク! 「模型やドールハウスの中に入り込んだ様な体験をして貰おうと、家具や雑貨も出来る限りそのスケールに合わせ、あたかも夢の中のような世界観を連想させるようなものを選んだ」とのこと。

本展は、世界的なトレンド発信会社PeclersParis(ぺクレール・パリ)と谷尻事務所とのコラボレーション。「再描写」をキーワードに、氏の視点で「家」を再構築、"新しい住宅の価値"とは何かを考える。テーマ[You Make The Rule]は、ものから名前をなくすことで、従来とは違う視点から"住まい"を見つめ直す、という意。

会期は来年1/31(火)まで、入場無料。イベントも各種予定。
明後日12/18(日)の谷尻氏ほか出席のトークは既にキャンセル待ち状態。要事前申込、聴講無料。

2011年12月13日火曜日

「第11回関西建築家大賞」表彰&鼎談トークイベント~JIAデザイントーク2011特別編~

「第11回関西建築家大賞」の表彰式と受賞記念イベント・鼎談トークイベントがJIAデザイントーク2011特別編として、大阪市中央公会堂3F小集会室にて行われた。(2011.12.7)
今回の審査建築家である香山壽夫氏を招き、進行役には無有建築工房・竹原義二氏を迎え、矢田朝士氏が受賞作品「ES house-01/02」の紹介し、審査の上での話や考えられたことを語り合ったトークセッションであった。



タカトタマガミデザイン《N邸》オープンハウス

都内にて、タカトタマガミデザインによる《N邸》オープンハウスへ(12/9開催)。お施主さんのご厚意により、夜19時まで見学できた。

RC造、地下1F+地上3F。以下、現地配布物より転載。
「広く奥行きのある敷地に中庭をコの字型に囲うように建つ二世帯住居。延床面積約180坪もの広さがあり、ホームシアターを楽しむことができる天井高さ4mのスタジオを内包。ファサードの一部を少しだけ持ち上げることで中庭の通風を確保し、街に対し閉じすぎない表情をもたせた」



母屋「Aハウス」1Fホールからの見上げ。
ペンダント、階段壁の四角い照明はModular社(ベルギー)のもの。



駐車場の上、2Fとの間の空間には「中層庭」が設けられている。

2F廊下。背の高いドアの表面は、ウレタン全艶塗装。ピアノ鏡面仕上げに近いピカピカの黒いドアが、漆喰半磨きの内壁と、白いカーペットに対してシャープなアクセントになっている。

2Fの個室。

映画や音楽を楽しめるスタジオは遮音もバッチリ(大型遮光スクリーンが床からせり上がってきたのには驚いた)。手前の1室(書斎)から額縁窓に切り取られた眺めも贅沢。

2F水まわり。水栓金具にもこだわりがうかがえる。

3Fリビング+ダイニング。広いルーフバルコニーが2つ設けられ、そこからの眺めが共に素晴らしかった。


ペンダント照明はLuminabella社のブランド:Catellani&Smithの「Fil de Fer pendant」。

反対側のキッチンからも望める贅沢な眺望。

黒いSATIS(10周年記念モデル)が使われているのを初めてみた。おおっ。

1Fまで降り、敷地の奥、中庭に面した「Bハウス」。都心の邸宅、冒険気分で全て見終えた頃にはすっかり日がおちて。

外壁は白セメントのサンゴ砂洗い出し、Aハウス内壁の漆喰の半磨きと共に、西澤工業(株)のオリジナル仕上げ。

設計・監理:タカトタマガミデザイン 玉上貴人、構造設計:(有)エスフォルム一級建築士事務所、施工:(株)佐藤秀