(株)ナカダイの本社オフィス兼マテリアルストア「モノ:ファクトリー品川ショールーム」が11/1にオープン、このほど見学会が開催された。
同社は昭和31年設立の廃棄処理の専門業者。前橋にある自社工場には、使用を終えたモノ、販売ラインから外れたモノ、解体作業中に生じた廃棄物などが、業種を問わず、大量に持ち込まれる。例えば、廃番になった浴室ユニットの壁パネル、家電メーカーのブラウン管、自動車のエアバッグやシートベルト、食品メーカーで使っていた食塩水のガラス瓶・・・等々。前橋工場ではこれらを厳正に選別し、マテリアルとしてストックしている。
「使い方を創造し、捨て方をデザインする」をコンセプトに、同社が2010年に立ち上げた「
モノ:ファクトリー」では、廃棄物の新たな可能性を見出そうとする様々なプロジェクトやイベントを開催しており、これらの活動が評価され、2013年度グッドデザイン賞・未来づくりデザイン賞を受賞、ベスト100にも選出された。
「
モノ:ファクトリー」
では廃棄物の処理や中古品のリユースはもちろん、企業の廃棄コンサルティングも行なっている。実際のマテリアルを見ながら打合せをした
り、また一般の人々が自由に見学・売り買いできる場として、青物横丁の本社オフィスとビルのエントランス部分をリノベーション、都内に念願の自社ショー
ルームをオープンした。設計管理は吉岡寛之氏が代表を務める
一級建築士事務所iroirotoridori(イロイロトリドリ)、施工は(株)美利。
ビルの築年数は25年、壁はクロス、床にはPタイルが貼られたごく平凡なオフィスだった。仕上げ材を剥がした跡はあえて残し、床は防塵塗装を施した。天井は鏡面仕上げのステンレス(ホリゾント天井)。手前から奥にわたした桟は、空調機器などの目隠しでもあるが、マテリアルを吊り下げて展示することも視野に入れたもの。
注/上記オープン前の画像2点提供:一級建築士事務所iroirotoridori
什器は強度のある2×材(ツーバイ材)を加工したもので、マテリアルの加重に耐えられる構造とした。中に収めた四角い升は、入れるモノの大小にあわせて入れ替えできる。単価販売のものを除き、マテリアルは素材に応じた量り売り(マテリアル・バイキング)。
元は廃棄物と聞くと、先入観でマイナスなイメージを抱きがちだが、百聞は一見にしかり、こちらのショールームを訪れれば、そんな既成概念は吹き飛ぶに違いない。150種類以上のマテリアルが、どのような理由で廃棄せざるをえなかったのか、吉岡さんや
ナカダイのスタッフに教わりながら見ていくと、現在の生産・物流システムの裏側が垣間見えてきて、とても勉強になる。例えば、フロア中央にどんと据え置かれた信号機は、LED切り替え前の電球式。コンセントで点灯できるので、例えばカフェなどのインテリアに転用できそう。
フロア奥は「
モノ:ファクトリー」のオフィス・エリア。椅子は廃棄されたパイプ椅子を社員が再利用したもので、座と背に車のエアバッグを張った。
テーブルの天板はガラスで、中には廃棄物とは思えないマテリアルや、それらを使ったアクセサリーや小物類を展示している。
『月刊廃棄物』などが収まったマガジンラックは、ツーバイ材に廃棄されたキーボードパネルをあわせたもの。
画像・右奥に見えているのは、LANケーブルの生産過程で生じる廃棄物をもとに制作されたアート作品「BLOCK TOWER」(製作者:中里洋介)。
参考リンク:弊ブログ・TDW2010レポート
下の画像・画面左に積まれているのは、オフィスでよく使われている五本脚のチェアの脚の部分。某大学建築デザイン系の教授が「これでドームを作ってみたい」と興味深々に手に取っていた。
第一京浜に面した窓側には、発泡スチロールのリサイクル過程でできる角棒状のインゴットを積み上げてベンチにした、休憩・打合せスペースが設けられている。
「リユース品を展示する空間を構成する材として、新しいものも古いものも区別なく、等しいバランスで扱おうと思った。モノ:ファクトリーは“捨てる”と“使う”の間でバッファー的な役目を果たしている。前橋工場を一度でも見学するとよく解るが、とても丁寧で精度の高い手仕事に支えられた
ナカダイの企業理念や活動がダイレクトに伝わるような空間になるよう心掛けた」とイロイロトリドリ代表を務める吉岡寛之氏。
ショールームオープンにあわせて改装したビルのエントランスは、改装前から子供向けワークショップの場などに使ってきたが、今回新たに、通りからビルの玄関まで続く、庇付きの長いベンチを設けた。「人と人、企業と企業、地域社会とをつなげる場になれば」という願いが込められている。
「
モノ:ファクトリー品川ショールーム」は、京急線青物横丁駅より徒歩1分。営業は月曜から金曜日の 11:00~19:00(土曜の営業日は要問合せ)。詳細は同社の
ホーム―ページを参照。