2013年6月27日木曜日

伊東建築塾 恵比寿スタジオオープン

建築家・伊東豊雄氏が建築を志す若者や子供たちにむけて開催している「伊東建築塾」の新しいスタジオが恵比寿にオープンした。(2013.6.21)

伊東氏は「今まで神谷町で森ビルの好意で場所を借りて伊東建築塾を開催したが、子供たちが良い雰囲気で集まって来てくれたので、暖かい雰囲気のところで子供と一緒に建築を考えたくなり、シルバーハットの跡地を売却しここを購入し、このような形になった。」と述べた。
建坪は40坪程。テラス部分まで開放すると100名ほどが入れる空間になる。

壁に使用されている煉瓦は蓄熱性・調湿性があり、冷暖房を殆ど使用しなくても大丈夫なように自然エネルギーを活用する。
建物地下には空気ピットを設け、一年を通して空気の温度を一定に保つ。空気は屋根近くの窓下から二重の煉瓦壁を通して地下空気ピットとつながる。夏は建物地下に設けられたピットで冷やされた空気を床から吹き出し、屋根近くの窓を開き、下から上への空気の道を作る。併せてテラス部分の壁からドライミストを噴出し、壁を冷やし、気化熱で室内の温度を下げる。
冬は天井部分に溜まった温かい空気を屋根・壁を通して床下に吸い戻し建物全体を暖める。
天窓下の隙間から空気を吸い込む。
中央に見えるのが吸気ダクト

伊東建築塾 恵比寿スタジオ建設にあたり、多くの企業から協賛・協力を受けた。
協賛・協力企業は下記の通り。
協賛
LIXIL(レンガ・アルミサッシ・キッチン・衛生器具・水栓金具・太陽光発電システム・囲炉裏テーブル・プランター)
田島ルーフィング(アスファルトルーフィング)
四国化成工業(珪藻土左官)
原田産業(床空調吹出口)
環境エンジニアリング(ミストノズル・配管)
協力
コイズミ照明(照明計画・照明器具)
ニュースト(木格子引き戸)
東京ガス(ガス暖房・温水ラジエーター)
四倉製瓦工業所(屋根天然スレート)
イノウエインダストリィズ(1F本棚)
安東陽子デザイン(カーテン)

レセプションパーティーでは伊東氏のローマ字(ITO)をデザインした特製のパイが用意され、来場者に饗された。


2013年6月17日月曜日

マテリアライジング展 / 情報と物質とそのあいだ / 23名の建築家・アーティストによる思索

東京藝術大学で6月7日(金)の夕方、マテリアライジング展プレスカンファレンス及び内覧会が開催された。
「本展は、最先端のデジタル技術や造形技術を積極的に使っている/開催している建築家・アーティストを集め、作品としてのアウトプットだけでなく、その背後にある設計プロセスや技術にまで焦点を当てる。情報だけでもなく、物質だけでもない、そのあいだを展示することで、新しい創造性の価値観を示すことを目的としている。」(以上、リリース文章より)
出展した23組の作家プロフィールや詳細は公式サイトを参照。


会場は東京藝術大学大学美術館陳列館。
会場構成は西澤徹夫氏が監修。今回の展示は、作品単体だけでなく加工技術やソフトウェアなどのプロセスも同時に展示するため、PCやデジタルフォトフレームなどが大量に出てくる。その電気コードの配線がデザインの鍵となり、箱で隠すよりも積極的にデザインの一部として見せていくことでマテリアライジング展のコンセプト(背後の仕組みを見せる)にも合致すると考えた。ケーブル線は電気を通す役割だけでなく立ち入り禁止の柵としても使われ、複数の作品同士を囲いながら会場を区切って動線を確保する役割も担っている。また、作品をただ並べるだけでなく、喧嘩しあったり見合ったりする並べ方にこだわり、色々な角度から作品を見て、その奥にまた作品がある風景を楽しんでもらうことを意図した構成になっている。

一階会場。

二階会場。


 15.『線入力三次元ボロノイ図形による構造体のスタディ』noiz architects

「一般的な点入力による三次元ボロノイパターンの発展形として、三次元の曲線や曲面を入力要素とした発展的な三次元ボロノイ図形の生成プログラムを作成し た。これにより複雑な幾何学形態の生成でこれまで一般的だった数式による入力とは異なる、より直接的かつ直観的な複雑幾何形体を、どういう要素、構成に落 とし込んで物理的に再構成するか、そこにどういった情報や効果を組み込むことができるのか色々と実験をしている。CADデータの段階ではスケールや素材感 などを持つ必然性がない構造でも、物質化をする段階では求める効果や表現の可能性に応じ、絶対的なスケールや素材感、光の透過性、その他多くの属性の組み 合わせが、圧倒的に絶妙かつ大きな力を持つようになる。体験する人との関係性において、展示する大きさや場所、高さなどによる違いと共に、ごくローカルな スケールから中間的、グローバルなスケールまで、さまざまな階層の要素の組み合わせによる効果の違いが与える影響を、この機会に大きなスケールでのアウト プットで試してみたいと思った。」(以上、会場配布物より全文転載)



そのほかの出展者(掲載順は配布資料の通番に準じる)

1.『日々の記録』谷口暁彦 2.『Epoch I』Studio_01+Yakul 3.後藤一真+天野裕(Arup)4.『アダプティブな軽量膜屋根』増渕基 5.『Equilibrium Shelf 』Source Organization Network 6.『ORI-CON』N&R Foldings + Heavy Back Pack 7.『NYC Neural Cartography Project-脳波解析から見た建築-』Proxy Design Studio 8.『knitting paper module<アミガミ>』岩岡幸太郎9. 『デジタルグロテスク』Michael Hansmeyer + Benjamim Dillenger 10.『Red Venation Fence-小石川植物園のフェンス(2011-)』美濃部幸郎(美濃部幸郎アトリエ)11.『Neuro fabrics:ニューロ・ファブリクス』Ans Sutudio 12.『Digitized Grain』吉田博則 13.『PU』kwwek 14.『she』『彼女』[gh/e] 16.『七宝紋胎乾漆透器(しっぽうもんたい・かんしつ・とうき)』 17.『TG_Kit』慶應義塾大学 SFC 松川昌平研究室18.『なごの原の家』doubleNegatives Architecture 19.『フリーフォーム・オリガミ』舘知宏20.『泉』中村竜治21.『Ne キャスト ‐ experimental materializations + α』藤木淳 22.『Super Tensegrities』三木優彰 23.『Trepak 〈くるみ割り人形〉 / Trepak 〈The Nutcraker〉』今井紫緒


プレスカンファレンスに出席した作家。



本展示は6月23日(日)まで。

関連イベント・作家プロフィールなど詳細については
公式サイトを参照。


2013年6月14日金曜日

国士舘大学南研究室「New Plat 2013」展

神保町の南洋堂書店4Fのギャラリーにて開催中の国士舘大学南研究室プロジェクト展「ニュー・プラット 2013 -東京・築地再生計画案-」へ。
本展は、豊洲への市場移転が決定している築地市場跡地を敷地とし、都市再生のための新しいプラットフォームとなる施設計画の提案。
敷地全体に水路を張り巡らせ、船で移動することを基本とし、歩行者専用の広い空間を生み出している。また5つのシンボリックなタワーやルーフテラスの広場空間、3Dファームと名付けられた農園を立体的に積み上げた3次元農場など、次世代の空間のあり方を模型やスケッチなどで展示している。
展示は6/22までで、会期中はほぼ研究室のメンバーが常駐しプロジェクトの説明も聞くことができる。
 また2冊目となる研究室本「presents #2」も発行。2010~13年までの研究室の活動内容が記載されているもので、南洋堂書店で購入もできる。

2013年6月7日金曜日

BAMBOO EXPO 4

日の出にあるTABLOIDにて明日まで開催の「BAMBOO EXPO 4」へ。2011年11月にスタートした商空間づくりに関わるサービスや製品を集めた展示会形式のイベント。 
出展企業の一部を紹介。

Magis Japan
4月に開催されたミラノ・サローネにも展示された国内未発表の新作の展示もあり。Magisでははじめてのソファコレクション「Traffic」は細いスチールとクッションを組みわせたシンプルなつくりのソファ。
アベルコ
タイルブランドMaristoより、トレンドの天然木や天然石をリアルに表現したタイル、アクセントとなる煌びやかなガラスモザイク、焼き物らしい味わい深い新作の商品を展示。
アスプルンド
ガーデンファニチャーのトップブランドであるイタリアの「emu」 をはじめ、伝統的な籐家具をモチーフとし屋外仕様にした新作の「deja vu」、その他世界中から集めた屋外家具を展示。
松尾貿易商会
商業施設や公共施設で使われる大サイズのデザインプランターの他、あわせてコーディネートできる屋外で使用できるベンチ、スツールなども。
日の出工芸
展示されている業界初の編むデザイン壁「Dimple Knit」は近日発売予定。
KAMISM
和の感覚にとらわれないさまざまな空間に合わせた旬のオリジナル創作和紙壁紙、和紙を用いたデザイン照明、アートパネルを展示。
キューセント
冷暖房の効率をあげ、節電を実現するハニカム構造のブラインドの展示。上下2種類のブラインドを組み合わせることでシーンによっての使い分けもできる。
東亜道路工業
森林保護のため間伐した原材料を木の樹脂で固形化した木質舗装材ブロック及び木質デッキ材を展示。原料が木なので 弾力性があり、歩行時の膝への負担も軽減。また透水性・保水性の両特性を持つ環境製品。
他、出展多数(全26社)本日は18:00から特設ブースにて、大野力氏(sinato)、岡安泉氏(岡安泉照明設計事務所)を迎え、トークセッション“ミラノサローネ2013でのインスタレーション「Infuse」を語る”が開催される。モデレーターは笈川誠氏。
最終日の明日は18:00までの開催。

2013年6月5日水曜日

栗原邸(旧鶴巻邸)一般公開


栗原邸(旧鶴巻邸)は、京都高等工芸学校(現・京都工芸繊維大学)校長、鶴巻鶴一氏の住宅として1929年に建設された。設計は京都高等工芸学校教授の本野精吾氏。2007年には日本におけるDOCOMOMO150選に選定されている。 

竣工から80年以上が経ち建物の傷みが激しくなってきたため、2011年より京都工芸繊維大学の教育プログラム「建築リソースマネージメントの人材育成」 (2013年日本建築学会教育賞受賞)により修復を行ってきた。
今回の一般公開は、5月25・26日、6月1・2日の4日間の期間限定で、現在の所有者である栗原眞純氏の協力の元に行われた。


栗原邸(旧鶴巻邸)は、当時の最先端技術であった特殊なコンクリートブロックを用いたモダニズム建築だが、室内には、ウィーン分離派やアールデコの影響を受けたと思われるデザインが用いられている。


 北面外観。階段室の窓が階段に沿って配置されている。

南面玄関ポーチ。日本の気候を配慮し、庇を深く取っている。


改修は現在、屋上防水と室内3部屋の改修が終了している。屋上の防水は防水建材メーカーの田島ルーフィング株式会社による材料提供及び施工協力にて行われた。



改修された室内。殆どの家具は竣工当時のもの。




木製の階段は広く、重厚なもの。手摺子はアールデコ風デザインが施されている。


室内には鶴巻氏によるろうけつ染が描かれている。

一般公開への関心は高く、来場者は途切れることがなかった。当日(6月2日)に行われたギャラリートークは、初回が満席の為、急きょ2回に分けて行われた。

全体の修復工事はまだ途中段階である。一般公開の入場料は今後の修復に使用される。

栗原邸(旧鶴巻邸)改修についての問い合せ先
京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科
助教 笠原一人
kasahara@kit.ac.jp