2013年10月31日木曜日

青山にて 「ANY Tokyo」 開催中

北青山2丁目の青山シーアイプラザ2Fの会場にて、今回が初めてとなるデザインイベント「ANY Tokyo」が開催されている。主催はエニー・トーキョー実行委員会、プロデュースは田中雅人氏、MIRU DESIGN の青木昭夫氏がディレクションを務める。今回のテーマ「New Vector / 新たなベクトル」のもと、国内外から計16組のクリエイターが参加している。
今、この瞬間も生活をより豊かにし、行動力を向上させ、優れたビジネスモデルを創出し、社会の問題解決に挑戦するデザインやアイデアが生まれています。すでに生産がはじまったプロダクトから実践間近のプロトタイプ、インスピレーションをくれる芸術まで。
ANY Tokyo はそんな「これからのデザインやアイデア」が会するイベントです。――以上、プレスリリースより転載。


会場は以前、F.O.B COOPのカフェがあったところ、といえばわかりやすいだろうか。
以下、出展作品をいくつかピックアップして紹介する(作品名につけたリンクは、「ANY Tokyo」公式サイトの各作家紹介のページに移動)。
手前の3つのベンチ:プロダクトデザイナーの柴田文江氏と長野県にある酒井産業が、国産集成材の可能性を広げるために立ち上げた新しい家具ブランドのコレクションから、《レイヤードウッド》のお披露目。
平川紀道 NIKE+FUELBAND「fuel

鳴川肇/AuthaGraphは、「テンセグリティー・テーブル」と「テンセグリティー・ツリー」を出展。
テンセグリティー(tensegrity)とは、1960年代にバックミンスター・フラーが提唱したとされる構造で、tension(張力)とintegrity(統合)からなる造語。鳴川氏は、その非常に難解な構造を高度に単純化し、様々な場面に応用している。
テンセグリティー構造から成る6本脚のテーブルは、2012年の無印良品主催企画展「家具のかたがみ」で発表されたもの。かたがみとなる縮尺1/8の図面は、現在も無印良品サイト内ダウンロードページにて公開中。データを業者に持ち込んで、三六判のベニヤ板に出力したものを組み立てれば、誰でも同じものが作れる。

テンセグリティー・ツリー」も同様に、工具なしで簡単に組み立て・分解ができる、数理模型のようなクリスマス・ツリー。下の画像・右側の「ツリー」のパーツを外していくと、男性(鳴川氏)が右手で持ち上げているような平たいオブジェに変形する。左手に持っているのが「ツリー」の先端から取り外したパーツ。
鳴川氏は芝浦工大を卒業後、東京藝術大学大学院で坪井善昭先生に師事、佐々木構造設計事務所などを経て、2009年に現在の AuthaGraph株式会社を設立した。「オーサグラフ」とは、authalic(面積が等しい)とgraph(図)に由来する造語。模型による立体幾何学的な検証を軸にアイデアを展開する理念を応用し、DRILL DESIGNと共同制作した世界地図「geografia(ジオグラフィア)」がマルモ印刷から2009年に発売されている。

参加作家で注目したいのは、ロンドンを拠点に活躍中の建築家ダニエル・ウィドリッグ(Daniel Widrig)氏。AA スクールを卒業後、ザハ・ハディドに師事、2009年に独立した後、ジャンルを超えた様々な場面で作品を発表している。2011年にオランダのファッションブランド「Iris van Herpen」とコラボした斬新なオートクチュールは特に話題を集めた。
前述および今回の出展作品は、粉末を焼結させてつくるSLS(Selective Laser. Sintering)の手法により、3Dプリンターで出力されたものである。
会場では「キネシス」のほか、本展の為に「Little Black Spine」も見ることが出来る(下の画像)。
最新作の「Little Black Spine」の場合、ロンドンからのデータを東京で受け取り、日本国内の3Dプリンターを使って出力して完成させた。

デザイナー坂板諭(the design labo)が主宰するh220430による作品、「Unsual chair」ほか。
右端が「Unsual chair」。近づいてよく見ると、椅子の脚の一部が欠損しているのだが、これは作家からの強いメッセージ性を示すもの。

マックス・グナワンによる、本(Book)をモチーフにした「表紙」と「シェード」からなる充電式ポータブルランプ「ルミオエスエフ」ほか。
グナワン氏はインドネシア・ジャカルタ出身、現在はサンフランシスコを拠点に活動中。

左奥:イタリアのマティアッツィ(MATTIAZZI)のチェア。
右:NOSIGNERによる、鏡台づくりの技術を応用したステーショナリーボックスほか。
なお、マティアッツィ社では太陽光発電で工場の使用電力をまかなっている。

鈴野浩一と禿真哉の両氏によるトラフ建築設計事務所は、新作プロダクト「コロロワゴン」を発表。
「しまえる家具」をテーマに、生活に溶け込みフレキシブルに機能する軽やかなスモールファニチャー(製造と販売:伊千呂)。

村山誠「MIMIR Project Curation vol.1
科学とアートの融合を目指すARINARITA LAB(成田真弥+塚田有那)が今夏に始動したプロジェクト:MIMIR(ミーミル)PJの第一弾となるアーティスト・キュレーション。

本展でひときわ目をひくのは、会場の中央に配置されたインスタレーション《sparkling bubbles》。
元アップル社のプロダクトデザイナーであるトーマス・メイヤーホッファー(Thomas Meyerhoffer)がデザインし、今年2月にパリで発表された"Coca-Cola Heritage Glass"(コカ•コーラ ヘリテージグラス)。東京でのデビューイベントとして、日本を拠点に活動するフランス人建築家エマニュエル・ムホー(Emmanuelle Moureaux)氏によるインスタレーションを実施。
「Heritage Glass」からコカ•コーラがはじけて噴き出しているようなインスタレーションは、飲んだ時の爽快感、スパークリングなのどごし、ハッピー感など、あらゆるポジティブ・イメージを表現した開放感あふれる作品。
球体の素材はアクリルで、サイズは直径30ミリと52ミリの2タイプ。中に気泡を閉じ込めて、炭酸の泡をイメージ。直径1ミリ・深さ10ミリの穴をあけて、テグスと球体を接着、天井から吊り下げている。その数800個、色数は34(透明な球体を除く)。
会場にてムホーさんに、今回の施工図面を見せてもらった。
Heritage Glass が載った台の上は長方形のグリッド天井になっているのだが、グリッドの縦と横のラインがクロスする座標で球体を吊り、フロアラインからの高さは個々の球体に振った2ケタの数字で表示されている(例:「28」=FL+2800ミリ)。ランダムに見える色の配置は全て指定されており、平面図上では緩やかな等高線のようなラインで仕切られていた。

なお、出展作家と作品については、公式facebookでも紹介されている。
ANY Tokyo」の会期は11/4(月・祝)まで、開場は11~20時、入場無料。

2013年10月30日水曜日

Daikanyama Design Department(DDD)開催中

代官山T-SITE にて、デザインイベント「代官山デザインデパートメント:Daikanyama Design Department(DDD)」が開催されている。主催は同じ敷地内にある代官山蔦屋書店。
デザインを「知る・考える・楽しむ」ライフスタイル提案の場として、「本」からデザインを発信するのみならず、プロダクトを生み出すクリエイターたちとともに、展示やイベントを通じて、作り手とユーザーをつなぐイベントを目指し、計11のコンテンツを用意している。
コンテンツのひとつ、3棟ある蔦屋書店全館を使って展開しているのは、デザインオフィス nendo を率いる佐藤オオキ氏が会場構成を手掛けた「blue rooms」。 店内各所に置かれた三角屋根の青い小屋が目印。
計27か所あるそれぞれの小屋にあけられた丸い穴から中を覗き込むと、nendoがこれまで手掛けてきたステーショナリーやシューズ、カップやグラスなど多岐にわたるプロダクツやこの秋の新作が収められている。

No.11 日清食品×nend
今春に限定販売された「cupnoodle matryoshka(カップヌードルマトリョーシカ)』の展示と、期間限定CMの映像「REVERSE/REBIRTH」をモニターで流している。

No.09 01、02-08
有田焼き、カトラリー、照明器具、テキスタイル、酒器などの工房や企業とのコラボレーション。
小屋の中身の作品に関連した書籍や雑誌を一緒に置いているのは書店ならでは。

No.16 NAVA×nendo、17:N-WATCH×nendoの腕時計。

箱におさまりきらないサイズの作品も多数。
No.18 イタリア人デザイナーのルカ・ニケット(Luca Nichetto)とコラボレーションした家具コレクション「Nichetto = NENDO」。
脇に置かれた小屋の丸穴から中を覗くと、思いがけずユーモラスなイラストが。

青い小箱は館外にも。
No.19 PIAA社のカーキャリアブランド「Terzo(テルッツォ)」のブランドデビュー30周年を記念した、ルーフボックスのニューモデル「symmetrick」。

2号館2階のキッズコーナーにて。
ディズニーとコラボレーションした家具やテーブルウェアなど。

No.22 ディズニー×nendo
小箱の中は「くまのプーさん」のグラス・コレクション。

会期は11/4(月・祝)まで、オープンは書店営業時間(1階:7時~26時、2階:9時~26時)に準じる。なお、店内は撮影禁止。

このほか「DDD」関連イベントとして、T-SITE GARDEN GALLERYにて、nendo、谷尻誠氏ら7組が出展したプロダクツ展示「伝統とわたし」も開催されている。 「DDD」の会期中、T-SITEではトークイベントも多数開催される。詳細はDDD FACEBOOKを参照。

2013年10月29日火曜日

伊勢丹新宿店「ふしとカケラ MARUNI COLLECTION HIROSHIMA with minä perhonen」10/29(火)まで

伊勢丹新宿店 本館1階=ザ・ステージにて、「ふしとカケラ MARUNI COLLECTION HIROSHIMA with minä perhonen」が10/23(水)から10/29(火)の7日間限定で開催されている。
会期中、限定販売されているのは、深澤直人氏がデザインした(株)マルニ木工の家具シリーズ「HIROSHIMA」のチェアとテーブル。オーク、ウォールナット、ビーチ材の3種類が、今回の為にリ・デザインされた。木が生長する過程でできる「ふし」を表面に有する木材を用い、チェアの座面には皆川明氏ファッションブランド「ミナ ペルホネン(minä perhonen)」の生地の「カケラ」(裁断した際に出る余り布)をパッチワークにしたファブリックが張られている。余り布を使って生み出されたアイテムは、ミナ ペルホネンのショップ[piece, tokyo]でも販売しているが、今回のチェアは本イベントに限った100脚のみ、かつ同じものが他に2つとない完全オリジナル。

10/23(水)閉館後に開催されたプレスビューにて、深澤直人氏と皆川明氏(右)。

「ふし」のある木材は、黒い染みのような見た目で、また技術的にも加工がとても難しい。これまで製造過程において除外されてきたもの。だが、木の「ふし」は生長の証であり、限りある森林資源も無駄にしたくない。ネガティブをポジティブに変換させる新しいコンセプトに共感した皆川氏も、「カケラ」の座面とは別に、長年使い込んでいくうちに擦れてしまう座面の下から別の色が浮かび上がってくるような二重構造のファブリックで蝶々柄のカラーバリエーションを用意、ファッションの分野ではあまり重視されない“経年変化”に取り組んだ(コンセプトは、マルニ木工東京ショールームで9/2に行なわれたプレス内覧会での発表の通り)。
今回の「ふしとカケラ」は、“HAND MADE BY / FOR ME”をテーマに、三越伊勢丹が都内旗館3店舗で11/5(火)まで展開するデザインイベント「ISETAN MITSUKOSHI DESIGN WEEK」のメインコンテンツ。開催前から注目度は高く、チェアは店頭と伊勢丹ONLINEと合わせて計80脚の注文を初日に受けた。HIROSHIMAのアームチェアをイメージして ミナ ペルホネン がデザインした“カケラ”のバッグも初日に完売。
会場は本館1Fフロアのほぼ中央に位置する。三角形のステージを壁で囲わず、リビングに居るような開放感を大事にした。
太い柱を装飾している桟木のような細い木材は、HIROSHIMAシリーズなどを製造しているマルニ木工広島工場において、木材を乾燥させる時に風通しを良くする為に木材と木材の間に挟む木として通常使われているもの。1本1本丁寧に積み上げたものをパネル化して、開催前日の閉館後に搬入、コーナー部分のエッジの仕上げにこだわって施工した。商品を陰で支えてきた木材が、百貨店のステージを飾る。
「ISETAN MITSUKOSHI DESIGN WEEK」を告知するメインビジュアルも、マルニ木工の広島工場で撮影された。新聞の折り込み広告の表紙や、本館正面入口の脇でも大きく掲出されている。

新宿三丁目交差点に面したウィンドーのメインのコーナーも「ふしとカケラ」が占める。


製品のプロトタイプと共に、広島工場の職人達にインタビューしたメイキング映像も字幕付きで流れている。「ふしとカケラ」のイベント展示は10/29(火)20時まで。

2013年10月28日月曜日

TOTOギャラリー・間「犬のための建築」展

乃木坂にあるTOTOギャラリー・間にて「犬のための建築」展が10/25から開催中。
「犬のための建築」は、デザイナー原研哉氏のディレクションのもと、犬の尺度で建築を捉えなおすことで新たな建築の可能性を模索するプロジェクトで、2012年11月に公式サイト(ARCHITECTURE FOR DOGS)がオープンし、世界をリードする建築家・デザイナー13組がデザインした「犬のための建築」が、フリーダウンロードできる設計図と共に公開された。
その後、展覧会がマイアミとロサンゼルスの2か所で巡回開催、そして今回ギャラリー・間にて開催されることになった。 前日に開催されたプレスカンファレンスでは、参加のデザイナー・建築家も集まり、作品についてコメントした。
(参加作家:アトリエ・ワン、伊東豊雄、MVRDV、隈研吾、コンスタンチン・グルチッチ、妹島和世
、トラフ建築設計事務所、内藤廣、坂茂、藤本壮介、ライザー+ウメモト、原デザイン研究所、原研哉

3F会場と中庭では、「犬のための建築」13作品が展示。それぞれの建築家・デザイナーに具体的な犬種を原研哉氏がそれぞれ指定(伊東豊雄氏は愛犬、内藤廣氏は以前飼っていた犬種を希望し提案)をし制作を行った。
 
作品の一部を紹介。
藤本壮介×ボストンテリア「NO DOG,NO LIFE!」
今年の夏、手掛けたサーペンタイン・ギャラリーのパビリオンを思わせるような藤本氏の建築は、犬にとっては建築だが、人にとっては家具のような使い方ができるもの。パビリオンは、この犬のため建築から発想が膨らんだという。
 
作品の近くには、あわせて発行した本もあり、本の中でも実際に犬に使用されている写真や作品についての説明、図面などが収録されている。
トラフ建築設計事務所×ジャックラッセルテリア 「WAN MOCK(ワン・モック)」
クライアントである犬のことを知ろうと、ほぼ日刊イトイ新聞にて糸井氏の愛犬ジャックラッセルテリア の行動を熟読したというトラフの二人。飼い主の衣服の上を居場所とする犬の特性を生かし、だれでも簡単に作れる枠組みに衣服をまとったもの。製品化もしていて、会期中はギャラリー・間の下のブックギャラリーにて購入も可能。
中庭にはアトリエ・ワン×ダックスフンド(下写真左)、隈研吾×パグ(下写真右)の作品。
アトリエ・ワンの作品は、脚が短く銅が長いダックスフンドは階段が昇るのが負担になり、椎間板ヘルニアになりやすいとのことから、スロープ状のものをつくった。スロープに沿って、人間が腰をかけるのにもちょうど良いサイズになっている。(また、犬の“わんわん”が事務所名にも入っているアトリエ・ワン(Atelier Bow-Wow)だが、原氏はそれを知らずこの話のお願いをしたという。なのでギャグで頼んだわけではないのですとプレスカンファレンスでは話をしていた。)
他にも、体から熱を逃がすためにアルミ材を用いた内藤氏の作品や、老いていく愛犬(モモちゃん)を運ぶゆりかごのようなものを作った伊東氏などそれぞれの個性があふれている。
4Fでは、原研哉氏の「D-TUNNEL」を、10数種の形態バリエーションにデザイン展開した、実寸大もしくは縮尺模型を展示。こちらは東京展のために制作したもので初公開。
「D-TUNNEL」は人間と犬のスケールを調整する装置として提案されたもので、レザーチェアと組み合わせたものや人間とテーブルを挟んで人間と向かい合える犬椅子型などが展示されている。
会場の奥の方には建築を使いこなす犬の動画が見れたり、来場者が設計案を投稿できる「犬のための建築」の用紙があり、投稿したラフ設計図は公式サイトにアップロードされる。良い建築については商品化に発展する場合も。
展覧会は12/21(土)まで。会場のペット同伴は不可なのでご注意を。
関連のシンポジウムは11/2に開催。要申込制で受付は締め切っている。
また会場にて随時、原研哉氏によるギャラリートークとサイン会も開催。こちらは申込不要。日程・詳細はギャラリー・間サイトに記載されている。