![]() |
北青山2丁目の青山シーアイプラザ2Fの会場にて、今回が初めてとなるデザインイベント「ANY Tokyo」が開催されている。主催はエニー・トーキョー実行委員会、プロデュースは田中雅人氏、MIRU DESIGN の青木昭夫氏がディレクションを務める。今回のテーマ「New Vector / 新たなベクトル」のもと、国内外から計16組のクリエイターが参加している。 |
ANY Tokyo はそんな「これからのデザインやアイデア」が会するイベントです。――以上、プレスリリースより転載。
会場は以前、F.O.B COOPのカフェがあったところ、といえばわかりやすいだろうか。
以下、出展作品をいくつかピックアップして紹介する(作品名につけたリンクは、「ANY Tokyo」公式サイトの各作家紹介のページに移動)。
手前の3つのベンチ:プロダクトデザイナーの柴田文江氏と長野県にある酒井産業が、国産集成材の可能性を広げるために立ち上げた新しい家具ブランドのコレクションから、《レイヤードウッド》のお披露目。
平川紀道 NIKE+FUELBAND「fuel」
鳴川肇/AuthaGraphは、「テンセグリティー・テーブル」と「テンセグリティー・ツリー」を出展。
テンセグリティー(tensegrity)とは、1960年代にバックミンスター・フラーが提唱したとされる構造で、tension(張力)とintegrity(統合)からなる造語。鳴川氏は、その非常に難解な構造を高度に単純化し、様々な場面に応用している。
テンセグリティー構造から成る6本脚のテーブルは、2012年の無印良品主催企画展「家具のかたがみ」で発表されたもの。かたがみとなる縮尺1/8の図面は、現在も無印良品サイト内ダウンロードページにて公開中。データを業者に持ち込んで、三六判のベニヤ板に出力したものを組み立てれば、誰でも同じものが作れる。
「テンセグリティー・ツリー」も同様に、工具なしで簡単に組み立て・分解ができる、数理模型のようなクリスマス・ツリー。下の画像・右側の「ツリー」のパーツを外していくと、男性(鳴川氏)が右手で持ち上げているような平たいオブジェに変形する。左手に持っているのが「ツリー」の先端から取り外したパーツ。
鳴川氏は芝浦工大を卒業後、東京藝術大学大学院で坪井善昭先生に師事、佐々木構造設計事務所などを経て、2009年に現在の AuthaGraph株式会社を設立した。「オーサグラフ」とは、authalic(面積が等しい)とgraph(図)に由来する造語。模型による立体幾何学的な検証を軸にアイデアを展開する理念を応用し、DRILL DESIGNと共同制作した世界地図「geografia(ジオグラフィア)」がマルモ印刷から2009年に発売されている。
参加作家で注目したいのは、ロンドンを拠点に活躍中の建築家ダニエル・ウィドリッグ(Daniel Widrig)氏。AA スクールを卒業後、ザハ・ハディドに師事、2009年に独立した後、ジャンルを超えた様々な場面で作品を発表している。2011年にオランダのファッションブランド「Iris van Herpen」とコラボした斬新なオートクチュールは特に話題を集めた。
前述および今回の出展作品は、粉末を焼結させてつくるSLS(Selective Laser. Sintering)の手法により、3Dプリンターで出力されたものである。
会場では「キネシス」のほか、本展の為に「Little Black Spine」も見ることが出来る(下の画像)。
最新作の「Little Black Spine」の場合、ロンドンからのデータを東京で受け取り、日本国内の3Dプリンターを使って出力して完成させた。
デザイナー坂板諭(the design labo)が主宰するh220430による作品、「Unsual chair」ほか。
右端が「Unsual chair」。近づいてよく見ると、椅子の脚の一部が欠損しているのだが、これは作家からの強いメッセージ性を示すもの。
マックス・グナワンによる、本(Book)をモチーフにした「表紙」と「シェード」からなる充電式ポータブルランプ「ルミオエスエフ」ほか。
グナワン氏はインドネシア・ジャカルタ出身、現在はサンフランシスコを拠点に活動中。
左奥:イタリアのマティアッツィ(MATTIAZZI)のチェア。
右:NOSIGNERによる、鏡台づくりの技術を応用したステーショナリーボックスほか。
なお、マティアッツィ社では太陽光発電で工場の使用電力をまかなっている。
鈴野浩一と禿真哉の両氏によるトラフ建築設計事務所は、新作プロダクト「コロロワゴン」を発表。
「しまえる家具」をテーマに、生活に溶け込みフレキシブルに機能する軽やかなスモールファニチャー(製造と販売:伊千呂)。
村山誠「MIMIR Project Curation vol.1」
科学とアートの融合を目指すARINARITA LAB(成田真弥+塚田有那)が今夏に始動したプロジェクト:MIMIR(ミーミル)PJの第一弾となるアーティスト・キュレーション。
本展でひときわ目をひくのは、会場の中央に配置されたインスタレーション《sparkling bubbles》。
元アップル社のプロダクトデザイナーであるトーマス・メイヤーホッファー(Thomas Meyerhoffer)がデザインし、今年2月にパリで発表された"Coca-Cola Heritage Glass"(コカ•コーラ ヘリテージグラス)。東京でのデビューイベントとして、日本を拠点に活動するフランス人建築家エマニュエル・ムホー(Emmanuelle Moureaux)氏によるインスタレーションを実施。
「Heritage Glass」からコカ•コーラがはじけて噴き出しているようなインスタレーションは、飲んだ時の爽快感、スパークリングなのどごし、ハッピー感など、あらゆるポジティブ・イメージを表現した開放感あふれる作品。
球体の素材はアクリルで、サイズは直径30ミリと52ミリの2タイプ。中に気泡を閉じ込めて、炭酸の泡をイメージ。直径1ミリ・深さ10ミリの穴をあけて、テグスと球体を接着、天井から吊り下げている。その数800個、色数は34(透明な球体を除く)。
会場にてムホーさんに、今回の施工図面を見せてもらった。
Heritage Glass が載った台の上は長方形のグリッド天井になっているのだが、グリッドの縦と横のラインがクロスする座標で球体を吊り、フロアラインからの高さは個々の球体に振った2ケタの数字で表示されている(例:「28」=FL+2800ミリ)。ランダムに見える色の配置は全て指定されており、平面図上では緩やかな等高線のようなラインで仕切られていた。
なお、出展作家と作品については、公式facebookでも紹介されている。
「ANY Tokyo」の会期は11/4(月・祝)まで、開場は11~20時、入場無料。