今回で12回を迎えた「住まいの環境デザイン・アワード」は、“人と環境の住空間デザインの真の融合”をテーマに、良質な住宅の普及を目的としたコンペティション。
応募作品のエリアを首都圏に限定した今年度は、それぞれの地域に適応しながら、「暮らし」「環境」「デザイン」に調和の取れた住宅事例83作品の応募があった。審査員の厳正なる審査の結果、グランプリをはじめとする13点の受賞作品が決定。
本会では、上位3作品の受賞者によるプレゼンテーション、審査員による作品の総評、表彰式が行われた。
シンポジウムの様子
右手奥に審査員4名、左手奥に上位3作品の受賞者
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グランプリ 「五本木の集合住宅」
仲 俊治・宇野 悠里(仲建築設計スタジオ)
住むことと働くことを一緒にした住宅3つからなる長屋。プログラムを纏った形態がパラパラと集まり、形態どうしのズレが構造や温熱環境に寄与する。雨を集める屋根、雨水で冷やすルーバー、それらを開口部のあり方へと繋げている。
審査員の東 利恵氏は「環境負荷を下げながらの雨水の利用やグリーンルーバーによる前面道路との中間領域が良かった。一番いいなと思ったのは、生活に対する提案で、人の中で子供たちが育つ環境つくりだ」とコメントした。
審査員の宿谷 昌則氏の「グリーンルーバーによる※“水合成”をスポットとして都市に増やしていくといい」に対し、仲氏も「このような取り組みを連鎖させたい」とした。
※水合成:植物による温度変化は光合成という光の効果より水の効果といえるため生まれた
準グランプリ 「観察と試み -標準的な木造一軒家を60代の一人暮らしである施主が開く-」
西田司+神永侑子+鶴田爽(オンデザインパートナーズ)
西田司+神永侑子+鶴田爽(オンデザインパートナーズ)
築60年に差し掛かる木造住宅の改修。「プライバシー感(天気や気分によって変わる心のセキュリティ度合い)」を設計テーマに、ITセキュリティを研究する施主と協働した、個人住宅と社会の繋がり方を実験できる住宅。
審査員の千葉 学氏は「築60年近い木造住宅を新築と同等の金額をかけて残そうとすることに強いメッセージを感じる。プライバシーに対しての実験的な取り組みを丁寧に読み解いている素晴らしい住宅」とし、
審査員の末光 弘和氏は「引き算をしていることが特徴で、自分の生活を地域に開くことで孤独死を避けられるのではないかと訴える実験性の高い住宅」とコメントした。
準グランプリ 「稲村の森の家」
藤原 徹平(フジワラテッペイアーキテクツラボ)
藤原 徹平(フジワラテッペイアーキテクツラボ)
これからの住宅がどうあるべきかを考える施主と協働した、鎌倉の森に囲まれる住宅。1階は家族とこの場所に集まる友人・知人・地域の人のための溜まり場のような場所であり、多くに対応できるようおおらかな設計がされた。
千葉氏は「1階の低い天高はまちに繋がる印象を、2階の高い天高は遠くの海や森に繋がる印象を与えている。完成形がなく、改変を誘導する魅力もある」とし、
宿谷氏は「未完成という事ですが、南側の窓に日よけをつけたりと“時間デザイン”をやりつづけていただきたい」とコメントした。
受賞作品の紹介はこちらを参照のこと。
千葉氏は「1階の低い天高はまちに繋がる印象を、2階の高い天高は遠くの海や森に繋がる印象を与えている。完成形がなく、改変を誘導する魅力もある」とし、
宿谷氏は「未完成という事ですが、南側の窓に日よけをつけたりと“時間デザイン”をやりつづけていただきたい」とコメントした。
受賞上位3作品について敷地や施主、環境などは様々だがグランプリはどう決まったのかという問いに東氏は「提案が分かりやすく、視点が明確であること」、末光氏は「“環境建築”はまちに対してふるまいが乏しくなりがちだがそうでないのが評価できることで、グランプリ作品は特に秀でていた」とし、千葉氏は「建築の説明が上手いことは“環境”を考えるにおいて重要」と言及した。
宿谷氏は「説明することは脳で考えることだと思いがちだが、皮膚の感覚が最初にないと脳は働かないことから皮膚で考えているとも言える。最後は直感。“環境”を考えるのは“数値が大事”という感覚を見直す機会になるアワードになるといい」と締めくくった。
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