千代田区神田錦町にて、再生建築研究所が手掛けた「(仮称)神田錦町旧岡田ビル再生計画」の現場見学会が7/1に行われた。
再生建築研究所は、“建築の不可能を可能に”をテーマに建物の調査から企画・設計・運営までをトータルプランニングする会社。代表の神本豊秋氏を中心に、古い建物に新しい価値を見つけ、新築では生み出すことができないバリューを与え、新たな不動産価値をつくることをこれまでも行ってきた。(※写真1,9枚目は再生建築研究所提供)
今回は、築53年の鉄筋コンクリート造のオフィスビルの再生計画。検査済証がなく、確認申請図と齟齬があり、既存建物の調査と是正工事が必要であった。クライアントは安田不動産で、同社が進める神田錦町のまちづくりに活用するため、再生を行うこととなった。
大きな是正箇所は、容積率の超過と道路斜線の制限違反の2つ。それに加え、建物のバリューを上げる自主的な是正対応として、旧耐震基準の建物であるため耐震補強を伴う改修計画、採光通風が満足にとれない執務環境の改善、既存不適格である避難経路が緊急時に人命を守り得ない防災計画の改善が求められた。
是正によって生まれたファサードが公共性を帯びた余白をつくり、光や風や人の通り道を生み出すべく、これらの与条件を解き、減築を軸に大きな気積をもつ豊かなオフィスビルへと再生させた。
▲見学会で概要を説明する代表の神本豊秋氏
〈斜線制限・容積超過を是正するため減築〉
単純に上層部から必要とされる床を削っていくことも出来るが、各階で少しずつ減築を行うことで建物のアウトラインは変えることなく、吹き抜けやバルコニーを作り出した。吹き抜けに面したバルコニーが専有面積の一部のように感じられることで実際の面積以上に広く感じることができる。
塔屋の一部解体と各階の床に開口を設け、建物重量を軽減することで、耐震性能を大幅に向上。補強量を当初案の約1/3と大きく減らし、袖壁をなくした補強を実現することで、テナントの計画に自由度を与え、耐震基準は新築の1.3倍となった。
▲袖壁がないためレイアウトの自由度が向上
岡田ビルのグランドレベルの壁面の減築を行うことで両隣の公開空地を建物内に引き込み、ひとの通り道をつくることで公開空地の賑わいも生み出すことも考えられた。(両隣地も安田不動産が管理。両隣地の公開空地がつながり、町会と共同で縁日などの地域イベント等も企画されるという。)
▲隣地敷地にあった高さ2mの塀も一部撤去された
エレベーターはバリアフリー対応の9人乗りに変更。また、一方向避難で適法(既存不適格)であったが、防災性能を大幅に向上すべく、避難はしごを設けたバルコニーをつくり、物理的に2方向の避難経路を計画。既存の階段室は煙が逃げるよう開放した。
▲既存のEVは階段室の数段あがったところに設置されていた
▲既存階段と新設階段が切り替わる部分
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