世界の優れた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞 (公益財団法人 日本美術協会主催)の第35回受賞者が発表され、建築部門では、創造性と革新性で建築に新たな可能性を切り拓き、災害支援において建築家としての新たな役割を実践する坂 茂氏が受賞した。
小学生から高校生までラグビーに親しんだ坂 茂氏は、高校卒業後に渡米し、南カリフォルニア建築大学で学んだ後、ニューヨークのクーパー・ユニオン建築学部に編入。大学の休学中は磯崎新氏の事務所で働き、卒業後、帰国して事務所を開設。アルヴァ・アアルトの展覧会の企画と会場設計をきっかけに紙管を構造に使う開発を始め、建築構造材として紙管を実用化した。1995年には国連難民高等弁務官事務所のコンサルタントとして、ルワンダ難民キャンプのシェルターを紙管で造ったほか、阪神・淡路大震災では仮設住宅を建設。これを機に、ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)を立ち上げ、世界の災害地域で建築を通じて難民や被災者の救済を行う。また、うねる集成材と膜材の屋根の『ポンピドー・センター メス』(2010年)や『ラ・セーヌ・ミュジカル』(2017年)、『スウォッチ・オメガ本社』(2019年)など革新的な建築を相次いで設計。プリツカー賞受賞。平時と非常時の両方で建築家としての使命を果たしている。
▲『ポンピドー・センター メス』(2010年)の前で 2024年5月
In front of Centre Pompidou-Metz (2010), May 2024
Photo: Shun Kambe © The Japan Art Association
▲『ラ・セーヌ・ミュジカル』2017年
La seine musicale, 2017
Photo: Shun Kambe © The Japan Art Association
▲『スウォッチ・オメガ』2019年
SWATCH OMEGA, 2019
Photo: Nicolas Grosmond
Courtesy of Shigeru Ban Architect
▲『下瀬美術館』2023年
Simose Art Museum, 2023
Photo: Hiroyuki Hirai
Courtesy of Shigeru Ban Architects
他、各部門の受賞者は下記の通り。
第35回 高松宮殿下記念世界文化賞受賞者※敬称略
■ 絵画部門 ソフィ・カル (フランス)
■ 彫刻部門 ドリス・サルセド (コロンビア)
■ 建築部門 坂 茂 (日本)
■ 音楽部門 マリア・ジョアン・ピレシュ (ポルトガル/スイス)
■ 演劇・映像部門 アン・リー (台湾)
第27回 若手芸術家奨励制度 対象団体
■ コムニタス・サリハラ芸術センター (インドネシア)
授賞式典は、11/19にオークラ東京で行う予定。5部門の受賞者には、それぞれ顕彰メダルと感謝状、賞金1500万円が贈られる。若手芸術家奨励制度の対象団体には、9/10に東京での発表記者会見の席上、奨励金500万円が贈られた。
また、受賞記念建築講演会2024「坂 茂 建築を語る」が11/20に、受賞記念アーティスト・トーク2024「アン・リー監督と映画を語る」が11/21に港区赤坂の鹿島KIビルにて行われる。聴講は事前申込の抽選方式。応募の詳細は公式サイトにて。
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