2013年8月29日木曜日

アトリエ・天工人《(仮称)港区S邸》オープンハウス

山下保博氏が代表を務めるアトリエ・天工人のオープンハウスを見学。
周囲を住宅に囲まれた、厳しい建設条件を前提に、できる限りの空間と採光を求めた結果、多面形のフォルムが特徴的な住宅が完成した。《(仮称)港区S邸》は、敷地面積69.15平米に対し、建築面積は38.72平米、延床面積は77.44平米。
サイトは第1種中高層住居専用地域と準防火地域に属する。象の頭部のような変形の旗竿敷地で、「竿:象の鼻先」が接する西側と、「旗」の側の東側とで高低差があり、それぞれが異なる道路に接している。2本の道路は迂回した先で繋がってはいるが、最寄駅への距離がそれぞれ異なる。玄関をどの道路の側に設けるかで検討を重ねたが、最終的に西側(象の鼻先)とした。東側は車の出入口とし、両隣りの住宅に接する南北の側にはコンクリートの擁壁をたてた。
オープンハウス開催時の出入りは駐車場の脇から。階段下は収納スペースとして活用。駐車場の奥には納戸(兼書斎スペース)がある。
階段を上がって1階へ。 階段を上がった突き当りが前述の玄関。
1階玄関より、室内をみる。
片側(北側)に水まわり空間とウォークインクローゼットが、廊下の先に寝室がある。

玄関に設けた木のベンチ(マホガニーの突き板)の数センチ下がG.L.(グランドライン)で、1階のF.L.(フロアライン)よりも高い。建ってしまうとわからないが、地中には何本か杭を打ち込み、鉄筋コンクリートの擁壁の上にさらに鉄骨を据えているとのこと(構造設計:佐藤淳構造設計事務所)。
西側の玄関先からの外観。白い壁に落ちているのは周囲に建つ住宅の影。密集地であることが判ると思う。
玄関の床の約1/3はガラスブロックが嵌め込まれている。階下に納戸が位置しており、玄関ドア横のFIX窓から差し込む光を階下に落とす役割。
地下の納戸からの天井見上げ。
書斎としても使えるよう、書棚と大きな木のカウンターを造作した。

1階に戻り、他の居室をみてまわる。
1階洗面室。
右側に置かれているのは、ヨーロッパワールプール社のビルトイン型電気洗濯機と乾燥機。
洗面カウンターもオリジナルの造作。ボウルとの一体成型。
ガラス壁の向こうが浴室。床は玄関と同じ大理石を張っている。

広めのウォークインクローゼット。右の奥に採光用の窓がある。このように、さりげなく設けられた開口部が、内部をずいぶんと明るくしている。
1階寝室。
棚の脇にも採光と通風用の窓あり。
同じく寝室。
南に向けて、角度をつけて開けられた壁は曇りガラスを張っている。この微妙な角度が、建物の天空率に影響し、それにより内外観のボリュームも違ってくるとのこと。
1階寝室から、廊下を通して、玄関側の眺め。
階段横に設けた白い柵は、階下への落下防止と手摺りを兼ねた。

階段をあがり、ダイニングとリビングがある2階へ。
2階リビング・ダイニング。
外からは見えなかったが、天井の一部は多面形のトップライトになっている。4メートル道路を挟んで建つ低層集合住宅の白い壁面に反射した光が入り込み、陽が西に傾いた午後でも照明なしでリビングはこの明るさ。 最大でL=3650ミリもの特注のペアガラスをクレーンで吊って搬入・施工した。
壁のスポット以外は、間接照明が中心のリビング・ダイニング。キッチン側の天井にあけた長方形のスリットの中と、ローキャビネットの下に、LEDの照明が仕込まれている。
多面形の頂点付近はロフトとして活用。
ロフトの開口部から、2階リビングの見下ろし。

1、2階の床の仕上げは共にウォールナット。ローキャビネットの面材と天板はメイプルの玉木(たまもく)。施主からの要望のひとつとして、できるだけナチュラルな素材を使ってほしいというのがあったとのこと。
2階トイレ。
トイレの前、洗面のミニカウンター。
1階同様にボウル一体成型(共にインテック製)。
2階キッチン(照明を点灯した状態)。
前垂れとキャビネットの面材は、1階寝室の引き戸面材にも使われていたシカモア。
Miele社の食洗機、IHクッキングヒーター、昇降式換気扇を内蔵した造作キッチン。こちらもシンクとカウンターを一体成型。
アトリエ・天工人は福岡にも事務所(天工人WEST)をもつ。この前日の土日に下関市で開催した焼杉ワークショップに参加、日焼けして帰京した山下氏と、現場担当の石井あずさ氏に、昨年竣工の住宅《バウンダリーハウス》の外壁にも用いた焼き杉の魅力と、今回の現場での苦労話、現在進行形のプロジェクトなど、いろいろと話を聞く。

2013年8月27日火曜日

「新宿クリエイターズ・フェスタ2013」開催中

昨年に引き続き、新宿のあちらこちらにアート作品がお目見えする「新宿クリエイターズ・フェスタ」が今年も始まった。2013のテーマは“この夏、アートと恋をする”。(以下、一部で敬称略)

 最も西に位置する会場《住友不動産新宿グランドタワー》オフィス棟グランドエントランスには、椿昇作品「マーマリアン (哺乳類)」が登場。
詳細は不明だが、作品内部には絶えずエアが送り込まれていて、表面の所々に空いた「穴」から適度にエアが漏れているようだ。その際の微妙な動き加減が、まるで生き物が呼吸しているようにも見える(作品が視界に飛び込んできた時、大友克洋監督作品「AKIRA」のクライマックスシーンに出てくる“赤ん坊”を想起した)。
アーティスト展示には椿昇のほか、草間彌生、河口洋一郎、北川フラム監修による「都市のユーモア展」、森山大道、山本信一、エマニュエル・ムホーの各氏が参加(注/新宿三井ビル1F 55スクエアでの「エマニュエル・ムホー展|100色」は会期(変更あり)9/2から9/29まで(9/15、16は会場新宿三井ビル臨時休館日)。東京工芸大学写大ギャラリー所蔵作品による森山大道作品のヴィンテージプリント・コレクション展は9/2まで、開廊11-18:30、会場はヒルトン東京B1F「ヒルトピアアートスクエア」)。
 このほか、参加作品・プロジェクトは多数。鈴野浩一氏、中村拓志氏らが審査委員を務める学生アート(空間デザイン部門)コンペティションへのエントリー作品のパネル展示も。

新宿クリエイターズ・フェスタ2013」の会期は8/23(金)から9/8(日)まで。
各展示の詳細、会場ごとに異なる開館・開廊時間は、「新宿クリエイターズ・フェスタ2013」公式サイトの全体マップを参照のこと。

2013年8月26日月曜日

歌舞伎町《TOHOシネマズ新宿》工事中

新宿コマ劇場・新宿東宝会館跡地に建設が進む《TOHOシネマズ新宿》の、新宿プリンスホテル上階からの見おろし(夕暮れ時)。地上・靖国通りから歌舞伎町のアーケード越しにも、工事中の建物が見える。これから東側に地上30階の高層ホテル部分が立ち上がっていく予定。
12スクリーン・計2500席を有する都内最大級のシネコンは、さ来年の2015年春オープン予定。 計画概要がわかる、新宿区役所が発表した「新宿東宝ビル開発計画」はこちら(作成:竹中工務店)。

2013年8月25日日曜日

MOMAS「浮遊するデザイン 倉俣史朗とともに」9/1(日)まで

北浦和公園内にある埼玉県立近代美術館で開催中の企画展「浮遊するデザイン 倉俣史朗とともに」を見に行く。会期は9/1(日)まで(月曜休館)。
倉俣史朗氏(1934-1991年)が手掛けた作品だけでなく、デザイナーを志した頃の世相、活動と時代を共にした芸術家やデザイナー、倉俣事務所出身のデザイナー諸氏の作品も一堂に。展示パネルで使われている当時の写真は、藤塚光政氏撮影のものが目立った。
同展に関連し、会場配布物である埼玉近美ニュース[ZOCALO(ソカロ)]#67に掲載されている、同館館長建畠晢氏によるテキスト「松本での会話」――篠原一男氏を巡るエピソードを、帰路の車内にて興味深く読む。同紙に「北浦和公園のみどころ」のひとつとして紹介されていた、黒川紀章氏の《中銀カプセルタワービル・住宅カプセル》を見逃したことにも気付く。彫刻広場に昨年1月から設置されているとのこと。
同じく黒川氏が設計した《埼玉県立近代美術館》は改修工事の為、9/2(火)から来年3/31(月)まで休館となる。

2013年8月24日土曜日

「渋谷駅体得展 1/100模型で渋谷駅の世界を知る」8/25(日)最終日

渋谷マークシティ WEST4F「クリエーションスクエアしぶや」で開催中の「渋谷駅体得展 1/100模型で渋谷駅の世界を知る」(主催:田村圭介+昭和女子大学田村研究室、協力:テラダモケイ)を見に行く。
本展で目をひくのは、平面縮尺1/100(縦方向は1/50)の巨大模型「渋谷駅動線模型2013」。昭和女子大学准教授田村圭介氏と研究室の学生が制作したもので、この会場での模型展示は今回で三回めとのこと。

駅体得とは?
<駅体>は田村の造語である。
渋谷駅の建物は駅施設としての単体ではなく、商業施設や文化施設、宿泊施設などが溶け合いながら刻々と変化させてきた複合体であり、それを「渋谷駅体」と呼んだ。今年3月の東横線の地下化で、さらに複雑さを増したようだ。そんな迷える渋谷<駅体>を本展示会で<体得>して欲しい。
以上、フライヤー(会場配布物)より転載。

会場出入口に近い側から、渋谷駅の最深部・地下5階に位置する東急東横線、並行する営団地下鉄副都心線ホーム。楕円にくり抜かれている部分は、安藤忠雄氏がデザインした「地宙船吹抜」。
模型のあちこちに配置されているオレンジや白い紙の人形(ひとがた)は、テラダモケイの「1/100建築模型用添景セット No.3 基本形」のパーツ。本展では会期中、駅構内に人形をピンセットで配置していくワークショップも開催されている。作業しやすいように、高さ方向の縮尺はあえて1/50に。
JR山手線ホームや中央改札口よりも高く、地下鉄銀座線駅のホームが地上3階に位置するという、渋谷駅の複雑さが改めてよくわかる。


地上34階+地下4階の高層複合施設《渋谷ヒカリエ》は、現在は暗渠となった渋谷川がつくった谷の上に建つ。
模型の四角い柱はエレベーターシャフトを表現(円柱は模型を支える構造上の柱)。模型は4分割して会場に搬入、階段を付け足しながら組み立てた。
外国人観光客がわざわざ写真を撮りにくるという、渋谷の代名詞「スクランブル交差点」付近。足下には、道玄坂・渋谷109方面へ抜ける地下道が。
忠犬ハチ公も広場に鎮座。さすがは寺田尚樹さん、細かい。
渋谷マークシティ4Fの展示会場=「現在地」はこの辺り(道玄坂への地上出入口の手前)。2層下に京王井の頭線のホーム。

この大きさで、しかし実は渋谷駅の全景には未だ足りない。最も南に位置する埼京線ほかのホームが無いのだ。付け足すと、部屋の壁を突き抜けてしまうとのこと。
フライヤーの裏面の立体マップも充実。

渋谷の平面・断面ダイアグラムなど、地形と変遷がわかる展示パネルも力作。
「渋谷駅 構内ネットワーク図」を見ると、1885年頃は渋谷川と街道の2本線だけだったのが、高速や鉄道各線が入り込んで複雑な様相に。渋谷駅大改造が終わる2027年には、さてどんな姿になるのやら。
今年3月に刊行された田村氏の著書『迷い迷って渋谷駅 日本一の「迷宮ターミナル」の謎を解く』(光文社)には、渋谷の変遷がさらに詳しく書かれている。
会期最終日の8/25(日)には、テラダモケイによるワークショップの最終回が行なわれる(13-17時、予約不要、参加費無料)。展示は10-18時、入場無料。

2013年8月23日金曜日

「PAPER -紙と私の新しいかたち-展」目黒区美術館で開催中

目黒区美術館で開催中の企画展「PAPER -紙と私の新しいかたち-」を見に行く。

植原亮輔と渡邉良重(キギ)、鈴木康広、寺田尚樹、トラフ建築設計事務所(鈴野浩一・禿真哉)、DRILL DESIGN(林裕輔・安西葉子)、西村優子の各氏が出展中。会期は9/8(日)まで。
2Fの展示室内は撮影禁止だが、撮影が許されている会場手前までの階段付近と1Fフロアのあちこちに、寺田尚樹氏とスタッフが手掛けたと思われる、1/100建築用添景セットが「展示」されているのも見所のひとつ。

館内サインの上や階段の途中の僅かなスペースに、人や動物たちの様々なドラマが。
掲載した以外の場所にもあるので、お見逃しなく(トイレなど)。
もちろん、本展も面白かった。鏡の天板の上に据え置かれた「空気の器」は、内側と外側とで色と柄がガラリと異なるさまを、より解りやすく、そして美しく見せていた(参考:トラフ建築設計事務所サイト>WORKS)。入館時に受付で渡されるチケットや館内に置かれているフライヤーも凝りに凝っている。

本日は午後から《キャベツの器》などの作品を出展中の鈴木康広氏のトーク+ワークショップも開催された。明日8/24(土)、25(日)は、本展に協力している福永紙工マルモ印刷の紙製品や「紙の道具」を扱う特別ショップ「工場直売所」が限定オープンする。