2019年6月10日月曜日

「安藤忠雄 初期建築原図展――個の自立と対話」内覧会

国立近現代建築資料館では、安藤忠雄(安藤忠雄建築研究所)氏の「初期」建築資料である1990年頃までの手描きによる建築設計図面とスケッチなどを用いて、「安藤忠雄 初期建築原図展」を開催中。
本展のテーマ「個の自立と対話」は、都市・自然・光・歴史風土などとの対話を通して個々人が自らを見いだし、深め、自立するための空間づくりを追い求めた、「初期」の安藤氏が常に抱いていた思い(基本理念・動機)を表すもの。


当館は、我が国の近現代建築に関する資料について、劣化、散逸、海外への流出などを防ぐことを目的として、全国的な所在状況の調査、関連資料を持つ機関との連携、緊急に保護が必要な資料の収集・保管を行う。
収蔵資料を中心とした展覧会を年2回開催し、本展は前期のものにあたる。

川向正人氏(当館主任建築資料調査官、東京理科大学名誉教授)
当館主任建築資料調査官である川向氏は、安藤氏の「初期」建築についてその後と比べると明らかに異なるふたつの特徴があるという。
第1の特徴は、90年頃まではすべてが国内の仕事だったこと。国内でも、特に大阪と周辺地域に作品が集中し、その内容は住宅が中心、住宅でない場合も規模や性格が住宅に近いもの(集合住宅、茶室、店舗、小教会など)である点。
第2の特徴は、90年頃まではすべての図面が手描きだったこと。
「未公開図面も多数展示され、氏の「思い」が伝わる流れを感じさせる収集をした」と話す。

展示室に入り、まず展示されるのは代表作「住吉の長屋―東邸」(1976年)

芦屋市の山間部に位置する豪邸街の奥池に建つ住宅「領壁の家―松本邸」(1977年)

国立公園内の斜面に埋め込まれて建つ「小篠邸」(1981、1984年)

高瀬川沿いに計画された商業施設「TIME'S Ⅰ」(1984年)


六甲山の急斜面の山肌に展開する氏初の集合住宅「六甲の集合住宅Ⅰ」(1983年)

世田谷区の閑静な住宅街に建つ「城戸崎邸」(1986年)

中世の修道院からイメージされた「六甲の教会」(1986年)

大胆に建築とランドスケープを一体化し計画された「水の教会」(1988年)


数ある氏の作品の中でも最もシンプルでミニマルな建築「光の教会」(1989年)

3期にかけて形成される「大淀のアトリエ」(1981、1982、1986年)

四方の壁には大きな図面や模型、ガラスケースには写真や雑誌の一部、施主とのやり取りの手紙や細かな図面、展示室中央には青焼き製本の複製が展示され、閲覧できる。

安藤忠雄氏(建築家・当館名誉館長)
安藤氏は「世界に誇れる日本の建築デザイン・建築技術・施工技術を残し保管するために作られた本館で展示ができて光栄。約50年前の自分の図面を見て、手抜きをしない、図面に対するエネルギーがあったんだなと感じた。それは建築が好きだったからだ」と振り返り、「人生100年時代と言われているが、より豊かに生きるには建築空間・まちづくりが大事なのでそれに少しでも参加し続けたい」と思いを語った。

会期中無休で開館時間は10:00~16:30。
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