株式会社CACL、株式会社LIXIL、有限会社永山祐子建築設計の3社は2025年9月1日、令和6年能登半島地震で倒壊した家屋の黒瓦を建材としてアップサイクルする共同プロジェクトの発表会を開催した。
プロジェクト概要
このプロジェクトは、能登半島地震で全壊・半壊した家屋の黒瓦を廃棄せず、「創造的復興」のシンボルと見なし、建材へとアップサイクルすることで、能登の想いや記憶を未来へとつなぐ包括的な取り組み。
現在、能登半島地震で被害を受けた家屋は公費解体(※)により解体され、瓦は全国の処分場で廃棄されている。そこで、瓦に着目し石川県内の関係者をコーディネートするCACL、資源の循環利用を促進する建材技術を持つLIXIL、そして企画発案からデザイン、建築への使われ方までを監修する永山祐子建築設計の3社が、それぞれの強みを活かし、公費解体された家屋の黒瓦を新たな建材としてアップサイクルするための体制を確立した。
(※)公費解体:令和6年能登半島地震で半壊以上の被害を受けた家屋(住家、空き家、納屋など)について、所有者の申請に基づき、市が所有者に代わって解体・撤去を行う制度。
プロジェクト発表会
珠洲市役所での発表会には、泉谷満寿裕・珠洲市長、奥山純一・CACL代表取締役、永山祐子・永山祐子建築設計代表、羽賀豊・LIXIL常務役員が登壇した。
左から、羽賀豊・株式会社LIXIL 常務役員 デザイン&ブランド ジャパン部門 リーダー、永山祐子・有限会社永山祐子建築設計代表、泉谷満寿裕・石川県珠洲市長、奥山純一・株式会社CACL 代表取締役
奥山純一 氏(CACL代表取締役)
プロジェクトが生まれた背景にある想いを説明。陶磁器片に新たな価値を見出す活動と、復興支援で出会った黒瓦の破片について、「割れた断面から見えるオレンジ色と表面の黒色の対比が美しい」と感じたと語った。被災した住民から「解体されるとその記憶さえ思い出せなくなる」という話を聞き、黒瓦のアップサイクルを考えた。
泉谷 満寿裕 氏(珠洲市長)
珠洲市の現状について解説。約5600世帯のうち約7割が被害を受け、約半数が公費解体されることになったと述べた。「珠洲市における黒瓦は、誇りであり宝。廃業が続き、黒瓦を作れる会社がなくなってしまった今、この共同プロジェクトが展開され、生かされることは本当にありがたい。生まれ変わって残ることに大変意義があり、ここからプロジェクトが大きく広がることを願う。」
羽賀 豊 氏(LIXIL常務役員)は、自社の資源循環技術の実例を紹介した。「リサイクルは、廃棄されるものをアップサイクルするという流れも重要だが、今回は現地の思いも含めて、地域に根差した黒瓦がもう一度価値を生むことに可能性を感じる」と述べた。LIXILの意匠材「textone」の技術を用いた今回のマテリアル開発経緯や、素材のオレンジ色を活かした風合い、瓦片の大きさへのこだわりなど、技術的な特徴にも言及した。
永山 祐子 氏(永山祐子建築設計代表)
リユースを前提とした過去のプロジェクト事例を紹介し、ベネチアで奥山氏と出会ったことや、陶磁器片を建材に活かすアイデアを提案したことを振り返った。建築ならではの特徴として「建材を大量に使用できる価値があり、そこから雇用や技術、デザインという発展性も生まれる」と説明。「現在、大規模商業施設での使用を検討しているが、決して独り占めするのではなく、さらにたくさんの方々を巻き込みながら、もっと面白いことが広がっていくことを願う。」
〇株式会社CACL
https://cacl.jp/
〇株式会社LIXIL
〇株式会社LIXIL
〇永山祐子建築設計
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