2019年10月23日水曜日

木造建築シンポジウム2019

15日(火)にヒューリックホール東京にて、「木造建築シンポジウム2019 都市部における木材需要の拡大を目指して ―中高層ビルの木造化への挑戦―」が行われた。
左から隅 修三氏、隈 研吾氏、亀井 忠夫氏、宮下 正裕氏
戦後日本は、木造建築にとって不遇の時代が続いてきました。高度経済成長期以降、鉄とコンクリートによる近代建築が脚光を浴び、木の建築は火事、台風等災害に弱い「危ない建物」とされてきました。1959年、日本建築学会は建築防災に関する決議の中で、「防火、耐風水害のための木造禁止」を提議しました。結果、大学専門教育のカリキュラムからは木造建築が消え、国内の木材需要は減少し、日本の林業も衰退の一途をたどってきました。
しかし、今、状況は大きく変化しています。地球環境への意識が急速に高まる中、木材は環境材料として見直されています。高強度や耐火性能を持った新木材(エンジニアリングウッド)が開発され、同時に木造に対する規制緩和も進んでいます。また、戦後に植林された人工林が伐採時期を迎え、国産木材の供給力も増加しています。
このような流れの中、今回、経済界、建築・建設業界の分野で、現在の日本を代表する企業のトップの方々にお集まりいただき、それぞれの立場で次世代の木造の可能性について語っていただく場を設けました。大量生産・大量消費社会から持続可能な社会へ、また、工業化・情報化社会から多様性の社会へという流れの中で、“木”がもつ可能性とその果す役割について改めて考えてみましょう。
ヒューリック株式会社
代表取締役会長 西浦 三郎
代表取締役社長 吉留  学
――特設サイト 開催趣旨より

基調講演では、講師:隈 研吾氏(建築家、東京大学教授)が「コンクリートから木へ」をテーマとし、自身の20数作品を紹介した。
中でも、地上12階建ての耐火木造ビル「銀座8丁目開発計画(仮称)」は、東京・銀座8丁目の銀座通り(中央通り)に面した敷地に位置する隈氏がデザイン監修、竹中工務店が設計・施工、ヒューリックが建設する注目のプロジェクト。
完成は2021年秋ごろ予定。高さ約56m、延べ面積2451㎡の商業テナントビルで、耐火木造で12階建ての商業施設は日本初になる。

パネルディスカッションでは、「都市部における木材需要の拡大を目指して」をトークテーマにパネリストに隈氏、隅 修三氏(東京海上日動火災保険 相談役)、亀井 忠夫氏(日建設計 代表取締役社長)、宮下 正裕氏(竹中工務店 取締役会長)、コーディネーターに福島 敦子氏(ジャーナリスト)が登壇。
「ハイブリッド構造」をキーワードに各社の木造建築に対する取り組みを発表した。

今回のシンポジウムのような、中高層ビルの木造化を広める取り組みが今後も行われていくかという記者の問いに隅氏は、「現状活動はしているが、大きな波にはなっていない。銀座8丁目開発計画(仮称)を筆頭に、実例を作り体感してもらうことが一番だと考える」と話す。
高知県立林業大学校で校長も務める隈氏は、「通常、林業学校では生産と加工のみを教える。ここでは設計についても教育する。木造建築の良さ、強さ、かっこよさを学ぶ。一般の方にも広める役割を担う面白い仕組みだ」と紹介した。

ヒューリック
https://www.hulic.co.jp/

0 件のコメント: