この審査会は、グッドデザイン賞初の試みとして、今年度グッドデザイン・ベスト100選出のデザイナーによる公開形式のプレゼンテーション。
グッドデザイン賞審査委員が参加した上で協議を実施し、今年度のグッドデザイン大賞候補(ファイナリスト)、グッドデザイン金賞、グッドフォーカス賞が決定する。
公開審査会は複数のスペースで同時並行で行われ、筆者は住宅(戸建住宅)、住宅(集合住宅)、産業・商業・公共建築・インテリアの部門の計18のプレゼンテーションを聴講。
・釜石市の復興公営住宅(大町復興住宅1号、天神復興住宅)
千葉学建築計画事務所+大和ハウス工業岩手支店
東日本大震災以降、建設資材の高騰、職人不足などから従来型の設計施工分離の発注形態では、価格や工程の管理がうまくいかず、仕切り直しになる計画が相次いだ。
そのような状況下で釜石市は、民間に設計施工を委託し、完成した建物を買い取る方式に踏み切った。
「建築家の「作品」をつくるという従来型の取り組み姿勢を根本から問い直し、限られた条件下で何が可能かを見極めながら取り組んだ。」と千葉学氏。
また釜石市では、阪神・淡路大震災において多くの孤独死が発生したことへの反省から、復興公営住宅にリビングアクセスを導入し、住民相互が繋がることのできる住まいを目指した。
しかし現実のコミュニティは、異なる地域から移り住む人、親戚同士で近くに住みたい人、若い共働きの夫婦、高齢者の一人暮らしなど、複雑である。 こうした被災地特有の建設事情、コミュニティの様相を解像度高く見極めたことが、関係性のデザインという発想につながっている。
・台中国家歌劇院
伊東豊雄建築設計事務所
台中国家歌劇院は、台湾第2の都市、台中市の西部、新興住宅街の公園内に建てられた。
約2000席、200席、200席の3つの劇場の他、ギャラリー、ショップ、レストラン、屋上庭園等を複合させたオペラハウスである。”Sound Cave”と呼ばれている通り、建築全体が複雑な洞窟状の空間から成り、2016年秋にオープンした。オープン後連日多くの人々で賑わい、台湾の新しい観光名所となっている。
「複雑な3次元曲面に見えますが実はシンプルな幾何学で成り立っています。」とし、建築のプランと設計方法、施工方法などの説明が行われた。
・釜石市立唐丹小学校・釜石市立唐丹中学校・釜石市唐丹児童館
乾久美子建築設計事務所・東京建設コンサルタント 釜石市唐丹地区学校等建設工事設計業務特定設計共同体
「土木と建築の制度的ギャップを乗り越え、海岸沿いの小さな集落にふさわしい、やさしい学びの場を生み出す」ことがコンセプトとなった、釜石市唐丹町旧中学校の敷地内に被災した小学校、中学校、児童館を集約する計画。
「仮設校舎による学校運営が続けられる中で残る裏山をできる限りなだらかに造成し、一般的にはスケールの異なる土木設計と建築設計を繊細にコーディネイトすることで、急斜面であることを生かしながら、新しい学校の魅力を紡ぎだすことを意図した。」と乾久美子氏。
なお、各賞の発表は今月31日(水)の予定。
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【関連展示】
- ・GOOD DESIGN EXHIBITION 2018
受賞デザイン全件を東京ミッドタウン(六本木)で紹介。
「グッドデザイン・ベスト100」の特別展示や会期中限定の受賞商品のショップなどを開催します。
会 期:10月31日(水)〜11月4日(日)
会 場:東京ミッドタウン(東京都港区赤坂9-7-1) - ・私の選んだ一品2018
今年度グッドデザイン賞審査委員86名が選んだ、お気に入りの受賞デザインを紹介します。
会 期:10月3日(水)〜11月4日(日)
会 場:GOOD DESIGN Marunouchi(東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1F)
会期中無休、入場無料
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