2019年2月13日水曜日

「ワイルド・エコロジー:能作文徳展」

 プリズミックギャラリーは、誰でも自由に来場できる、オープンなギャラリー。200511月の開設以来、これからの世の中をリードする建築家、クリエイター、など若手を中心に個展を開催し続けている。
「建築」に様々なかたちで携わり活動する彼らに場を提供し、考えていることを自由に表現・情報発信できる場であってほしいとの思いから、展示計画・内容はすべて出展者に委ね、毎回それぞれの個性溢れる展覧会となっている。

本展覧会では、SDレビュー2017に入選した「西大井のあな 都市のワイルド・エコロジー」を中心として、「マテリアル」、「エネルギー」、「フード」に着目した生態学的建築群を紹介する。

 「フードコモンズ」東京電機大学3年生設計課題
食を起点とするコモンズ(共有資源・共有空間)を「フードコモンズ」と呼び、リサーチしている。この「フードコモンズ」というテーマを東京電機大学の3年生の設計課題に出題した。まずは食に対する弱者とはどのような人たちか、食の問題を引き起こしている仕組みとは何か、食と人々の間にどのような障壁があるのかを議論した。一人暮らしの高齢者、夕食を一人で済ます子供たち、子育て世代、アレルギー、ベジタリアン、イスラム教徒、移民、災害時の非常食、食品ロス、過剰包装、都市農業、大豆、鶏、魚など様々なテーマに取り組んだ。

「ピアノのある長屋」 
東京、中目黒の住宅地に建つピアノ教室付きの住宅と2つの賃貸住宅が複合した長屋。敷地北側には3mを超える崖があり、土砂崩れの恐れのある範囲となる1階部分を鉄筋コンクリートとし、それ以外を木造とした。焼杉塀で囲まれた前庭、樹脂アルミ複合ペアガラスの窓、吹き抜けのある玄関土間、明かり障子を並べ、道路から距離を取りつつ、階段的に開放できる仕組みとなっている。

Bamboo Theater
敷地はフィリピン、マニラにあるヴァルガス美術館の前庭。用途はパフォーマンスアートのための野外劇場である。アジアの若いアーティストやキュレーターが集うことから、アジア・モンスーン 地域の多くで主食となっている「米」が、アジアの共通性となっていることに着目して、米に関係する物質循環のネットワークの中で、どのような建築ができるかを模索。マニラの市場で見つけたカラフルな米袋を屋根葺材に、米農家の庭に植わっている竹(農機具や杭や小屋に使われている)を構造材に用いて、仮設的でありアジアのお祭りのような賑やかな場所が作り出された。

「高岡のゲストハウス」
敷地は富山県高岡市。屋根の単位を生かしながら、既存家屋を、祖母の住まい、食堂、ゲストルームの3棟に分解した。中庭を設けて、プライバシーを確保しながら家族以外の友人を受け入れる、開かれつつ程よい距離を保つような構成にした。祖母が引っ越ししないですむように、住みながら施工するため3段階に工事を分け、解体の際にでてきた素材を建物の資源としてリユースした。

「西大井のあな 都市のワイルド・エコロジー」 
自身の事務所兼住宅。東京、西大井にあるバブル期に建てられた鉄骨4階建ての中古住宅と土地を購入し、解体直後に引っ越し、住みながら自分たちで少しずつ改修を始めた。壊すことで生じた「あな」を起点にして、建物は都市の中の生態系と再び繋ぎ直される。都市とワイルドは矛盾した言葉だが、都市の中で自生する雑草のような強さが表現された住宅になっている。

会期は2019.2.22(金)まで。開廊時間は平日10:00 18:00となっている。

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