時間の流れを「形」と「香り」で捉え直す新しいプロダクトが発売される。コクヨは、同社が主催する「コクヨデザインアワード2022」で優秀賞を受賞した作品「トキヲクム」を、京都の香老舗・松栄堂と共同開発し、限定50セットで4月下旬から販売する。伝統的なお香を用いながら、これから過ごす時間そのものをデザインするという発想を、現代の暮らしに適した製品として具現化した。
「トキヲクム」は、お香の燃焼を通して時間の移ろいを視覚と嗅覚で感じ取ることができる“お香時計”である。慌ただしく過ぎる日常の中で、自分のリズムを取り戻してほしいという思いから生まれた。最大の特徴は、香りや色の異なるお香のブロックを積み上げることで、これから過ごす時間を自ら「プログラム」できる点にある。
用意されているお香は、「POSITIVE」「RELUX」「REFLESH」「SATISFY」「FORCUS」と名付けられた全5種類。最大5個まで積み重ねて使用し、最上部に火を灯すと、ブロックが燃え進むごとに香りが変化する。香りの移ろいそのものが時間の経過をやさしく伝え、積み上げる行為自体が、自身の内面やこれからの過ごし方を見つめるきっかけとなる。
本作は、デザインユニット「mrk(マーク)」による受賞作品を起点に、約300年の歴史を持つ松栄堂の調香・成形技術を掛け合わせることで製品化された。宗教用の薫香から茶の湯の香木、日常用のお香までを手がけてきた伝統技術が、繊細なブロック形状や、時間とともに切り替わる香りの表現を可能にしている。伝統的なお香を「時間を計る道具」として再解釈し、現代的な生活道具へと昇華させた点が、本商品の核となっている。
台座にも、空間に静かに溶け込むデザインが施された。温かみのある木製ベースに、真ちゅう製の受け皿を重ねた構成で、1点の調度品のような佇まいを持つ。中央に向かって緩やかな傾斜を持つ金属パーツが燃え落ちる灰を美しく受け止め、ミニマルで異素材の調和を感じさせる仕上がりとなっている。
「トキヲクム」は、ユーザー視点のものづくりを掲げる「コクヨデザインアワード」の思想を象徴する製品でもある。同アワードは2002年に創設され、受賞作品の商品化を前提とする点が特徴だ。「カドケシ」や「本当の定規」など、生活の中の当たり前を問い直すプロダクトを多数世に送り出してきた。今回もまた、若手デザイナーとメーカー、伝統工芸の担い手が協業することで、新しい価値の提示が試みられた。
最終審査では、審査員からも高い評価が寄せられている。「見た目の魅力と使ってみたいと思わせる力」を評価する声や、「音楽のアルバムに身を委ねるように、香りの変化に時間を委ねる感覚」にデザインの意味を見出す意見、「感情を香りに転換する発想の新しさ」や「時と香りが自然に結びついている点」を評価する声が高かった。





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