2026年6月17日水曜日

【ホロラボ】織田憲嗣(家具研究家)の自邸を対象に高精細なデジタルアーカイブを実施

ホロラボは、家具研究家の織田憲嗣氏の自邸を対象に、3D Gaussian Splatting(3DGS)を用いた高精細なデジタルアーカイブを実施したと発表した。プロジェクトは建築CG制作を行うレディットが企画・推進し、2025年9月に予定されていた織田氏の転居に伴い、住空間そのものを記録する目的で進められたもので、撮影・制作の実務をホロラボが担った。
対象となった北海道東神楽町の織田邸は、ハンス・J・ウェグナーやアルネ・ヤコブセンといった20世紀を代表するデザイナーの椅子をはじめ、数千点に及ぶ家具や照明、日用品が日常生活の中で配置された空間として知られてきた。1,000脚以上の名作椅子が息づくこの住まいは、単なるコレクションの展示にとどまらず、生活の中で使われることに価値を見いだす織田氏の思想を体現した「生きたミュージアム」として、国内外の研究者や愛好家の関心を集めてきた経緯がある。

今回のアーカイブでは、建築的精度と家具の質感を両立させるため、地上型レーザースキャンと3DGSを組み合わせたハイブリッド手法を採用した。5つの居室や地下収蔵庫、屋外庭園を対象にミリ単位で点群データを取得し、壁面の垂直性や家具配置の正確さといった空間の骨格をデジタル上に再現したうえで、数千枚に及ぶ写真データをもとに3DGS処理を行い、光の反射や透過、柔らかな拡散光などをフォトリアルに再現した。滑らかな木肌の質感や照明の光のグラデーション、さらには窓外に広がる自然環境まで含めて空間全体の空気感を再現する点に特徴がある。
撮影には地上型レーザースキャナに加え、一眼レフカメラによる約4900枚の写真が用いられ、高精細化を徹底した結果、書斎の本棚では一冊ごとの背表紙にあるタイトルが判読できる水準に達したという。従来のフォトグラメトリでは再現が難しかった細部のディテールや素材特性の表現精度を高めた点が、今回の技術的な要点とみられる。

さらに、単なる建築記録にとどめず、書斎で研究に向き合う織田氏の姿を3D空間内に合成する試みも行われた。居住者の存在を含めて記録することで、生活の痕跡や時間の流れといった要素をも保存する「物語性」を備えたアーカイブを実現したとしている。
こうした取り組みの背景には、物理的な移動や解体によって失われる文化的空間をいかに保存するかという課題がある。特に織田邸のように、家具や日用品が生活の中で有機的に配置された空間は再現が困難であり、静的な展示や個別収蔵では本来の価値を十分に伝えきれないケースも多い。デジタル技術によって空間そのものを丸ごと記録する手法が、文化資産の新たな継承手段として重要性を増しているとみられる。

今後、このデジタルアーカイブは織田コレクション協力会の会員向け公開が検討されており、研究資料としての活用や教育用途などへの展開も想定される。ホロラボは文化財保存から産業用途まで3Dデータを基軸とした事業を展開しており、本件も空間コンピューティング技術の実用化事例の一つに位置付けられる。実在する生活空間の高精細な再現と保存を通じ、デジタルツイン技術の社会実装が一段と進む可能性が示された格好となっている。




ホロラボ
https://hololab.co.jp/

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