2026年7月1日水曜日

【NPO法人HOME-FOR-ALL】石川県珠洲市飯田町の商店街に、新たな交流拠点「飯田のみんなの家」が誕生

能登半島地震からの復興が続く石川県珠洲市飯田町の商店街に、新たな交流拠点「飯田のみんなの家」が誕生し、2026年4月にオープンした。被災地に建てられた数ある施設の一つではあるが、この建築が目指したのは単なる居場所づくりではない。震災によって失われつつある地域の記憶や風景を建築の中に再び息づかせ、未来へ受け渡していくことにある。

運営を担うのは、震災以前から寺子屋活動などを通じて地域づくりに取り組んできたNPO法人ガクソー。建設地となったのは、かつて商店街で額装店として親しまれていた細長い敷地で、日常的に人が行き交っていた場所の記憶を引き継ぐように計画された。

建物に足を踏み入れると、まるで一本の路地を歩くかのような空間が続く。軒下から小上がり、キッチン、スタジオへと緩やかに連なり、その先には子どもから高齢者までが自由に過ごせる居場所が点在する。2階にはフリースペースやコワーキングスペースが設けられ、学びや仕事、地域活動など多様な使い方を受け止める構成となっている。用途ごとに部屋を区切るのではなく、人の滞在や偶然の出会いを促すように居場所を散りばめた計画は、商店街が本来持っていた交流の機能を現代的に再構築したものともいえる。

この建築でとりわけ印象的なのは、復興を「新しく造り替えること」としてではなく、「残されたものを生かすこと」として捉えている点にある。屋根には解体家屋からレスキューされた能登特有の黒瓦が葺かれ、柱やカウンターには古材を再利用した。壁には地域住民らが製作に携わった日干しレンガが用いられ、館内には古家具も配置されている。

建築の世界では近年、環境負荷低減の観点から資材の再利用が注目されている。しかし、飯田のみんなの家における再利用は、単なるリサイクルの枠を超えている。黒瓦も古材も、それぞれがかつて誰かの暮らしを支えていた素材であり、その土地の風景を形づくってきた存在だ。建物が失われても、素材に刻まれた時間や記憶は残る。その記憶を新たな建築へ組み込むことで、復興後の風景に地域の連続性を取り戻そうとしている。
また、この建築は完成した建物だけで評価されるものではない。古材の活用や日干しレンガづくりには地域住民も参加し、上棟式にも多くの人々が集まった。建築を「つくる過程」そのものが、人と人とのつながりを生み出す機会となったのである。震災後の復興では建物の再建が注目されがちだが、本来失われたのは建物だけではなく、人々が集まり、語り合う場でもあった。飯田のみんなの家は、その関係性の再生にも取り組んだプロジェクトといえる。
同施設は、建築家の伊東豊雄氏が代表を務めるNPO法人HOME-FOR-ALLが推進する「能登のみんなの家」プロジェクトの第2号施設として整備された。設計はPERSIMMON HILLS architectsが担当し、日本財団の助成を受けながら、自治体や地域住民、多くの企業・団体の支援によって実現した。

夜になると建物は商店街の中で柔らかな光を灯し、ぼんぼりのような存在として周囲を照らす。その姿は、新しいランドマークというよりも、以前からそこにあった居場所が戻ってきたかのような佇まいを感じさせる。



「飯田のみんなの家」概要
【建築概要】
場所:石川県珠洲市飯田町
敷地面積:247.02平方メートル
建築面積:157.01平方メートル
延床面積:229.5平方メートル
用途:店舗、スタジオ、コワーキング、住居
竣工年月:2026年4月

【クレジット】
運営:NPO法人ガクソー
設計:柿木佑介+廣岡周平+清水康平/PERSIMMON HILLS architects
構造:井上健一構造設計事務所
施工:家元
助成:日本財団(「みんなの憩いの場」プロジェクト)
協力:瓦バンク、堀瓦工業、モノクローム、新出製材所、社会福祉法人進和学園、エフラボ、大阪万博英国パビリオン、VAN、木からつくるまちプロジェクト、UK駅伝




企画
NPO法人HOME-FOR-ALL 
https://www.home-for-all.org/


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