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2026年8月24日月曜日

【H inc.】青木淳・品川雅俊による建築設計事務所ASのウェブサイトをリニューアル

建築家・青木淳氏と品川雅俊氏が率いる建築設計事務所ASが、ウェブサイトを全面リニューアルした。手掛けたのはデザインファームのH inc.で、単なる作品紹介にとどまらず、設計事務所が蓄積してきた膨大な記録や思考の断片にアクセスできる「建築アーカイブ」として再構築した点が特徴となっている。


△建築設計事務所ASの新しいウェブサイトのトップページ

建築事務所のウェブサイトといえば、通常は竣工写真や代表作を並べたポートフォリオとして機能することが多い。しかし今回公開されたASの新サイトは、その完成した建築の背後にある設計プロセスそのものへ視線を向ける。図面や模型、設計中の記録写真、ノート、スクラップブック、テキストなどを横断的に閲覧できる構成とし、建築家がどのように考え、迷い、検討を重ねながら空間を生み出してきたのかを追体験できるよう設計された。

△建築家の思考や検討の痕跡をたどるNotebookの一覧画面


△設計過程の写真資料を閲覧できるPhoto_Processの一覧画面

サイト内の情報は、「Projects」と「Materials」という二つの軸で整理されている。建築作品ごとに設計の全体像を読み解くことができる一方で、図面や写真、ノートといった資料群から横断的にアプローチすることも可能だ。例えば完成した建築から設計初期のスケッチへ遡ったり、図面から当時の検討記録へ移動したりと、建築家の思考の流れを立体的にたどることができる。

建築文化の観点から見ると、この試みは興味深い。近年、建築アーカイブの重要性が国内外で高まっているものの、多くは研究機関や美術館などに保管され、一般に広く公開される機会は限られてきた。一方、ASの新サイトは、設計資料そのものを建築文化の資産として公開し、建築家だけでなく学生や研究者、建築に関心のある一般読者にも開いている。
△設計図面を拡大して閲覧できるDrawingの詳細画面

H inc.は今回、情報設計からUX/UIデザイン、システム開発、ビジュアルデザインまで一貫して担当。データベース企画・編集ではStudio Xxingham K.K.と協働し、作品管理だけではなく、資料同士の関係性や文脈が読み取れるアーカイブ構造を構築した。膨大な資料を効率的に整理するだけでなく、閲覧者が情報の間を行き来しながら新たな発見に出会える体験を重視したという。

建築界では近年、完成した建築物だけでなく、その背後にあるプロセスやリサーチ、思想をいかに継承するかが重要なテーマとなっている。今回のASのウェブサイトは、インターネットを単なる広報媒体としてではなく、建築家の記憶や知識を蓄積し、未来へ開くアーカイブとして活用する試みといえそうだ。



H inc.
https://www.hi-inc.tokyo/
AS


2026年7月23日木曜日

【バッファロー】建築家・青木淳に焦点を当てた新テレビCMの放映を開始

建築家・青木淳に焦点を当てたバッファローの新テレビCMが、7月21日から放映される。アーティストやクリエイターの創作活動をITインフラで支える同社のプロジェクト第5弾として制作されたもので、撮影の舞台には青木の代表作である青森県立美術館が選ばれた。
青木は1982年に東京大学大学院を修了後、磯崎新アトリエを経て1991年に青木淳建築計画事務所を設立。ルイ・ヴィトン表参道、青森県立美術館、京都市京セラ美術館などを手掛け、日本を代表する建築家として国内外で高い評価を受けてきた。現在は京都市京セラ美術館館長も務めている。

今回のCMでは、建築作品そのものではなく、その背後にある創造のプロセスに迫る。舞台となった青森県立美術館は、隣接する三内丸山遺跡の発掘現場に見られるトレンチ(壕)から着想を得た建築で、地面を掘り込んだような空間構成と白い展示室群によって独自の景観を生み出している。開館から20年を迎える今もなお、青木を代表する作品として語られる存在だ。
設計の現場では近年、手描きの図面やスケッチに加え、CGや動画、VRデータなど扱う情報量が飛躍的に増加している。CMでは、そうした建築家の仕事の変化にも触れている。青木は「昔は図面や手書きのスケッチだけで十分だったが、今は動画やCG、VR素材などが加わり、大容量のデータを扱う環境が不可欠になった」と語る。

また建築設計はデスクに向かう時間だけで完結する仕事ではない。模型制作や打ち合わせ、図面確認など、事務所内を移動しながら作業することも多く、安定したネットワーク環境が求められる。CMでは、そうした日常の設計風景を通して、建築家の創造を支える見えない基盤の存在を描き出す。

バッファローは今回の映像について、「主役はアーティスト」という考え方を掲げている。建築家の名前が作品として世に出る一方で、その創造活動を支える技術や環境は表に現れにくい。青木の仕事を追った今回のCMは、建築が完成する瞬間ではなく、その手前にある膨大な思考と試行錯誤、そして創造を支える環境に光を当てた内容となっている。

CM本編
バッファロー×AOKI Jun



2026年7月14日火曜日

【文心建設】建築家・青木淳との協業による集合住宅プロジェクト「文心月月」を公開

台湾の文心建設は、建築家・青木淳との協業による集合住宅プロジェクト「文心月月(ウィンシン・ユエユエ)」を台北市松山区で公開する。2026年7月の発表を予定する同プロジェクトは、高密度化が進むアジア都市において、住宅と都市の関係を改めて問い直す試みとして計画された。

計画地となった松山区寶清街周辺には、基隆河や高速道路、高架道路網といった大規模インフラが広がる一方、市場や路地、小さな店舗が今なお生活の風景を形づくっている。巨大な都市スケールと人間的な日常のスケールが交差するこの環境を前に、本計画では都市から切り離された住まいではなく、都市とのつながりを保ちながらも静けさを確保できる居住空間が模索された。
その思想は建築のデザインにも表れている。
公開されたスケッチでは、サンゴから着想を得た有機的な窓の形状が提案されており、均質なファサードでは生み出せない柔らかな表情を建物にもたらしている。街並みに対して過度な存在感を主張するのではなく、周辺環境へ自然に溶け込みながら、光や風、視線を取り込む構成が目指された。都市のランドマークとして際立つ建築ではなく、日常風景の一部として街と呼応する建築を志向している点が特徴といえる。
こうした考え方の背景には、日本建築が育んできた「内と外のあいだ」の空間意識がある。障子や縁側、軒といった伝統的な要素は、空間を分断するのではなく、人と自然、建築と街を緩やかにつなぐ役割を果たしてきた。本計画もまた、その思想を現代の都市型集合住宅へ応用する試みといえる。外部との関係を保ちながら、住戸内部には安心感や落ち着きを確保する。開放と保護、都市性と居住性という相反する要素のバランスがデザインの核となっている。
文心建設によれば、この協業の目的は著名建築家によるブランド化ではない。
住宅市場が成熟し、人々の関心が広さや設備といった性能から、空間体験や暮らしの質へ移るなかで、これからの住宅がどのような価値を提供できるのかを探ることにある。「文心月月」は、住まいを単なる不動産商品としてではなく、都市のなかで自分自身の居場所や時間を取り戻すための環境として提案するプロジェクトだ。急速な変化を続けるアジア都市において、住宅の新たな可能性を示す取り組みとして注目されそうだ。