2026年11月6日金曜日

【NUNO】須藤玲子とNUNOの過去最大規模展「テキスタイル・アルケミー」、米国・LACMAで開幕

米国西部最大級の美術館であるロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)で、テキスタイルデザイナー須藤玲子氏とテキスタイルブランドNUNOの活動を振り返る大規模展「テキスタイル・アルケミー:須藤玲子とNUNOの創造」が開幕した。会期は2027年3月7日までで、40年以上にわたる創作活動を包括的に紹介するNUNO史上最大規模の展覧会となる。
LACMA「テキスタイル・アルケミー」 展示風景  Photo: NUNO


本展では、LACMAが所蔵する世界有数のNUNOコレクションを中心に、100点を超えるテキスタイル作品を展示する。完成した布だけでなく、デザイン画やスケッチ、素材サンプル、制作道具、試作品などもあわせて公開し、独創的なテキスタイルが生まれるまでのプロセスを立体的に紹介している。また、日本各地の職人や工場との協働にも焦点を当て、地域に根差したものづくりと先端的なデザインとの融合を読み解く内容となっている。

展覧会は「実験」「テキスタイルの伝統の再解釈」「サステナビリティと再利用」の三つのテーマで構成される。「実験」では、自動車部品向けの工業技術を応用したメタルシリーズや折り紙織り、スパッタリング加工など、既存の布の概念を拡張してきた試みを紹介。「テキスタイルの伝統の再解釈」では、和紙や刺繍、伊勢崎銘仙などの技術を現代的な表現へと発展させた作品を展示し、伝統を保存するだけでなく新たな創造の源として活用する姿勢を示している。さらに「サステナビリティと再利用」では、きびそや泥染めに用いられた残糸など、従来は活用されにくかった素材を新たな価値へ転換した取り組みを取り上げている。

須藤玲子/NUNO、Marquand Editionsとの共同制作《The Nuno Box: Textiles of Reiko Sudō》、2017年。LACMA所蔵(Costume Council Fund)。(C) NUNO Corporation、
写真 (C) Museum Associates/LACMA

折り紙織りや、スパッタリングなど、独自の発想によって生まれたテキスタイルを紹介する「実験」のセクション。LACMA「テキスタイル・アルケミー」展示風景 Photo: NUNO

一度は途絶えた伊勢崎銘仙の「併用絣」の技法を復元したプロジェクトを紹介。LACMA「テキスタイル・アルケミー」 展示風景
Photo (C) Museum Associates/LACMA, by Jonathan J. Urban

会場中央には、1984年に東京・六本木のAXISビルに開設されたNUNOショップを再現した空間も設けられた。来場者は作品を鑑賞するだけでなく、テキスタイルや衣服、アクセサリーに実際に触れ、購入することもできる。展示デザインにはヴィジュアルアーティストのアン・ハミルトン氏が参画し、齋藤精一氏と本間無量氏による映像作品を通じて、テキスタイル制作の背景や職人との協働も紹介している。

本展とあわせて注目されるのが、建築家ピーター・ズントー氏設計によるLACMA新館「デイヴィッド・ゲフィン・ギャラリーズ」に恒久設置されたNUNOのカーテンだ。クロムスパッタリング加工を施したテキスタイルは、光に敏感な美術作品を保護しながらロサンゼルスの景観を取り込み、建築空間を構成する重要な要素として機能している。本展ではその開発プロセスや関連作品も紹介されており、テキスタイルが建築と結び付く可能性を示している。

展覧会にあわせて刊行された書籍『Textile Alchemy: The Art of Reiko Sudō and NUNO』も日本国内で販売される。伊東豊雄氏や森口邦彦氏らによる寄稿を収録し、作品のみならず創作の背景や思想にも光を当てる内容となっている。伝統技術と先端技術を往復しながら独自の表現を切り開いてきたNUNOの歩みを通じて、本展はテキスタイルを工芸やファッションの領域にとどまらず、芸術や建築、環境デザインを横断する文化的な存在として捉え直す機会となりそうだ。




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